4章 第1幕 護衛から始めるきまま旅
ニアルド村は畑中心ののどかな村だ、人口も四十人ほどである
「キーアさん、レティさん、本当にありがとうございます、ここまで快適に過ごせたのはキーアさんたちのおかげです、これは証明書です」
「ありがとうございます、食事までも助かりました、お返しも何もできないことが心苦しいばかりです」
「ありがとう!勇者のお姉ちゃん」
依頼完遂の証明書をもらう、これを何処でもいいのでギルドに渡すと報酬が貰える
「どういたしまして、楽しかったよ!
そうだ!この村で困っていることってある?」
「困っていること…、今はどうか分かりませんが王都へ行く前に村に住む人何人かがぐったりしていました…大丈夫でしょうか」
「行ってみよう!」
「私が行ってみます、お父さんはメルアと帰ってて」
「わかった」「お姉ちゃんまたね!」
一番近い家に入る
「おじゃましますね、調子はどうかしら?」
「「おじゃまします」です」
返事が無い、人の気配もない
「お留守のようですね」
「元気になったのかな?」
「そうならよかったわ」
他の家にいくが同じだった、ネルターも段々におかしいことに気付いていく、外でも呼びかけるが閑古鳥が鳴いているようだった
「何があったのか調べないとです!」
「どうすればいいのかな?」
「とりあえず、二人と合流しましょう!」
「キーアさん?そうですね!」
オルバーの家に行くと二人はいたが、この状況に震えいた
「あっ!母さん、人がいないようなんだ!」
「ママーなんか怖いよー」
「今、キーアさんたちと家を回ったのだけれど、家の中にも誰もいなかったわ」
「この村の周りには何か特徴的な物や建造物はありますか?」
「いや、ないな、森があるくらいだ」
「原因がまるで分からないです」
少し外を見てくることにした、畑がたくさんあり作物は植わったままだ
「何もないね」「無いから怖いです」
『魔物の気配も無いですね』
村の中も外も見たが新しい発見はなかったのでオルバーの家に戻り、ただ静かだったことを伝える
「せっかく稼いできたのに、唯一のお店もダメなようじゃこれからどうすればいいんだろうな」
「まだご飯あるけど買って来ないと少ないね
あっ!フォーナに聞いてみたら分かるかな?」
妖精の森を通ることを想像して気が付いた
「いいかもしれないです!」
「フォーナ?」「仲間です」
「食べ物は置いていくね、ちょっとでてくる」
連絡手段でもあるのかな、と少し規格外の二人に期待して、置いていってくれた食べ物に手を伸ばした
村の側に川があるのは見ていたのでそこで呼び出す
「フォーナ助けて!」
「初めて助けを請うて呼んだの!危険なのか?」
「村から人が消えたです!原因が全く分からないです」『何か分かりますでしょうか、お願い致します』
「村というのはそこの村じゃな、ちょっと待っておれ」 フォーナが察知する魔法を使う
「うむ?引っ掛かったぞ!これは…ひどいのぉ…
分かったぞ、ここから5キロ離れた岩山の陰の洞窟に吸血鬼が一体おる、人は残念じゃが…」
「そんな!村の人はどうにかならないの!」
「無理なのじゃ…、自然の摂理はどうにもならぬ…」
「ひ、ひっく」キーアは泣き出してしまう、そんなキーアをレティは抱きしめて
「キーア、仕方ないのです…、それよりも!!今放っておいたら、それこそあの家族が同じ目に遭うです!」「ひっ…えっ?」
キーアをレティごとフォーナが包み込む
「そうじゃ!キーア助けたいのであろう!キーアなら吸血鬼を倒すことも出来る!サリューもおる」
『キー様、やりましょう!救う為に、気付かれたらまた村を襲います』
1拍、腕で目元を拭う「やる!吸血鬼を倒す!」
「ウムッ!よく言ったのじゃ!
