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18.里からの使者

 それは、ものすごーく平和な昼頃のこと。


 ナバラは自室にてのんびりと趣味の新魔法の研究に励んでいた。


「ここに地属性を少し入れて、周りに被害が出ないようにして……よし。それでここに水属性で……」


 通常の場合、自分の適正属性の魔法しか扱うことができないはずなのだが、ナバラは長年の社畜生活によってそれを可能にしている。


「おっ、完成! これが集中攻撃用の雷だ!」


 無事に成功した開発にナバラが珍しく満面の笑みを浮かべる。

 ちなみにだが、この開発というのも失敗した場合大変なことになる上に器具が無いと難しいため、通常は専用の空間で行う。


「ナバラ!」


 その時、シノブがドアを蹴破って部屋に飛び込んできた。

 勢い余ってナバラに突っ込んだところをナバラが受け止めた。


「おおっ、どうした?」


 そしてユアナを抱きしめた姿勢のまま平然と話を続ける。もはやワザとなのかと聞きたくなるくらいにナバラはそういうことに疎い。

 一方のシノブの方は普通の年頃の女子なため、真っ赤になって飛び退いた。


「あ、あいつが来る。ヤバい!」


 ナバラは風のような速度で離れられたことに少し傷ついた顔をしつつ、シノブに聞き返した。


「あいつって?」


「私のことですかね?」


 その時、ナバラの背後に黒ずくめの男が現れた。頭までもを布で覆っており、暗闇では完全に同化するだろう。


「えっと、どなたですか?」


 結界に引っかからなかったことと気配を察知できなかったことに違和感を覚えたナバラは、そう訊ねながらすぐさまシノブを抱えて戦闘態勢に入る。


 黒ずくめの男は戦意は無いと言うように両手を上げた後、ナバラに向かって跪いた。


「お初にお目にかかります。自分は久遠(くおん)というものです」

 

「クオン……」


 変わった名前に混乱するナバラ。一方のシノブは世界を凍らせそうな視線で久遠を見た。


「どうしたの久遠(くおん)。何で隠し名を?」


「隠し名?」


 ナバラが不思議そうな顔で問い返すと、シノブは心なしか自慢げに答えた。


「忍びは活動する上で素性が知られたら不味い事も多いんだ。だから普通はコードネームを名乗る。そのはずなのに……」


話している途中でシノブも不思議そうな顔になってくる。2人揃って久遠(くおん)を見た。


「今回は良いのですよ。それよりも今日は姫様とナバラ様にお話がございます」


「ん? 俺らに話?」


「左様でございます。この話はあまり周りに聞かれてはいけないものなので、こちらに……」


「分かった」


 2人は久遠(くおん)に案内されながら不思議そうな顔で話し合う。


「あのクオンって誰だ?」


「うちの里の忍び。特に優秀だったんだ。因みに久遠(くおん)のコードネームはラシャ丸って言う」


「ラシャマル……少し変わった名前だな」


 そんな人が何でここに? と訊ねるナバラに、シノブも不思議そうな顔で答えた。


「うーん、何でだろうな」


 どうやら、2人はシノブが無断で家出してきたお姫様だと言うことを完全に忘れているようである。



「それで、クオンさんはどうしてここに?」


「クオンでお願いします」


「クオンはどうしてここに?」


 何で忍びとかいう人がここにいるのだろう。

 

 クオンに訊ねると、マジかコイツとでも言いたげな表情で聞き返された。


「えっ、何で分からないんですか?」


「……? シノブ、分かるか?」


「いや、私も分からないな……」


 何かやってしまったのだろうか。いや、何もやっていないはずだ。うん。


「ハァ……」


 シノブと目配せで会話をしていると、クオンがシノブに一喝した。


「ナバラ様はともかく、シノブ。てめぇは勝手に家を出て行ったんだぞ! 何が分かりませんだよ!」


「あっ……」


 シノブは完全に忘れていたらしく驚きで言葉を失っている。そして同じく俺も固まっていた。


「そっ、それは……」


シノブからまるで飼い主に見放された子犬のように元気が無くなっていく。

 だがクオンはそれを無視して話を続けた。


「里のみんなが捜索に駆り出されて大変だったんだからな! 絶対許さん」


 そこまで一気に言い切った後に一度言葉を止める。シノブは息も荒く瀕死の状態だ。


「ただ、お前を今すぐ罪には問わない」


 シノブが驚いたように顔を上げる。とても間抜けな顔だ。

そんなシノブに、クオンが優しく微笑んだ。それから少し声を大きくして、強調するように言った。


「里長から伝言だ「シノブちゃあん、一度里に戻っておいでよぉ! パパ寂しいなぁ」……らしい」


 わざわざにやけ顔を作り、声まで変えていた。なんと器用な真似をするのだろう。

 それよりも、俺は別の意味で驚いていた。


 ……まさかのシノブの親は娘大好きおじさんでした。


「つきましては、ナバラ様達には忍びの里に来ていただきたいのです。案内はします。なるべく出発は急いでください」


 あまりの衝撃に内心嵐の吹き荒れる俺に

、無表情でクオンがそう言った。そして一瞬のうちに姿を消す。


「あ、ああ……」


 気が抜けたのか、シノブがその場に崩れ落ちた。顔を見ると、絶望感に溢れている。


「終わった……。やっとあいつから逃げられたと思ったのに……」


 そしてそのまま力が抜けて……


「シノブっ!?」


「もうム、リ……」


 シノブは、里に行くのが嫌すぎるのかその場で気絶してしまった。


読んでいただきありがとうございます!

少しでも良いと思ってもらえましたらブクマ、↓の☆お願いします!


ぼちぼち毎日更新から週2回に切り替えようと思います。月曜日と金曜日になる予定です! それではまた明日!

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