第2幕
ここは海の街カナン、漁業が盛んで露店がいっぱい並ぶ、王都の方よりも比較的暖かい街である
「君たちのおかげで速く帰ってこれたよ、これ証明書ね」「ありがとー!」「武器大切にしてです」
「うーん、弱い魔物相手にさえ使えなかったんだよね?何に使えばいいのか」
「冗談みたいな名前を使えばいいです」
「ごめん…長過ぎて忘れたよ
それよりも、家に来ない?お礼がしたいからご飯でもどう?」
「いくー!」「キーア、知らない人について行ったら捕まっちゃうです」
「知ってる人だよ、えーと、名前なんだっけ?」
「えー、さっきまでずっといたのに忘れちゃったの!?、僕は『テリスマイタッド』だよ」
「そうそう!テリスター…テリス!」
「でも母が倒れたのではないのです?」
「あっ!そうだ!お母さん治せるかも!」
「ホントかい!?」「うん!」
「わかったです、テリスマイタッドのお世話になるです」「名前長いから、キーアさんと同じでいいや」
「わかったです、テリス」
街の入口ではいつもの確認が有り入る
街に入ると一本の広い道になっていて、両脇に露店がずらりと並んでいた、テリスマイタッドは一本外れた道を歩いていく、大通り以外は主に住宅やお店のようだ、周りとは画した立派な家の前で止まる
「ここだよ」「すごい家!」『素晴らしい家ですね』
「ふふっ、ありがとう」
ドアに付いたノックする取っ手みたいので二回叩く
「はい?」ガチャリとドアが開き黒髪のややつり目の少年が出てきた
「あ、お父帰ってきたんだ、早かったな?。ん?誰そいつらは?」
「そいつらなんて言っちゃ駄目だぞ、今回護衛してくれた人たちだ、お礼をしようと呼んだんだ」
「護衛?そいつらが!あはは、冗談やめろよな」
「あー、ごめんね。口の悪い息子で」
「気にしないよ!」「アレリアムに比べたら全くです」「『!?』」
レティが口の悪さの引き合いにツイとばかりに名前を出してしまい困った顔をした
「…今のは忘れてです」「え、えぇ…わかりました」
どうぞ、と居間に通されると女性が座っていた
「か、母さん!?、倒れたんじゃないのか?」
「あら、お客様?いらっしゃいま、イタタタッ」
立ち上がろうとして腰を押さえる
「大丈夫!?」 キーアが近寄って支え座らせる
「ありがとねお嬢ちゃん」
「腰、痛いの?」
「ええ…ちょっと前にお店をやってた時にね、腰をやっちゃてね、その時転んで足まで折っちまったのよ」 「そうなの!?ちょっと待ってて」
キーアは母の腰に回復魔法をかける
「ん?何だい?、、あら?痛みが…」
続けてしゃがんだ「折れちゃたのどこ?」
「え?え、えぇ、右膝から足にかけてだよ」
「わかった!」手をかざす、先ほどよりも強くかける
「終わったよ!」
「え?あ、あら?痛くない?、立ち上がれる!」
母は立ち上がり後ろに反る、態勢を整え笑顔で、キーアの両手を握る
「お嬢ちゃん治してくれてありがとね!」「うん!」
ずっと待っていたテリスマイタッドがずっと気になっていた疑問を言う
「母さん、倒れたっていうのはもしかしてだけど」
「えっ?帰ってきたのかいタッド?おかえり、転倒はしたねえ」
「そうだったのかぁ、よかった」
「大袈裟だねぇ」「大袈裟なもんか!」
テリスマイタッドは手紙を見せるそこには拙い文字で
「ばあちゃん 倒れた 動けない」
単語で書いてあった、「あははは、なんだい確かにこれならそう読めるねぇ!書いたのはルーイかい」
「そうだ、とりあえず伝えないとと思ったからな」
「こんなことで帰らせてどうするんだい」
「ふんっ!」「まぁまぁ母さん」
「まぁいいわ、ところでこのお嬢ちゃん方はどちら様なのかしら?」
「僕をここまで護衛してくれた冒険者だよ」
「まぁ、こんな娘たちがかい、ありがとね、タッドをまもってくれて」
「そんなわけないだろ」
「ルーイ!」
走って出て行ってしまった
「どうしたの?」 変な空気の中でも気にせずに問う
「気にしないでいいよ、いつものことだからね」
「母さん…あんまりルーイと上手くいってないの?」
「そんなことないよ」