吸血鬼を倒すにはサリューが半分魔力を流し、キーアが回復魔法を使え、妾が行ければ良いのじゃが、近くに水場はない、持ち運びのでは少し弱らせるくらいしか出来ぬじゃろ」
「それでもいてほしいなぁ」
「うっ、その上目遣いはやめるのじゃ!分かった、分かったから!」
『ふふ♪フォーナ様はキー様には甘いですからね』
「フォーナ可愛い!!」
「やめるのじゃぁ!」
オルバーにこのことを話し、二人に話すかは判断は仰いだ、どうやら話すようだ
私たちは吸血鬼の方へと向かう、フォーナは盥で呼び出しレティがグレイマティの姿で防御魔法で固定させ運ぶ、フォーナが感知しているので奇襲の恐れはない
「普通なら魔力が枯渇してしまう、防御魔法をこんな風に使うやつはお主ぐらいだろう」とフォーナには呆れられた
「もうすぐなのじゃ!気付かれるであろう」
フォーナが戻り再度呼ぶ
洞窟が見えてきた、キーアとレティは距離をとる、注意して入るが出てこない、奥で待ち構えているようだ 奥に進むと酷い異臭がした
「うっ、何これ!」『キー様気を付けて』
目の前の光景は酷かった、部屋の隅にゴミだとばかりに積んである人の山、生気はない
キーアに怒りが浮かぶ
『キー様!上から』
咄嗟に後ろに跳んだキーア、先程までいた場所に切り傷が一線出来る
「クックック避けるか、小む…」
「エイッ」杖を振るった
「うぐっ!?」ザッザッザッと後ろに下がって行く
そいつは吸血鬼だった
『キー様、ハンマーですよ!』
「ごめん!いきなりきたからすぐに取れる杖構えちゃった!」
「口上ぐらい述べさせろ!」
「いきなり襲ってきて当たったらどうするの!」
「うぐぅ、何だ…力が抜ける」
「何じゃ?お前弱いのじゃな!キーア!」
「何を言う」全身にその身体の膨大な魔力を込め始める
「えいっっ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁー!!!??」
フォーナの合図で既にサリューと合わせ、半分まで距離を縮めていたキーアが回復魔法を放つと吸血鬼は消滅していった
弱いといっても、サリューの察知に間近に来るまで気付かれない程は強いのだが、吸血鬼は魔物ではないが強さに換算すると★5に近い強さがあったが、本人が隙だらけで魔法の打ち消しもされなかったので簡単に終わってしまった
キーアは悲しそうに山に積まれた人を見て目を閉じる 『キー様…』「「キーア…」」
みんなはキーアを見守る、キーアが徐に目を開けて
「えいっ!」
すると、山に積まれた人たちの肌に色が戻り、傷が癒えた、もう一度悲しそうな顔をして、笑顔で振り返る
「いこっ!」その顔に悲しみはもう表れてはいなかった
「吸血鬼は倒したよ!!!」
「本当に何から何までありがとうございます、村は残念ですが…」オルバーとネルターは悲愴感があった
「お姉ちゃん!!ありがとぉぅうえぇ」メルアがキーアに抱き付いてきてそのまま泣き出す、そんなメルアをキーアは優しく撫で続ける
「皆さんどうするです?」
「今決め合っていたのですが、何処かの街へと移り住もうと思っています」
「お金あるです?」「それは…」
「これ使ってです」レティは自分の華貨を差し出す
「これはお金?ですか?」
「はいです!少ないけど王都では使えるです」
「いえ!色々してもらい村でまでも救って頂いたのに!」
キーアは落ち着いたメルアを抱き上げて
「気にしない♪気にしない♪レティが良いって言ったんだから」
納得はいってないようだが、家族のことを思うと大変にありがたかった
「決まりです、サルエードまで送りますです」
「送るっていっても、私たちでは何ヶ月かかるか…」
レティが姿を変える
「ひっ!」「きゃああぁ!」「えっ、かわいいー」
キーアはメルアを降ろしてあげると駆けよってしがみついた
「め、メルア」ネルターが駆けよって抱き上げ、遠くへ逃げる
オルバーは必死で守ろうと戦う姿勢をとる
