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3.成功と混乱

「と、いうことで、モンスターの正体はゴブリンキングでした」


 ギルドに帰って来た俺は、ギルドマスターにダンジョンの調査結果を報告していた。

 

 話し終えてギルドマスターの方を見ると、俺を凝視して固まっている。


「き、規格外……」


  ちなみにゴブリンキングが着ていた装備、金の斧含め、戦利品は全て貰って良いそうだ。後でいらないものは売り払って金にしておこう。


「あ、ありがとうございました。

では、こちらが150000ゼナです」


 ギルドマスターが大きな革の袋を渡してくる。中には金貨がぎっしり詰まっていた。


「おぉぉ……」


 あまりの量に少し引いてしまう。

 魔獣を倒しただけなのに、こんなにもらって良いのだろうか。


「それから、これを」


 さらに金色のカードが差し出される。


「Aランク冒険家のカードです。

一回目の仕事でAまで行った人は見たことないですよ」


 どうやらAランクになったらしい。

 新しくなったカードは縁に模様も付いて、かなり豪華になっている。

 ステータスもかなり伸びていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ナバラ・コーリス  ☆☆☆A

年齢 :27

性別 :男

種族 :人間(?)


《ステータス》

魔力量:135/135→182/182

体力 :93/93→98/98

知能 :89/89

状態 :過労

疲労

   空腹

属性 :雷

73/73→84/84

スキル:身体変化

   消滅

ジョブ:冒険者

称号 :不運

   雷神の加護

   New! ゴブリンの王


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 魔力量や体力が伸びたのもそうだが、

変な称号が増えているのが気になる。


「ゴブリンの王って何ですか?」


 勝手にゴブリンの王にされても困る。

そもそも俺はゴブリンじゃない。


「ゴブリンは強いものに従います。

ゴブリンキングを倒したあなたを王とするのは当然のことでしょう」


 ギルドマスターが面白がるような視線を向けてくる。


「人間でゴブリンの王になった方は初めて見ました。とても驚きです」


 俺もびっくりだよ。別にゴブリンの王になんてなりたくないんだけどな。


「まぁ、ゴブリンなんてそうそう見ることはないですし、いろいろ便利そうじゃないですか」


 ゴブリンは獰猛な性格の魔獣で、魔王様の傘下にも入っていなかったはずだ。魔王様に従わないため、糾弾されて闇の森でひっそりと暮らしている。


 たしかに、こっちの世界でゴブリンなんて見たことなかったし、きっと大丈夫だよな。


 ……あれ、今フラグ立った?


「本当に助かりました。

これからもよろしくお願いします」


 ギルドマスターが握手を求めてくる。

 

 俺はその手を強く握った。


「えぇ、よろしくお願いします!」



4

「長! 大変です!」


 部下の1人が族長室に駆け込んでくる。服はパジャマ、髪もボサボサの酷い有り様だ。


「ふぁ……こんな朝早くにどうした」


 とかいう私も、さっき起きて着替えたところだ。まだ眠気が覚めていない。


「そっそれが……」


 部下が俺の前に跪く、そして動揺の隠しきれていない様子で言った。


「ナバラ様が、魔界を追放されたとの連絡が入りました!」


「な、何ぃ! それは本当か!」


「はい、先程連絡用の魔鳥が来ました。

ナバラ様は四天王の座を降ろされ、凡介に追放されたようです」


 魔鳥は送り主の声を録音できる魔術具が乗せられた使い魔だ。最近私達も使い始めたが、早速役に立ったらしい。


「なお、原因は調査中です!」

 