「ねぇ、テリスご飯は?」」
「相変わらずキーアはすごいです」
「ご飯?」「え、えぇ、お礼にご馳走してあげようと連れてきたんだ!」
「そうだったんかい!ちょっと待ってなさい、そういえば名前言ってなかったね、私は『マーサ』よ、テリスマイタッドの母よ」
「キーアだよ」「レティです」「サリューと申します」 ポカンとしてしまったので説明する
「治してくれたのはキーアさんなのね、ありがとね!今お食事作るから待ってて」
「母さん、僕が作るよ」
「いいのよ、動けるようになったし私もきちんとお礼をしたいの」 「わかったよ、手伝うよ」
『ルーイ様は大丈夫でしょうか?』
「心配です」「早くたべたいね~」
「『・・・』」
四十分後
料理を運んでくる
「誘っておいて遅くなっちゃってごめんね」
「ううん、大丈夫」「気にしないでです」
「簡単な物になっちゃったけど、できたわよ」
「ありがとう!」「ありがとうです」
「「『いただきます』」」「「???」」
「それなにかしら?」
「食べる前の挨拶」「食べ物に対する感謝を示しです」
「そうなのね!私たちもやるわよ、せーの」
「「いただきます」」
時間がなく簡単な物といいながら、しっかり手の込んだ料理だった
「「ごちそうさまでした」」
それもかしらと、二人も行った
「おいしかった!」「すごい腕です」
「それはそうだよ、母さんは腕利きの料理人だもん」
「そうなの?」
「何言ってるの、貴方もでしょう」
「テリスもなの?」
「私はこの街カナンでお店を出しているの」
「この街でお店出してもですね、普通はお客様はこないのですよ、しかし母さんの店は繁盛しているんですよ」
「明日行ってみる!」「もしかしてテリスも王都にお店もってたりするです?」
「一応もってるよ『テリスター』ってお店なんだけど」
「あの店です?とってもおいしかったです」
「レティいったの?」「少し前にヒューゴと行ったお店です」「あぁー!最高においしかった!」
「お店来たことあるの?」
「うん!全部おいしかった、ヒューゴも高いだけあるなぁって言ってた」
『ヒューゴ様に関する記憶力はすごいですねぇ』
テリスマイタッドは腕を組んで何か思い出すように記憶を辿っている
「あっ、もしかしていきなり全メニューを注文してきたお客様!」「それキーアです」
「そうだったんだ、急に全品入りましたって職員が言ったから冗談かと思ったんだよ」
「へぇー、タッドのお店で!若いのに凄いわね、タッド明日店に連れてきなさい、ご馳走してあげるわ」
「わかったよ、あっ!もうこんな時間だよ、宿とってないよね?今日は家に泊まっていってよ、いいよね?」 「勿論いいに決まっているわ、空いてる部屋はあるもの」
そのまま泊まっていった
朝ごはんも頂いて、テリスマイタッドに街を案内して貰えることになった
大通りの一番突き当たりには領主の屋敷がある
露店を開く商人は月に一度ここに来て何を売っているかを報告しないといけないらしい、店を開いている人は使いの人が直接来るのでその必要はない
屋敷の少し前には大きな噴水広場がある
「この噴水にはね『アラウラ様』という女神様が創造され宿っていると言われているんだよ」
「サリューとは違うの?」
「サリューはキーアといる人でしょう?」
「間違えた!サウリューネとは違うの?」
「えっと…?あぁ、南の方にはそういう宗教があると聞いたことあるね、キーアさんはそっちの方出身なのかな?」「うん!」
「サウリューネ様のことはよくわからないけれど、アラウラ様は一般的に商売の神様って言われているね」
「ふーん」「聞いたことないです、サリューはどうです?」「はい、私も知りません」
「サリューも知らないなんてにせ…「テリス、他にはどんな所があるです?」
「うん?あぁ、この辺りの裏の方は君たちは行かない方がいいよ、後は露店のある大通りと、外れた道にあるお店だね」
「でも、そろそろ時間かな?母さんのお店に行こうか」 向かって右の外れた通りをの中心よりやや手前側の辺りに地味で少しボロボロの建物があった
