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13.名付け

「こちらをどうぞ。金色(・・)のおまんじゅうでございます」


 ナバラ達のいる地の遥か東、カラブガギでは、重鎮も知らない取引が行われていた。


 金色のおまんじゅうーー金色に光り輝く大判小判を代官に差し出しているのが高級料亭「ゆかり屋」の店主だ。

 だがゆかり屋の店主という立場は世間に馴染むための物であり、その本質は忍びの里の長、クガであった。


「クックック……。ゆかり屋お主も悪よのぉ」


「いえいえ、お代官様ほどではございますせんよ」


 2人はそう言って笑い合うと、揃って悪巧みをするような顔をした。典型的な悪代官と○○屋の構図だ。


「これで、うちの可愛いシノブちゃんに喜んでもらえるはず。ふふふ……」


 普段の厳格な表情からは想像もつかないほどに顔を緩めるクガ。

その時、ドタバタと足音がして、クガの配下の1人が部屋に駆け込んできた。


「り、里長! シノブ様が、シノブ様が……居なくなりました!」


「ぬうあんだとおぉぉぉぉーーーー!」


 一瞬にしてクガの表情が地獄と化し、悪代官の方も顔に焦りが生じた。

 クガは部屋に入ってきた男にすぐさま命令を下す。


「すぐに探せ! 里の全員を動員しろ! 草葉の根まで掻き分けて探せぇぇ!!」


「了解致しました!」


「こうしてはいられない! わしはここで失礼します!」


 そう言ってクガは悪代官への挨拶も早々に立ち去っていってしまう。


「えっ、ええっ!?」


 後にはイマイチ状況が理解できず、混乱しているだけの悪代官が残された。




「うーん、長老は長老って呼んでいたから気にならなかったけど、コボルト君はなんて呼ぼうかな?」


 俺はコボルトのリーダーと共に今後のことについて話し合っていた。

 とりあえずコボルト達はゴブリン村の近くに引っ越して来ることになった。ゴブリン達が急いで家を用意している。


「どうせなら名前を付けてしまおうか……? コボルト君はどう思う?」


「ひゃ、ひゃいっ!」


 俺の方を見てボーッとしていたらしいコボルト君が驚きのあまりイスから転げ落ちる。


「だ、大丈夫?」


「いたたた……。大丈夫です。それで何でしたっけ?」


「君たちに名前を付けようと思っているんだけど、良いかな?」


 ついでにゴブリン達にも名前を付けようかな。なんて考えていると、コボルト君がまたイスから転げ落ちるのが見えた。

 

「大丈夫!?」


「だ、大丈夫です。それよりも、名付けをしてくださると言いましたか!」


「う、うん。嫌なら良いけど」


 物凄い食い気味だ。それこそ普段のおどおどした姿からは想像できないくらいに。


「そんなわけありません! 是非、ぜひとも名付けを!」


「あ、うん。任せて」


 ノリノリなようで良かった。

 かくして、ゴブリン34体、コボルト23体の計57体に名前を付けることになった。

 広場にみんなを集めると、名付けということでワクワクが隠せないようである。


 名付けは特別な意味を持つ。名を貰った者は名付け親の魔力の影響を受ける。そのため、俺の名付けなら進化もできるかもしれない。もしハイコボルトになれれば知能、筋力、魔素了共に大きく増す。これは絶好の機会なのだ。


 でも、魔王様がコボルトに名付けをした時は進化しなかったし、多分無理かな。


「えー、君は……」


 早速名付けを開始した。

 しっかりそれぞれの印象に合った名前をつけられるように、丁寧にだ。中には自分から名前の希望を出してくれる者もいてなかなか面白かった。


「で、最後に長老がゴリン。コボルト君がボルトで良いかな?」


「「ありがたき幸せ!」」


 最後にそれぞれの族長に名前を付けると、突然ゴブリン、コボルト達の身体が光り始めた。


「おおっ、力がみなぎってくる!」


 光が収まった先にいたのはーー


「えっと……どなたですか?」


 ずらっと整列する美男美女。肌の色から髪の色まで多種多様だ。


「……?」


 さっきまでここにいたのはコボルトとゴブリン達。今いるのは美形の方々。……?


「何をおっしゃるのです。わしはゴリンでは無いですか」


「?」


 俺の目の前で快活そうに笑ったのは南国風の美少女。はっきり言って誰だか分からない。


「あの、本当にゴリンさんですか?」


「そうですよ。なに、多少身長が変わっただけでは無いですか」


 いや絶対身長だけじゃ無いから。

 でも、なんだかこの感じ、長老で間違いない気がする。女の人だったのか。いや、ゴブリンって性別無かったんだっけ?


 後でユアナに血を見てもらうとして、多分この様子だとゴブリンからホブゴブリンに進化しているな。知能も筋力も増すし、良いことである。


「ナバラ様! 私達も進化したようです」


 今まで俺と長老のやり取りを見守っていたボルト達も話しかけてくる。

 こちらも例に漏れず全くの別人に変貌していた。ボルトなんてバレなければただの人間のイケメンだ。


「お、おお。良かったな」


 この結果は予想外だが、こちらとしては嬉しい誤算である。


 それにしても、魔王様がコボルトやゴブリンに名付けた時はこんな風にならなかったんだけどな?


読んでいただきありがとうございます!

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