 私も混乱しているのだが、報告をしている部下もイマイチ状況が分かっていないようである。頭の上に疑問符が浮かんでいる。


 それにしても一体何故だ。あいつは優秀だ、なのに何故……


「グァァ、グァァー」


 その時、連絡用の魔鳥が窓辺に降り立った。部下が急いで用件を言わせる。


「……ナバラ様が四天王を降ろされた理由が分かりました!どうやら功績を残していなかったことが原因のようです!」


「功績……?」


 ナバラの仕事は凡介の監視ではないのか。監視なのだから、功績も何も無いだろう。


 そんなことも分からないなんて、今代の魔王はアホなのか。


「それと……」


 魔鳥からの報告はまだ続く。

耳を傾けていると、魔鳥の主が声をひそめた。周りには聞かれてはいけない内容なのだろうか。


「ナバラ様の追放には、他の四天王が裏で動いていた可能性があります」


 魔鳥はそういい終わると、魔王城の方向に飛び去っていってしまった。

 部屋にいた部下を身なりを整えさせるために一旦帰らせ、1人になった私は椅子に座って考え込む。


 四天王が裏で動いている可能性があるのか……。確かにあいつは人間の血が混じっている上に、出が辺鄙(へんぴ)な鬼族だもんな。それでも有能なのは間違いないのに……。

 

 私は四天王達の顔を思い浮かべる。

 見た目で判断してはいけないと分かってはいるのだが、普段の傲慢(ごうまん)な振る舞いのせいでどうも性悪(しょうわる)に見えてしまう。いかにも性根(しょうね)が腐っていそうだ。


 気がつくと、日が高くなってきていた。

慌ててここに住む鬼達を広場に集める。


「今日はみんなに話したいことがある」


 広場の中心で私が話し始めると、不思議そうな視線が飛んできた。まだナバラのことを知らないのだから当然だろう。


「我が息子、ナバラについてだ」


 ナバラという名前を出した途端、飛んでくる視線が変わる。みんな強くてかっこいいナバラに憧れているのだ。


「帰ってくるのか!」

「四天王のナバラ様よー!」


 口々に歓声が上がる。それを聞いていた私は、申し訳ない気持ちで一杯だった。


 何も言わない私の様子に疑問を感じたようで徐々に歓声が収まってくる。私は腹を決めてみんなに告げた。


「あいつ……ナバラは、四天王の座を降ろされ、凡介に永久追放となった」


 その瞬間、時が止まる。誰しもが私の言葉を受け入れられずに固まってしまったのだ。


 すまない。ナバラ、同胞達、我が妻よ。

こんなことになってしまうなんて。結局ナバラを守れなかった。


「……これで、今日の集会は終わりだ」


 私は項垂れながらそう呟いた。そして、それを皮切りに広場は阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄と化したのだった。


  

 ナバラの追放から3日が経ったにも関わらず動揺の収まらない鬼達を横目に見ながら、ナバラの父は悩んでいた。内容は、今後の魔王への対応だ。

 

 元より、血筋よりも強さを重要視する平民の中ではナバラが鬼人であることは大して気にすることでは無かった。

 そのため、鬼族達は同胞(どうほう)が四天王であることを心から祝福し、誇りに思っていたのだ。

 それゆえ、民衆のなかでは怒りの声が多している。放っておいたら爆発しそうだ。


 ナバラが四天王から降ろされたことがおかしいことには、少し知恵のある種族ならすぐに気がつく。今、魔王城周辺に住む種族達と連絡を取っているがやはりナバラは理不尽な理由で追い出されたらしい。


 さらに魔王城周辺に住む種族ーー力を持った上位種族。によると、やはり裏で四天王が動いていたらしい。


 四天王のような上流階級出のやつらからすればナバラが半人なのが許せないのだろうが、こっちからしたらこんなこと知ったものじゃない。


そもそも魔界にはナバラ教という名のファンクラブまであったのだ。ナバラ(ファンクラブ)には膨大な数の教徒(ファン)がいる。それを敵に回したのだ。魔王もただじゃ済まない。


 ……はあ、とにかく魔王の傘下に入るっていう話は終わりだな。この状態では無理だ。次来た時に断ろう。


 まさかその交渉役の四天王が、門番の鬼達によって門前払いされているとは、彼は知るよしもないのだった。



 

【魔族図鑑】


ゴブリン


パワー ☆☆☆☆

知能  ☆

魔力量 ☆


・自分よりも強い者に従う。

・忠誠心は強いが、後先考えずに行動する 

 ため、魔王によって闇の森に追いやられ

 た。

・独自の言語を使うため、伝心の加護持ち

 や、契約者とでないと意思の疎通ができ

 ない。


読んでいただきありがとうございました!

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