「今は人がいないけどお昼前になると行列が出来るんだよ」「楽しみー♪」「ですー♪」
店内は八席で四つの小さいテーブルしかなく狭い
「きてくれたんだね、座って」
厨房の方からマーサが顔を出す、人はまだまだこないようなので一人一テーブルで座った
「注文は何にするの?」
「全部!」「出来るのです?」
「ふふっ、いいの?全部頼むとずっと帰れないかもよ」
このお店のメニューは50品もあったのだ
「いいよ!」「お願いです」
「本当に頼むの?」
「わかったよ、まってて、キーアさんたちが終わるまでお店は閉店にしておくよ」
「大丈夫なの?」「平気だよ!」
「僕いつものでお願いします」「はいよ」
表に張り紙をして作り出した、次々手早く料理が完成していき持ってくる
「「「いただきます」」」
「「おいしい!」です!」
「テリスのお店と似ているけど、染み出る感じが強い!」
「キーア、流石に本人前には失礼です」
「いや、いいよ やっぱり母さんの料理は数段も上だね、僕の目標なんだ」
テリスマイタッドは心から尊敬して目をキラキラさせている、テーブルに空の皿が出来る、その後に運ばれてくる
「料理もただ食べるだけじゃなく味までわかるなんてね!それに私が作る方が間に合わないなんて」
マーサさんは素直に喜び笑う
「確かに、ある程度の腕のところからはきづけない微妙な違いになるのにね」
「レティにはどちらもすごくおいしいことしかわからないです」
「それでいいんだよ、おいしいって思ってくれることが嬉しいのだからね」
そんなこと話しているうちに、またキーアのテーブルに皿が積まれる
「うーん、おいしいね」最高の笑顔だ
「あはは、これはお店の心配するよりも母さんの心配が先だったかもね」
「ごめんねー、もうちょっとで次できるから」
「母さん、僕食べ終わったから手伝うよ」
「ごめんね、まず片付けからお願いできる」
「任せて」
こうして全部食べ終わるのはお客がくるという時間のほんの数分後であった
会計をしようとするとかなり高額の値段にもかかわらず断られてしまった
「いいんだよ、これは母さんの治療費であり追加護衛料でもあるからね」明らかに合わない
ギルドに入口まで案内してもらうとテリスマイタッドと別れた、ギルドはやはり中心にあるようだ
中に入ると思わぬ人物、ルーイに遭遇した
「あっ?おまえたち何でここにいるんだ?」
「ん?報告とお仕事見にかな?」
「まだ言ってるのか?おまえたちなんかに冒険者は無理だろ」
「うーん?名前なんていうの?」
「はっ!聞いてたろ、ルーイだ」
「ルーイ!じゃあ報告にいくね」
「聞いてないな!?」
「…めんどくさいです」『まぁまぁレティ様』
「ルーイ、何してたの?」
「うっ!?ちょっと中の様子を見てただけだよ」
顔を背けて言う
「冒険者になりたいの?」
「!!、そうだ、俺は冒険者になるんだ!」
「年齢あったよね?」『はい、12歳からです』
「う、うるさいなぁ、わかってるから見てるだけなんだよ」
「一緒に来てみる?」『キー様!?』
「い、いいのか?」「うん!いいよ」
「ふん、一緒にいてやる」
「キーア、レティがお仕事みてくるです」
「わかった!ルーイは武器何使うの?」
「冒険者なら剣だろ!!」
「そういえば一番剣使ってないかも?」
「やっぱりおまえ冒険者じゃないだろぅ!」
「キーア持ってきたです」
「じゃあ受けよう!」
報告して、依頼を受けて外に出る
「武器買っていいよ」
「ホントか!」
とある露店に走っていき剣をとる
「これにする!」ずっと決めていたのか、一直線だった
「サリュー!」「はい、こちらお願いしますね、はい銀貨17枚ちょうど、ありがとうございます」
購入してルーイに渡すとボーっと眺める
「いくよー!」
「剣持って歩くのって以外と大変なんだな」
「そう?いつも背中に背負っているからわからない」
「はへー…」
門を出るとレティが防御魔法をかける
「キーア、いいですよ」「はーい」
『目標のツーイックは…近くにいないですね、代わりにセコルニウトがいます』