「やー、離して!レティに触るの!」
メルアはネルターから逃れようと暴れているがそれを許さない
「レティが怖がられているのってあったっけ?」
『警戒はされましたが、今まで一般的な人の前ではなかったですからね、これが普通の反応かと』
『なんか寂しいです』
「みんな、レティだよ!大丈夫、グレティは優しいの!」
「レティなのか?」『はいです』
「わぁあ!何だ?声がしたぞ?」
『レティが魔力で話しているです』
「レティ…なんだな、襲わないか?」
『はいです』「…母さん!」
逃げたネルターを呼ぶ、すると手からメルアが抜けて再びしがみついた、メルア!と叫ぶがオルバーがネルターを止めてレティだとしっかり説明する
「はぁー、それにしてもレティさんが魔物だったとは、獣人だと思ってましたよ」
「そうだね、ごめんなさい」
『気にしないでです、乗せて送るです』
「わーい!」
喜ぶメルアに不安気な二人
「一日あれば着くからお菓子をあげる」
「「一日!?」」
衝撃がないことを伝えて、前からメルア、オルバー、ネルターで座る
「お姉ちゃんは?」
「乗れるのは二人か三人だからね、先に行ってるよ」
「そうなんだ…」「「(先に?)」」
「いってくるです」「いってきまーす!」
「いってらっしゃーい!」
すごい速さで消えていく
「うん、行こう!レティにはいつもありがとうだね」『そうですね』
妖精の森を探す、場所は村の入口外すぐ左だった
「あれ?そこ通ったよね?」
『はい通りました、もしかして!』
フォーナを呼び出してみる
「あぁ、力が失われてきておるな、吸血鬼の影響と村としての機能がなくなったからじゃろうな、まだ最近のようじゃから辛うじて流れはあるが、あと2,3日、下手すると明日には消える」
『もうここからではいけないのでしょうか?』
「いや、まだ機能はしておる、があまりに弱いから自分からも魔力を出しておれば見えるはずじゃの」
『そうですか、ありがとうございます』
「お菓子あげるね」
「うむ、ありがとう」
フォーナが言った通り魔力を身体に通していると端の柵沿いの所に薄らと道が現れた、少し不安だったが無事に移動することが出来た
「今日はシェリーの所に行きたい…」
『そうですね、行ってみましょうか』
ラウドの街、屋敷まで歩くと門の所には困った顔の二人の門兵とペストがいる、そしてなんとシュエリーが儚げに佇んでいた、こちらに気付いたシュエリーがドレスの裾を持ち上げ走ってきた
「キーアさん!こんばんは!」
「シェリーどうしたの?」
「あのですね、分からないのですよ、一時間ちょっと前でしょうか?変な胸騒ぎがしてですね…いてもたってもいられなくて…何となくですがキーアさんが来るのでは?と感じたのですよ!」
「そうだったんだ!うん、シェリーに会いたくなっちゃったからきたの!」
ハキハキと喋るキーア、だがシュエリーは眉をハの字にする
「…キーアさん、何だか元気がありませんね…」
「…元気だよ、うん…元気!」
『(シュエリー様はお分かりになられるのですね…)』
「キーア様、サリュー様、こんばんは
シュエリーお嬢様!お屋敷に入られたらどうでしょうか?」
「…えぇ、そうですね
キーアさん、私のお部屋に参りましょう」「うん」
シュエリーはキーアの手を引いて歩く、そしてその手には元気がないと感じてしまうのだった
「キーアさんご飯食べましたか?」
「ん、食べてない」
「ご用意できますよ?」
「…いらないや」
キーアの全身に温もりが伝わる、そのままベッドまで押されていき倒される
「シェリー?」「キーアさん」
シュエリーは力を込める
「んっ、シェリー」シュエリーの背中に手を回す
「はい」
「ありがとう」片手を頭の上で動かす
「はいっ!」
暫くするとキーアの手が止まる
「ふふっ、キーアさん寝ちゃいました」
シュエリーがキーアと同じようにしようとするがそこからでは手が届かなかった
