第3幕
宿屋を出てシュエリーは悩んでいた
「キーアさん、先程の兵の方に何かお礼の品を差し上げようと思うのですが何がいいと思いますか?」
「うーーん…食べ物!」「食べ物です!?」
『食べ物』の言葉に腕の中にいるレティが目覚めて反応する「あっ、起こしちゃった…」キーアはそっと地面に降ろす
「食べ物は贈り物には向いてないかと思われます…」
「そうかな?うーーーん、あっ!あれは?」
キーアは装飾品のお店を指した
「えっと…殿方はあんまりほしがらないかと…」
「私もいらない」「レティいらない」
「えぇー…」
「あのシュエリー様、装飾品は装飾品でも魔導具のならいかがでしょうか?」
サウリューネはアイナに最近教わっていたこともあり装飾品で思い出して提案してみる
「いいかもしれません!そうしましょう!」
シュエリーが向かったお店はこの前とは違うアクセサリー防具専門のお店だった
「色々な種類があるね あっ!これ持ってるだけで効果あるって!」
「『持ってる』型のは握っていると効果が出るものなのでキーアさんには使いづらいかもしれませんね」
大体魔法単体で援護する人が握って使う
「あっ!かわいい・・・」
シュエリーは月の形の指輪を見て言った
「これ?買ってあげる!」「えっ!あの…」
『ふふふ』 値段も見ずに指輪を取って会計に走る
値段は銀貨82枚サウリューネが出す
「はいっ、シェリー!どうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
顔を赤らめるて指輪を受け取り眺めている
「付け方わかんない?貸して」
「えっあの…」
キーアは指輪を取ってシュエリーの腕をとり指に通した 「うん!シュエリーかわいい!」
「あ、あ、ありが…とう…ございます」
とっても嬉し恥ずかしそうだ。因みに効果は魔法威力向上、シュエリーにはぴったりだ
「あ、あの申し上げにくいのですがそろそろ決めないとお時間が…」
「あっ、そ、そうですね!」
「ねぇ、これどうです?」
レティが皮のブレスレットを腕に付けて見せてくる
「レティさんにはこちらの方が…あ、それ良いですね!」「やったです」
「あっ!そうではなく…」
シュエリーはレティが付けているのを受け取り、花形の鎖系の飾りがないのを見せる
「レティそれいいと思うです!」
「ふふふ、よかった」
シュエリーは一人会計に向かう、途中で違う棚を見ていた
「お待たせしました、お礼の品は買えました。
そしてレティさん差し上げますね♪」
「わーい、ありがとです!」
ぴょんぴょん跳ねて全身で喜んでいる
シュエリーはキーアの方を向いて手のひらを見せる、その手に乗っていたのは紐の短いペンダントだ
「キーアさん、こ、これを」
「わぁ、くれるの?ありがとう!」
「付けてあげますね!」
キーアが軽く屈み、シュエリーが首に手を回してペンダントを着ける
キーアは飾りの部分を手で持つ
「お揃いだね♪ありがとう」
「はいっ!」
店を出て幸せ気分でギルドへ向かう一行
シュエリー案内のもとギルドへと到着すると、二人は既に待っていた
「シュエリー・フォン・ラウドル様
本日はご指名頂きありがとうございます!
護衛を務めさせていただく『オージー・ケリアム』と申します、全力「おじさんにまた会えたね」「あの時の!助けてくれてありがとうです」で……耳?どちら様でしょう?後おじさん……ではありません…」
挨拶の途中でキーアと見覚えのないレティに遮られてどもるオージー、シュエリーの前なので言葉に詰まった
「ふふふ、はい、よろしくお願いします、ケリアム様。かしこまらないで大丈夫ですよ
アイナありがとうございます」
「どういたしまして~隊長様は二つ返事で了承を頂きました~」
「それは…よかったのですか…」
「はい~はい~!」「アイナ!?」
「冗談でした~」「……」
「お嬢様、お仕事受けないのですか~」「…うけましょう、ケリアム様、キーアさん、レティさんお願いします」
「うん!」「はいです!」「かし…了承しました」
ギルドはウリュートのギルドとは比べ物にならない程人が多かった
「うわー!人が多いねー」
「人、人、人、人です!」
「ふふっ、私のはギルドに頼んでいるので直接受付にいくのですが、キーアさんたちも何か受けていきますか?」
「そうだね、シェリー何がいいかな?」
「キーア、何故ラウドル様に聞いているんだ?」
「えっ、どれがいいか分からないから!」
「ケリアム様、お父様の名になるので、よければラウドルではなくシュエリーと呼んで下さい」
「りょ、了解しました、シュエリー様!