「ルーイ、セコルニウトがいるみたい、戦ってみてね」ニコッとする
「おうっ!任せとけ!」
「くるよ」
「ガサガサとセコルニウトが姿を現した、イモムシのようで両手で円を作ったくらいのおおきさだ。
口から魔力を弾のように一発吐き出すと、逃げる姿勢はとったが行動は起こせずに当たって下がらされる
「うわっ!・・痛くない?」
「何やってんの!あのくらい避けようよ」
「無茶言うな!突然きたんだぞ!」
「はぁー…、ルーイはさっきので大怪我をしたです、言い訳は見苦しいです」
「怪我してねぇだろ!生意気言うなガキのくせに!」
「わかったです」『レティ様!?』
レティがルーイの魔法を解除する
「魔法を解除したです、しっかり避けた方がいいです」キーアに目配せする、ルーイがレティばかりを見ている時にキーアがひきつけ続けていた、キーアは大きく跳んで下がる
「すげぇ…」「くるよ!」「!!」
セコルニウトは一番近くなったルーイに標的を変える、口部がモゾモゾと動いているがルーイが正面から突っ込んでいく 近づいた時に魔力弾が放たれるが避けることもせずに食らうと後ろに吹っ飛ばされた
「ぐわぁぁぁぁ!」二転三転して止まる
「うっ…」手で地面を押そうとしているが力が入らないようだ、『大丈夫でしょうか?』
「受ける構えぐらいはしたらどうです?」「う、うるさ…」 レティは言うとすぐにセコルニウトに向かっていって一瞬で倒す
「大丈夫?、えいっ!」キーアがルーイに回復魔法をかける
「う、えっ?からだが?」ルーイは立ち上がる
「あっ!魔物は!」「もう、レティが倒したよ」
「あいつが?畜生!次は倒してやる」
「ルーイ!!」突然にキーアが声を荒げてルーイがビクッとする
「助けてくれたんだから、まずは『ありがとう』だよ!!」
「ぐっ!」後ろを振り向きレティをみる
「あ、ありがとう…」
「レティはいいです、キーアにこそお礼を言ったらどうです?」 「え…?あっ!」
少し逡巡して治してくれたのに思い当たったようだ、キーアに再び向き合い「回復してくれてありがとう」 「どういたしまして♪」キーアのその笑顔にほぅっとなる
「ルーイ、あの魔物は弱い魔物です、冒険者になりたいなら覚悟を持つです!」
「い、いや…俺は冒険者になりたいんじゃ…」
気まずそうに顔を逸らす
「違うのです?」
観念したように、腰を下ろし話し出す
ルーイは5歳の時から母親とよくお菓子作りをしていたそうだ、彼はよく「上手いねぇ」「将来はお菓子職人になるね」と言われていた、だが三年前、7歳になった年に若くして病気で母親が亡くなった
それから何日か塞ぎ込むも一人でお菓子作りを始めようとしたが、材料だけでなく、器具がないことに気付いてお婆ちゃんにききにいった、そしたら捨てたと言う、彼は何で!と言うが頑なに『捨てた』と、それからは無理矢理に料理を手伝わされ続けて嫌になったと言う。「ルーイもおかあさんいないんだ!」
「えっ?キーアの母親も?」
「うん!死んじゃった!」
「軽いな!?」「悲しいけどね…おかげでね夢がね、出来たんだよ!」「夢?」
キーアは絵本を取り出しルーイに見せる
「勇者みたいに困っている人を助けるの」
「…いい夢だね」絵本を返す
「ありがとう!がんばる!」
「ルーイ、お菓子作りはしたいです?」
「…わからない、今は何していいのかも…」
「やってみるです!」
「えっ?でも…」「さっ、いくです!」
「うん!やろうよ!」
「うん、うん!」
『あの~、忘れているようですが…ツーイックの討伐を』「「あっ!」」「?」
探し回って討伐してから街に戻った
「うーん、どこでやろうか?」
『そうですねー・・・』
「家でしかやってなかったからな…」
材料や道具を買った後、悩んでいた
「家…あっ!そうだ!自分の家ならいいんだ!」
「はっ?」「キーアの発想は突飛です」
『無理なら無理で見てみればいいのではないでしょうか?』「行ってみるです」
「えっ?どういうこと?」
「ルーイ家ってどこで買えるの?」
「は?何言って…そういう意味!?