まだ少し早い時間であったのだが、シュエリーもしっかり両手を回して眠ったのだった
『(シュエリー様ありがとうございます♪)』
夜が終わったまだ辺りは真っ暗な時間
その綺麗な瞳が開いた、お腹辺りに手が回っていて、自分もシュエリーに抱き付く格好だった
キーアはゆっくりと昨夜屋敷に来た後のことを思い出す、よくわからないけどシュエリーを求めていたようだ、頗る体の調子が良く軽い、憑きものが取れた感じだった「シェリー、、、ありがとう」囁くような小さい声 「くぅぅ」 「ん、、うーん、昨夜は・・・キーアさんおはようございます」「あっ!、、お、おはようシェリー!起こしてごめんね」
『ふふふ』 キーアは普段絶対なることのないお腹の音でシュエリーを起こして恥ずかしかった
極度の緊張や精神負荷のせいだろう
「いえ、早く寝たので目覚めたのだと思います」
シュエリーは気付いていないようでホッとしたのだが、「くぅぅ」 「あぅ…」
キーアの顔がどんどん赤くなる、よくわからないが恥ずかしかった
「『かわいい!!』」ますます縮こまった
「キーアさん、元気になられたようでよかったです」
「うん!元気いっぱいだよ!シェリーありがとね!」「はいっ!私はすごく嬉しいです」
『キー様、そろそろ到着なさるかと』
「あっ、そうか!シェリー突然ごめんね、これからレティの所に行かないといけないの」
「分かりました、今回のような時はまた私を頼って下さるととても嬉しいです」
「うん!ありがとう、シェリーがいてくれてよかった!」
太陽のような笑みで返されドギマギしてしまう
「今度は一緒に何か食べようね」「はい!」
カチンといつもの挨拶をして別れる
王都サルエード門前、門兵にレティのことを聞いたがまだ通過していないようだった、多分親子のことを考えて少しゆっくり走っているのだろう
ノンビリ待つこと四十分、四人の姿が見えた
「お姉ちゃんだぁー!」「「本当にいた!?」」
メルアがキーアに飛び込んでくるので、受け止めくるくる回る
「ただいまです」「おかえりー」
「よかったです、キーア」「何が?」
レティは首を横に振った
「速かったですよ、どうやって先にきたのですか?」
「移動した!」「そうですよね、失礼しました」
オルバーとネルターはくるりとレティの方を向いてお礼を言う、それに続いてメルアもお礼とモフモフの感想を言った
「頑張ってくださいです」「元気でねー」
「お世話になりました」「ありがとうございます」
親子は街へと消えていった、華貨の価値を知って驚くのはもう少し先のお話し
ギルドで受付の人に驚かれた、ニアルドの依頼を推薦した人で今キーアたちがここにいるからだ
「依頼達成です、報酬はこちらです」
銀貨3枚と銅貨3枚
「それで報告があります、ニアルドの村ですが」
サウリューネは説明した、壊滅状態だったこと、吸血鬼がいて倒したこと、村人たちは殆ど殺されたこと、護衛した人たちは再び王都に連れてきたこと
「それは嘘のような酷い話しですね!でもキーアさんたちがしないことは分かっています、後にその確認はしますが、ちょっとお待ち下さい」
数分後
「やぁやぁ君たちかーい?可愛い女の子たちだねぇ」
やって来たのは茶色髪の40くらいのネチっこい言い回しをした男だった
「ぼくはギルド管理長代理をしている『ケ・ルン』だよぉ」
「ケルン?」「ケ初めましてです」
「ケなの?ケ!よろしく!」
「うーん、名前はねぇ…合っているのだけどねぇ…、好きじゃないんだよねぇ~」
「ケ、それで何?」「プププププ♪」
受付の人が笑い出す
「そこぉ、わらうなぁ!」「ごめんなさーい」
「うーん、今回の報告ニアルドについてだよぉ
ちょっと来賓室に来てもらうねぇ」
「ケ、分かった」「ケ、了解です」
「もしかしてぇ、バカにされてるぅ?」
「してないよ!」「わざとです!」
「ギルドカード剥奪しちゃうよぉ?」