それでキーア、俺が持ってくる」
「ありがとう!」
「優しい方ですね、キーアさん、名前で呼んであげたらどうです?」
「わかった、名前なんだっけ?」
「キーア、オジーさんです!」
「えっ、あの…」「わかった!」
人混みをかき分けて戻ってくる
「これでいいか?」
「ありがと、おじーさん」
「だれがお爺さんだ!」「「あれ?違った」です?」
「あははははは~笑い殺すつもりですか~」
一番少ない列に並ぶ、女の子四人と兵士格好はあまりに目立っていたらしい、会話が聞こえた中にシュエリーのことを知っている人がいて伝染していっていたので、前にいる人たちが次々に譲ってくるのだ
シュエリーは困った顔で断っているが譲らずあっという間に順番がきてしまった
受付の女性が苦笑いで私たち見ていた
「申し訳ありません」
「いえいえ、自ら譲っていたので問題はありません」
「シュエリー・フォン・ラウドルです、お仕事の方をよろしいでしょうか?」
「はい伺っております、こちらが内容となっています」 内容は★2魔物フイータの討伐、街の近くに割と頻繁に見かけられる魔物で纏う炎が厄介なだけでそこまで強くはない。何故かオージーが気まずそうな顔をしていた
「ありがとうございます、それを受けます」
ギルドカードを見せる
「はい、確認いたしました、頑張って下さいね」
「あとこれいいかな!」
「あっ、えっ!!、はい、ギルドカードを見せてもらってよろしいですか?」「はい」
「ランク★3なんですね、凄いですね!
はい、大丈夫です、気を付けていってらっしゃいませ」
ギルドを出て外へ向かう
「キーア様~何のお仕事だったのですか~?」
「フイータ三体!」
「え~、偶然ですね~サリュー様の練習にもビッタリですね~」
「フイータを四体倒せば完了ですね」
「本人が倒さなければ意味ないですけどね~」
外に出ると、早速サリューが反応した
「北東の方角45メートル二体います」
「えっ、分かるのか!」
「距離が近ければわかります」
「私も助けられました♪」
「では向かいますか」
その場所にはフイータが二体いた
「北37メートルにもいます」
「すぐ終わらせないと、俺がそちらにいきましょうか?」
「いえ~、多分必要ないと思いますよ~」「?」
「キーアさん、魔法使うので一体お願いします」
「はーい」
キーアはお願いされると一体のフイータにあっという間に近付きフイータが何か行動する前に剣で叩き潰す「うわわ!身体が軽い…よっ、これでいい!」
「さすがです~」
横に飛び退くともう一体のフイータがキーアに威嚇にむける、その瞬間に矢を象った凝縮された水がフイータを貫き倒れた
「キーアさんありがとうございます♪凄かったです」
「シェリー凄いね、魔法強いね!」
「シュエリーお嬢様の目標は終わりましたね~」
「なっ、護衛いらないんじゃないか…」
「もう一体いきましょうか~サリューさんやってみて下さい」「わかりました」
フイータの見える位置にいく
「いいですか~お嬢様がやったような矢をイメージを浮かべて下さい~、そしたら手を相手に向けるのですが今回は少し右側に向けて下さい~、そこでまっすぐから二つに割れるよう魔力を割きます~、あっ少し右側が小さくなっているので魔力補給して下さい~、はいっ、今です~」アイナがサリューの逆の手に触れ誘導し、サリューの手から綺麗な水の矢がサリューの向けている中心左側にいるフイータと同じ距離の右側に刺さり水に変わり地にながれる
「さすがサリュー様~一発で成功なさるとは~」
「いえ、アイナ様がわかりやすく教えて頂き調整していただいたおかげです」
これができれば、魔力量次第で様々な応用が一気に出来るようになるらしい、シュエリーはまだこれを上手くはできない
「身体の制御がし易いのもありますね」
「あっ!動くの楽だった!」
「私が差し上げたペンダントの効果ですね、身体能力を上げる力がありましたから」
「へぇ~これそんなにすごいんだ」
「いいえ、数%上げるくらいですが、基礎が高いのでしょうね」
「あっ、東側からグラスキッドがきています!」
「何!?危険です!俺がいきます、下がっていて下さい」
「グラスキッドってどんなやつだっけ?」
「幻影使って鋭い爪の素早い魔物ですよ~」
「あぁ!あの弱い魔物か」「弱っ!?」
「キーア!レティやりたいです!」
「レティなら攻撃受けても平気でしょうけれど気をつけてね」「なら私が防ぐよ!」
「ありがとです」「えっ?俺…何でいるのだろう…」
突如カサカサ音がするとグラスキッドが奇襲を仕掛けてきた
「うーん?こっち!」キンッ!
「あっ、遅いね!」……ガキンッ!