あり得ないよ!家なんてお金が…いくらくらい何だろう?」
「行ってみたらわかるよ!」
「子供だけじゃ買えないんじゃないかな?」
「うん、行ってみたらわかるよ!」
「あー、わかったよ!物件屋はこっち」
大通り露店が並ぶ一番先のお店に入る
「いらっしゃいませ、って何かな?ご用がありますか?」子供だけが来店してきて子供対応に変わった
「家買うの!可愛い家がいいな!」
「えっと…」ルーイは恥ずかしくてモジモジしてる
「お嬢さんいくつかな?」「一つ!」
店員は眉をヒクヒクさせる
「何歳なのかな?」「12歳」
「うーん、家買うのに幾らかかるか知ってるかな?借りるならわかるんだけど」
ルーイは今すぐ駆け出して逃げたそうだ
「とりあえず値段教えるです」
「…(イラッ)わかりました、借りるなら月に銀貨30枚くらい、購入するなら大金貨8枚くらいが一般的です」内心イライラしながら表情に出さずに説明する
「あわわ、そんなに高いんだ!」
ルーイが指を折って、お小遣いのどのくらいになるか数たが、わからずに頭がショートしている
「サリュー?」「大丈夫です」
「やったぁ!可愛い家をお願い!」
「(ジロリ)聞いていたでしょうか?」
「???、聞いてたよ?可愛い家お願い」
「兵士呼びますよ?」
「店員さん!聞いてたです?購入するです」
バンッと音がなるくらいで華貨を目の前におく、ビクッと店員は目を丸くさせる
「兵士を呼ぶです!」
「し、し、失礼しましたっ!!!お許し下さい!!」
「うん!可愛い家をお願い!」
「はい!只今!」
「ルーイ買えるみたいだよ!」
「えー、あー、うん、そうみたいですね」
何が起こったのかに理解が追いつかずにただ返事をするルーイだった
店員さんがいくつかの資料を持ってくる
「可愛い家というのは後から出来るので、家の内装の振り分けを見てもらいます」
「お店みたいな感じはあるかな?」
「えっ、どうして?」「ルーイが作ったら買えるもん!」「作るかもわからないのに…」
「えっとそれでしたら、少し手直しは必要となりますが」と資料を見せて説明してもらう
『いいのではないでしょうか、場所も動きやすいですし』「うん、いいね!いくら?」
「お値段はそのままでは大金貨13枚と金貨6枚です、先ほど申し上げたように柱や外装など改装すると追加金貨5枚です。
今すぐ半分を払っていだたいて半年以内にもう半分を払うということもできます、こちらは払えなかった場合や逃ぼ…」「チャリ、チャリ…」
サウリューネが目の前にお金を置いていった
「家使っていい?」
「えっ?ちょっと待って下さい…はい確認しました、こちらが証明書となり貴女様の家であることの証明です」「ありがとう!いくねー」
「ちょっと待って下さい」「ん?」
「今から使いたいとなると改装の開始日程はいつ頃から行えばよろしいですか?」
「明日の昼からお願いするです」
「承りました、ありがとうございました」
歩き出したがルーイが付いてこないので振り返る、「ルーイ?」「行くです」「・・う、うん、ごめん、行くよ」
外は暗くなっていた
「…。」「どうしたの?」
「いや、帰らないといけないなぁと思って」
「お菓子作りは?」「ごめんね」
「うーー」「明日の朝ならまだ時間あるです」
「そうだ!泊まりにくればいいよ」「!!」
正直いうと、ルーイは気まずさからあまり帰りたくなかった、そんな浮かない顔のルーイにレティが
「わかったです、レティが伝えてきますです」
「わぁ、レティありがとう!」
「任せるです!」「えっ?ちょっと…」
「行こっ!」「わぁ!」
手を引っ張って購入した家に走ってった
『ここのはずです』
テリスマイタッドたちの家よりも更に少し大きな丸みのある空き家がそこにはあった
「大きいね!!」『思っていたよりも、倍は広い…』
家を一人で一周回る
「えー!こんな家を買っちゃったの!?」
もらった鍵で開ける
広い一部屋があって右奥に階段があって陰からキッチンスペースが伸びている、三つドアがある、入口の左側突き当たりに倉庫、左奥に二つあって左の壁に小部屋、正面の壁に水場があった
キーアはバタンバタンとドアを開けてはしゃいでいる間にルーイはキッチンを見ている、少し背が高く背伸びする、そんなルーイをキーアは後ろからヒョイっと持ち上げる
「わぁ!急にもちあげないで」
「えへへ、ごめんね」ルーイを下ろす
「まぁ、いいけどね
気付いたけど、オーブンとか焼く器具を忘れてたよ!」 彼の家ではオーブンや炉といったものにかんしては常にあったものだから頭から抜けていた
「オーブン?」「戻ったですー」
「あっ、おかえりー」
「ただいまです!ルーイ、今日は帰らないことは伝えたです」 「うん、ありがとう」
『ルーイ様は素直になりましたね♪』
「レティ、オーブンっていうのがないんだって」
「レティもあんまり調理には詳しくないのでわからないです」
「焼いたりするんだけど、今の時間じゃやってないし…、キーアごめんね、今日は準備して明日家で焼くしかないかも…」
「魔法じゃダメなの?」「うん、難しいし出来ても中途半端な物しか出来ないと思うんだ…」
「うーん、しょうがないね!