「代理、それは冗談でも許されません!」
「冗談、冗談だよぉ、許してね!」
「うん!」「やです!」
「…ごめんなさい」
『レティ様?どうされたのですか?』
「なんかこの人、面白いです!」
「やっぱりバカにしてるねぇ?」
「えいっです」
二階に向けカクカクと歩きだすケ
「なにこれぇ!ぼくになにしたのかなぁ」
「来賓室にいくです!」「行こー!」
『キー様とヒューゴ様みたいですね』
来賓室、テーブルを挟み座る
レティが洗脳を解除する
「よくこの場所知っていたねぇ?」
「何回も来たです」
「来るようなことが前にもあったのぉ?」
「…管理長って何やってるです?」
「・・・。色々あるけどねぇ、大きな事件が合った時に関係者に繋いだりぃ、予想外の出来事の時に情報の提供、収集を行ったりするよぉ」
「最近は何があったです?」
「それは言えないよぉ」
「アレリアムって知ってるです?」
「っ!それは知っているよぉ、この国の王子だもん」
「キーアのことは知っていたです?」
「えっ?初めてお会いしたよぉ」
「この人、不真面目です!」
「ギクッ!何を言ってんのかな?それに何でぼくが尋問されてるの?ニアルドのことを詳しく教えてね?」
「急に早口になったです!」「ぅぅ」
「何をなされているんですか」
サウリューネは呆れながら、ケにもう一度ニアルドのことを説明する
「…村の外観はそのままなんだねぇ?」「はい」
「吸血鬼は本当に消滅したのぉ?」「はい、察知出来ますが完全に消滅しました」
「…わかった、残念だけれど事実のようだねぇ…近くで吸血鬼の出現だったかぁ…村はその人たちにも聞いてから決めよう、、、。うん!君たちに報酬をだすよぉ」「事実確認の後でなくて大丈夫なんです?」
「大丈夫だよぉ、見た目通りぼくは優秀だからねぇ♪(キラッ)」 「「『えっ?』」」
「・・・。報酬もってくるよ」
ケは部屋を出て包みをもってくる
「今回は早期発見の速やかな解決にご尽力下さりありがとうございました」
「えっ?誰です」「えっ?ぼくだけどぉ?」
『ふふっ』「レティ楽しそう」
報酬は華貨7枚、えっ?
「えっ!多くないですか?」
「何言ってんのぉ?吸血鬼だよ?今回も下手すればかなり広範囲で村や街、ここも壊滅していたかもしれないんだよぉ、正式じゃなかったから少ないくらいだよぉ」
あまりに弱かったからイマイチピンと来なかったが、浄化魔法の類が出来る人も少ないから強さだけでない被害が阻止しにくい相手だったのだ
「貰える物は貰っとくです」「そうそう」
「仲良いですね、、そうですね、ありがとうございます」 ケの話しはそれで終わった、手続きや報告やることが多くて大変そうだった
再び受付
「片道護衛のお仕事ありませんか?」
「予定外のお仕事で帰ってきたばかりですのに、もう次の受けるのですか?」「はい」
「それでしたら、今日急ぎで『できたら明日朝、遅くても二日後までに頼めるやつを』と駆け込んで頼んできた人がいるんですよ、どうでしょうか?」
依頼書にはカナンへ、馬車護衛、男一人、報酬は銀貨12枚
「報酬高いですね?」
「えぇ、カナン行くにはどうしてもローレ平原を通らないといけませんから、あそこは強い魔物が多いですから、キーアさんたちなら大丈夫でしょうと」
「ありがとうございます、はい受けます、明日で大丈夫です」
「はい!受理しました、気を付けていってらっしゃいませ」
無くなったお菓子や屋台料理を片っ端から再び買い占めていった、たびたびで食事だけして、妖精の森で水を採り妖精たちと遊んで時間まで待った
次の日朝
門に行くと既に一人の優しそうな雰囲気の男の人が馬車の前に立っていた
「遅くなりましたです」
「いや、まだ時間前だよ、君たちが依頼を受けてくれたんだね?早く決まってくれて助かったよ」
「おはよう!急いでいるの?」
「そうなんだよ、母がね倒れたって手紙が届いたんだ」