東側から勢いよく飛び出してくると、キーアは60度右を向き剣の面を構えると爪を弾く、後ろに大きく跳び勢い良く正面から走ってきたのを無視して少し上に構え一歩遅れて弾く音が鳴った、するとグラスキッドはクラクラし始めヨロヨロしている
「ですぅぅーー!」ドォォン
そこにレティが拳で殴り大きな音をたてながらグラスキッドは遠くまで吹っ飛んでいった
「幻惑耐性を無視して幻惑魔法をかけた!?何つぅ力だよ!キーアの動きも何だよ、グラスキッドの攻撃を余裕で防ぐだけとか」
「やったよですぅぅ!」
「すごいすごい!」「えへ~です~」
駆けよってくるのをを抱きとめ撫でるキーアはレティ褒めまくる
一旦気配がなくなったので休憩をとって、そのあと何体もの魔物をサリューとシュエリーが魔法の練習にしながら倒していった。
帰る時にレティがアイナにグラスキッドはおいしいのか聞いていたが、臭みがとれないので不味いそう、さすがにフイータは食べようとも思ったこともないと言っていた
暗くなり入口の少し離れた位置
「皆さん、今日は私のためにありがとうございました」
「俺、何かしましたでしょうか…」
「ケリアム様!」「ハイッ!」
オージーは怒られると身構えたが違った
「先日のキーア様とグレイマティの件、守って頂きありがとうございました、兵士の説得や街が騒ぎにならないように尽力したと聞きました!、個人的にお礼がしたいと思いまして、こちらを差し上げます」
皮のブレスレットを取り出して渡す
それを片膝を着いて受け取る
「有り難く頂戴致します」
すぐに腕に着けた
「力の増大効果があるようなのでご活用下さいね」
「ハイッ!」
「おじさん、よかったね!」「キーア違う、オージさんです!」
「レティさん、惜しいですオージーです
キーア!お兄さんだ!」
「あははははは~♪」「ふふふふふ♪」
ギルドで報酬を受け取り、オージーと別れて今日は屋敷に泊まれることは確認済み
ダモンが出迎えてくれて、シュエリーたちはシュオルターにお務めを果たしたことを報告しにいって、
私たちは食事が準備出来ているとそちらに案内された
「今日はお疲れさまだ、キーア殿サリュー殿レティ殿も護衛をありがとう、ごちそうを用意したから存分に食べてくれ、お前らも席に着け」
「お言葉甘えまして~」「ホッホッホ、では頂きますとしますか」「えっ!そういうわけにはまいりません」 席は前の時と一緒でキーアの隣にレティが座る、向かいに三人分用意してある
アイナとダモンはすぐに席に着くがペストは躊躇っている
「お前はいつも固いな」「ペスト、柔軟な父様を見習って下さい」
主二人に言われては諦めるしかなかった
「ご一緒させて頂きますよ」
「少しずつ慣れましょうね」
「…」
「まぁいいでしょう父様」
「うむ、では食べようでないか!いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」「」
みんなそれぞれ大皿に小分けされた料理をとって食べ始めるがレティがよくわかっていなかったようでキーアがとってあげることで理解したようだ
「キーアさん、そのお肉どうでしょうか?」
「とってもおいしい!」
「ふふ、それ魔物のなんですよ」
「ホントに?すごくおいしぃんだね!」
料理はみるみる減っていった、終わり際にシュオルターが仕事の部屋へとキーアとシュエリーを呼び出す、レティはアイナとペストが見ていてくれる
部屋へ入るとシュオルターが徐に話し出す
「キーア殿、今回まで迷惑をかけてすまなかった、宿屋での一件だが首謀者は『マトス・ユーレリアス』という男だ」
「父様!ユーレリアスといえば!」
「そうだ、ウチが信頼して任せているお家だ
知らず知らずの内に恨みをかっていたらしい、シュエリーその辺りはもうすぐ解決するだろう、キーア殿の前だ!」「そう…ですね!」
「ゴホンッ、キーア殿、レティ殿は何か思い悩んだりはしていなかったか?」
そういうことに聡いキーアに尋ねる
「うーん?別になかったかな?」
「それはよかった、その首謀者は予想通り、珍しい闇魔法の呪い付与が得意みたいなのだ、キーア殿、レティ殿を救ってくれてありがとう」
「レティ怪我して痛そうだったからよかった!」
「うんうん、シュエリー、ロックガンクは全くの偶然だったようだ、情報は別口だな」
「えっ、そうだったのですか」
「細かい事はペストたちと話す
キーア殿、報酬がある」
机の下から袋を取り出し渡す
「いいの?ありがとう!」
サウリューネは何の報酬か悩んでいたがシュオルターからの感謝ということにした
「では戻るか」「はいっ」「うん」
戻ってみると四つん這いでレティを乗せて動いているペストがいた