私も何かできるかな?!」
「うん、一緒にやろうよ!教えるから」
「レティもやりたいです!」
『(こういうのは心地がいいですねぇ)』
それからは買った物を広げお菓子でクッキーのようなものをみんなで作る、途中キーアが材料の分量を面倒くさがって大量に入れてしまったり、レティが力を込めすぎて形が歪になったりもしたが、その都度ルーイがフォローしてくれてなんとか完成した
「後は焼くだけだよ」
「楽しみだねー、あははサリューの形変なの」
『お恥ずかしいですね、難しいものです』
「キーアは上手いです、レティも整えたけどデコボコしてるです」
「あはは、上手い下手は初めてだからしょうがないよ」 「ルーイ、ずっと楽しそうだった!」
「そうだった?…うん、やっぱり楽しいな……お菓子作りは好きだ!」
「よかった!笑顔になったね、明日かー明日が楽しみ!」「楽しみです、今日は遅いから寝るです」
「笑顔…か。そういえばベッドも布団もないよね?」
「えっ?」
布団一式を出していたキーアがルーイの方を向く
「あるんだね…、ここで寝るの?まだ見てないけど二階で寝た方がいいんじゃないかな?」
「そう?それなら行ってみようか!」
二階に上がると一本の廊下で両脇に三つずつともう一つの六部屋があった、手入れはされているようで綺麗である、その広い一部屋に三つの布団を出す
「さぁ寝ようか」「えっ?一緒の部屋なの?」
「何かおかしいです?」「僕はいいけど、恥ずかしくない?」『!、ふふっ』
キーアとレティは顔を見合わせるが浮かぶのはハテナばっかり 「いいならいいよ、さぁ寝ようか!」
ルーイはとっとと布団に入る
「あっ、この布団気持ち良い」
疑問に浮かべたままキーアたちも布団に入って眠る
サウリューネはなんかツボにはまってしまい声を殺して少しの間笑い続けていた
朝、ルーイに朝ご飯を出す
「こういうのもおいしいね!」
「食べたことないの?」
「うん、覚えている限りだけどいつも家かばあちゃんのお店で食べてたから」
「贅沢です」「あはは、本当だね!」
「キーアもです」「あれ?」
「あははははは」
「ただいまー」「「おじゃまします」です」
奥からテリスマイタッドがやってくる
「おかえり!キーアさんレティさんいらっしゃい
ルーイ、昨日は心配したんだ、でもキーアさんたちと一緒でよかったよ」 心から心配していたことにルーイは頭を下げた
「ごめんなさい!」
「うん、ルーイが無事なら良いんだよ」
優しい笑顔をルーイに向けている
「うん、ありがとう。ねぇ、お父さん!」
「!?、なんだい」
突然の真剣な顔に改める
「僕、お菓子職人になりたい!なれるかわからないけどね、頑張りたい!」
「ルーイはお菓子を作るのが好きだったもんね、最近は作ってくれなかったから嫌いになったと思っていたけど違ったんだね、僕は応援するよ!」
「えっ…覚えているの?」
「僕にとってはルーイのことなら当然のことなんだよ、よく妻も話していたよ…ルーイは本当に楽しそうにお菓子を作るんだってね、僕はたまにしか帰ってこれなかったけれど、帰るとお菓子を作ってくれた、とてもおいしかったのもよく覚えてる、…だけど妻が他界してからは作ることがなくなった、きっと思い出すのが辛いんだと思っていたんだ」
「えっ?う、うん、お母さんのことは悲しいけどやっぱり楽しいから、キーアたちが思い出させてくれたんだ」『(テリスマイタッド様はマーサ様のことは知らないのですね…)』
