16.ツンデ……レ?
「むにゃむにゃ……」
隣に寝ているのは、話の途中から飽きて爆睡していたため一切の事情を知らないユアナだ。そして今も夢の中である。呑気で羨ましい。
「じぃーーーー」
そして俺の真正面でジメジメした目をしながら拗ねているのがシノブだ。
ザラダナさんに一晩中自分がいかに素晴らしいかを聞かされたらしく、見捨てた俺を恨みがましい目で見ている。
「ごめんってば」
そして俺は、さっきシノブに平手打ちされたことでダメージを負っていた。
肉体の方はすぐに治るのだが、心の方が酷い有様になっている。せっせと修復しているが、しばらくは治りそうにない。
「悪かったって、シノブ。やっぱりほら、面倒ごと(2人のこと)に俺が関わるのは良く無いと思うんだよね」
「だからって放置するな。別に助けて欲しかったわけでは無いけど」
「本当に悪いと思ってるから」
それに、シノブがザラダナさんに連れて行かれた後、俺もダバラガさんに捕まっていた。
助けたくても助けられなかったのだ。
そこでダバラガさんの話を聞いていたのだが、なんと驚くべき事実が判明した。
「シノブもさぁ、天邪鬼かよ。恥ずかしくてつい冷たくなるとかツンデレって言うんだぞ」
なんとシノブは決して性格が厳しいわけでは無いらしい。
本人曰く、
「は、恥ずかしくてちょっと言い過ぎちゃうだけだ! 人見知りってやつだ!」
とのことで、まさか、本当にツンデレなのか? と過去にでた疑惑が再び浮上しかけている。
「それより!」
「ん?」
シノブが頬を赤らめながら机を叩く。力の加減を間違えたようで少し凹んでしまっていた。
「四天王だったらしいじゃないか。なんで黙ってたんだよ」
俺が四天王だったという話をザラダナさんから聞いたらしい。少しキレ気味である。
「いやー、なんか面倒で」
いたずらに俺の正体を明かすとまずいことになるかもしれない。そもそも街では人間ということで通っているのだから、仕方ないだろう。
「強いのは知ってたけど、まさか四天王だなんて……」
ザラダナさんに聞いただけでは疑っていたらしいが、俺の発言で真実だと確信したらしく絶句してしまっている。
「うん、ごめん……」
「……」
室内が重い沈黙に包まれる。とっても気まずい。
「むにゃ? おはよう」
そこに救世主が現れた。まだ起きたばかりでうとうとしているユアナである。
「シノブ、なんでそんなこわい顔してるのー?」
「なんでもないよ。ちょっと情報の処理が追いついてないだけ」
「あっ、まだ言ってないことがあった」
ユアナを見て思い出した。
そう言えば、ユアナも鳥人だったな。
「これも、周りには言わないでおいて欲しいんだけど」
そう前置きして、ユアナが鳥人だということを伝える。
「えっ、嘘でしょう」
「黙っててごめん」
なんで今更伝える気になったのかと言うと、ある程度シノブとも一緒に暮らして信用できると思ったからだ。
シノブならきっと大丈夫。
いざという時は……俺の魔法で記憶を消す。
「まあ、良い。でも次からは正直に言っ
てほしい!」
「ハイ。分かりました」
俺は許されたらしい。これで改めて本当の仲間になったって感じだな。
「じゃあ、改めてよろしくな」
「あ、ああ。よろしく頼む」
俺がシノブに向かって差し出した手をシノブがガシッと握る。握力が強いようで物凄く痛かった。
そして、目を合わせて笑い合う。
良い。実にアオハルと言うか、青春と言うか。人生って楽しいな。
「あっ、私も言ってないこと。あった」
「ん? なんだ?」
そのまま、シノブは恥ずかしそうに黙り込んでしまう。
「じ、実は……」
「うん?」
しばらくの間もじもじしながら下を向いていたが、やがて心を決めたようにバッと顔を上げて言った。
「私、実は忍びの里の姫なんだ」
「……」
「家出なのは本当なんだけど、その、姫だから。追手が来るかも……」
・・・!?
「先に言えよぉぉぉぉぉ!」
思わず叫んでしまった俺だったのでした。
ちなみに、ユアナは一度起きた後また寝ていた。二度寝である。
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シノブちゃんツンデレ疑惑についてです。
彼女は己に厳しめな性格だったため、ツンデレに作り上げるのがとても難しくなんだかツンデレではない何かになってしまいました。
ちょっと照れ屋なシノブちゃんと言うことで、本当のツンデレと違っても許してください。
とっても可愛いシノブちゃんなので、みなさん優しい目で見守ってください。お願いします。