「あっちいって」「クゥーン」「あははは~」
「「・・・」」「あはは!なにやってるの!」
「あっ!キーア!父にしたです、アイナ母に出来なかったです」「クゥ?」「あははははは~」
「アイナ説明してくれ…」
「わたしがですね~レティ様のお力を見てみたかったので~ペストにかけてもらったのですよ~」
レティの魔法は幻惑魔法と洗脳魔法が得意なので、ペストにレティの父になるように魔法をかけたそうだ、アイナにもレティの母になるようにかけたが差がひらいていないせいか打ち消されたようだ
「レティさん戻してあげて下さい、見ていられません」 「わかったです!」
レティが解除すると、ペストがキョロキョロとしている、急に解けて潰れないのはさすがだろう
「あっ!姉さん洗脳魔法か!何をさせたんだ」
「あははははは~」
「レティ様、降りてもらってもよろしいでしょうか?」 レティはピョンと降りた
「ペストよ、知らない方がお前のためだ仕事に戻ろう」「えっ!僕何をしてたのでしょうか!?」
「ペスト、いきますよ アイナいきましょう」
「はい~お嬢様~」
「キーアさん私のお部屋分かりますか?」
「わからない」「レティ分かるです!」
「ではレティさん、キーアさんと少しお部屋にいっていて下さい、こちら鍵です」
「シュエリーお嬢様、よろしいのでしょうか?」
「大丈夫です、二人は親友ですから」
「わかりました、しかしいくら親しいといえこのような「はい~いきましょう~」」
アイナがペストを引っ張っていく
「ふふふ、では失礼します、また後で♪」
「うん」「はいです!」
レティは迷うことなく歩いていく、すれ違う人が何故と首を傾げていたが誰からも何も言われなかった
「ここ!寝てた部屋です!」『合っています』
「レティすごいね」「えへへです」
鍵を開けて入ると床に座る
『そういえば、レティ様、あなたは草原に住んでいたのですよね?これからはどうするのですか?』
「キーアと一緒にいるです」
『あのですね、私たちは色々な場所を巡っています、レティ様は大丈夫でしょうか?』
「ここにいないのです?うーん、一緒にいたいです、一緒に行きますです」
『…わかりました、キー様大丈夫ですか?』
「うん!一緒なら嬉しいよ!」
「そうですね♪」
「そういえば、レティ、グレティになれないの?」
「変わるです?」
レティはグレイマティの姿に変わるとすぐにキーアが飛び付く「かわいい!もふもふふわふわ~」
『キーアもかわいいです!』
「ありがとー、レティ鳴ける?」
『泣くですか?わぁぁん、上手く出来ないです…』
「あぁ違う、くーんてやつ」
『あっ、魔力使わない方です』
「クォン!クゥーン?」
「うわっ、かわいいー!」
『ふふふ♪なんかわかります』
『普通に話しているだけなのにです』
ノックがして扉が開く
「キーアさん、、、きゃっ!あっ!レティさんですか、驚きました!」
「シェリーおかえりー」『おかえりーです』
「声が頭に響いてきます…、レティさんかわいいですね、ただいまです♪」
「触ってもよろしいですか?」『いいです』
「ふわぁ~♪ふわふわ~♪」
「レティ鳴いて」 「クォン!クゥン」
「声もかわいいですね♪」
『てれてれ』
「「かわいいー」」
二人はグレイマティ姿のレティを暫く堪能した
真夜中、大きなベッドにキーアを中心に川の字で並んでいる
「あの…サリューさん、あなたは…サウリューネ様なのでしょうか?」
寝ていると思っていたシュエリーからの突然の質問
「…そうです、私は女神サウリューネです」
「質問よろしいでしょうか?」
「はい、何でもお訊き下さい」
二人は天井を見たまま静かに会話をする、キーアもレティも眠っている
「サウリューネ様の目的は何なのでしょうか?」
「…ひと言で言うとずっと一人で寂しかったのでキーア様と楽しい旅がしたいです」
「寂しかったのですか?」
「女神という存在は『世界から生まれた赤ちゃん』と正しい言い方はありませんが。宗教の教えの存在のように能力が高い、万物を何でも知っている、のような存在ではありません、所謂、意思だけの肉体のない人です」
「それは、人間と何も変わらないということですね」
「はい、理解がはやくて助かります」
「キーアさんがすごいのはサリューさんによるものもあるのですか?」
「生活面の食事睡眠といったことはそうですが、キー様がご自分で使われている時はキー様自身のお力です、私が動くと転ぶばっかりです」
「ふふふ♪サリューさんありがとうございます、これからもよろしくお願いしますね」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
シュエリーは目を閉じて眠るのだった