「テリス!違うよ!」「キーア!言わないで」
「ルーイ、なんで?」
「ルーイ!?、キーアさん?どうしたの?」
『とりあえずはルーイ様の言う通りにしましょう』
「ううん何でもない、お菓子焼こうよ」
「うん、そうだね」
キッチンに移動すると色々な機械・道具を教えてもらった、キーアは昨日作ったお菓子を出す
「くすっ、全部が違う形をしてるね」
「みんなで作ったんだよ!」
「個性があっていいね♪」
焼き始める、時間がかかるらしい、席に座る
「ところで昨日レティさんから『ルーイと一緒にお菓子作るから、家に泊まっていく』って聞いて帰って行っちゃったんだけど家って?」
「家買ったの!お菓子作るために」
「ん?よく聞こえなかったなぁ、もう一回いいかな?」ルーイが片手を額に当て首を振っている
「お菓子作るために自分の家を買ってきたの!」
「聞き間違いじゃなかった!?」
「聞いているです、テリスは嘘をつきましたです」
「いや、そうなんだけどね!信じられなくて!
借りたんじゃないのかな?」
「ジーッ、テリス信じてないの?」
「いや、あの、ごめんなさい」
「キーア、子供の言うことなんて信じないのが普通です、仕方ないのです」
「ちょっと待って!?そう意味で言ったわけじゃないよ!あまりにも高額過ぎる買い物に自分が信じられなかったんだよ!」
「お父さん、多分遊ばれてるよ」
「えっ?何に?もしかして家は嘘かい?」
「それは本当、僕も隣にいた…」
「「・・・はぁ」」
「どうしたの、ため息ついて?」
「疲れちゃったよ、家買ったんだねよくお金あったね」「それは僕も思ったよ、色々買ってもらっちゃったし、もしかして貴族なの?」
「ルーイ、君も商売をやるなら人の詮索なんてものはしない方がいい、キーアさんたちは違うけどね、 悪いけどギルドカード見せてもらっていいかな?」
「いいよ!」 テリスマイタッドはルーイに貴族だと縁が違うことを説明する
「へぇそうなんだ、この★4っていうのは?」
また説明を始める
「って!?キーアたちってそんなに凄いの!?」
「こら!失礼ですよ」「ごめんなさい」
「因みに昨日のは?」
「★2魔物です」「あれで!確かに弱いって言ってたけど」
「昨日のって?」「えっ、いや…」
「途中で会って戦いを見せて欲しいって言われたです、お仕事受けるついでに見せてあげたです」
「そうだったんだ、迷惑かけてはダメだよ」
「うん(レティ、ありがとう!)」
「なんかいい匂いしてきた♪」
「本当だね、みてくる」
少し経つといい感じだと取り出し別々にして持ってくる、まずは念願のルーイのお菓子を食べる
「何これ!売っているのよりもおいしいよ!?」
「本当です!」『甘みも食感も絶妙ですね』
「懐かしい味だよ、久しぶりとは思えないよ」
「よかったぁー」
次はキーアのを食べる
「甘い…口に残る…」「そうです?おいしいです」
『キー様おいしいですよ…』
「初めてだからしょうがないよ」
「砂糖いっぱいだったもんね」
レティのお菓子
「うん?うん?おいしい?」「よくわからないです?」『ラウドの宿を思い出しますね』
「上出来な出来だよ」
「焼きにムラが出来ちゃうね」
最後はサリューの
「「「「おいしぃ」」」です」
『えぇー本当ですか?嬉しいです』
「サリューの売っているのみたい」
「これはすごいなぁ、本当に初めてなのかい?」
「見た目が残念だけど、味は最高だね」
「「「『ごちそう様でした』」」」「えっ!」
それぞれ一枚ずつはもらった