「それは大変だ!急がないと」
「ははっ、そうだね、僕にも君より五つくらい下かな?10歳の息子が母と暮らしているんだけど」
「私12歳だよ?」
「ええっ!大人っぽいねぇ、護衛大丈夫なのかな?」
「任せて!レティがいれば安全だから」
「はいです!魔物沢山来ても護れるです」
「沢山来てほしくないなぁ、ありがとう頼むね」
「「はい」です」
御者さんに止めて欲しい時は声をかけると伝えて出発する、馬車は対応出来るように両開き式ので緊急で後ろも開くようになってる珍しい型だった
ドアの前に私たちが、向かいに男が座った
馬車は北西の方に進んでいく、この辺りは比較的安全な道(★1魔物はいる)なので魔物も出て来ないで一日が過ぎた
「せっかく買ってみたのに魔物がこないね」
キーアの手には小さい投擲武器が握られている
「何だい?それは」
「これね、露店で売ってたの!」
「『魔物に投げれば誰でもたちまち最強一撃必殺、勇者のようになれる最強武器』という武器です」
「文句かと思ったら、商品名!?胡散臭いなぁ」
「お値段銀貨8枚です」
「高い!?」
「お遊びです」
「お遊びで買う値段じゃないよ?依頼料もう少し払おうか?」
「いらないです」
「勇者」の言葉にすぐに飛びついたキーア、当然店主は満面の笑みだった。二人も止めない
そんな願いが通じたのか
『あっ、キー様カンラが二体きました』
「わかった」「馬車止めて下さいです!」
キーアは更にもう一本投擲武器をだした
「魔物?て言うか、その武器まだあったの!?」
「五本買ったです」「えぇー…」
レティは簡単に防御魔法を張る
キーアは降りて両手に二本構える
カンラが二体現れた、白い丸い物体だ小さく跳びはね続けている、攻撃は体当たりのみだが威力は岩を投げつけられたくらいに強い★2魔物だ
キーアは振りかぶり投げたが上手く当たらず向こうの方へ飛んでいった、お互い距離を少し離しながら突撃してくる、「ズンッ、カシッ」キーアは両手にカンラ摑んだ、片方のカンラを山なりに投げてそこに投擲武器を投げる「カコンッ」鈍い音がしてへにょって落ちた、「もう!」キーアはカンラにハンマーで叩き潰す、片手に持っているのは同じく山なりに投げてハンマーで打ち飛ばした
「キーアお疲れです」『キー様どうでした…』
「あげる」「あ、ありがとう」
馬車に戻り、男に魔物に投げれば誰でもたちまち最強一撃必殺、勇者のようになれる最強武器を三本あげたのだった
二日目昼前
「そろそろロータル平原に入るよ」
御者さんも男も気を引き締めている
「そろそろやるです!」
レティが立ち上がりキーアの膝の上に座る
「???」『かわいい…』
「レティ始めるの?」「はいです、支えていてです」
「わかった!」
お腹に軽く手を回し揺れても大丈夫なようにする
レティは集中して魔法を使う、毎晩練習していた防御魔法だ、ヒラヒラと揺れる魔力の薄いカーテンが馬車全体に被さり包んでいく、やがて全てに合わせピタリと貼り付いた
「成功です!」『一気に魔力が動きました…』
「レティすごい、段々大きな物にしていたけど、馬車までできちゃったの!」
「馬も御者も大丈夫です!」
「?、何をしたの?」
「防御魔法で全体を覆ったのです」
「えー!すごい!」
「魔力はかなり使うから明日までが限度です」
『普通半日ともちませんよ』
平原では一日走らすことは御者さんに伝えてある、キーアとレティも御者台に上がる、狭いのでレティはキーアの膝の上だ
「うわー、広いなぁー!あっ魔物だ!見たことあるやつ!」グラスキッドが三体きている
レティは洗脳魔法を馬にかけ走り続けるようにする、グラスキッドが攻撃してくるが弾くばかり、速い魔物は途中で疲弊して諦める、遅い魔物は追いつけない
ずっと通常運転、適度に回復魔法で馬を回復させる
夜は御者さんにも眠ってもらい、ミニフォーナを呼び出しレティを回復してもらう、そのあとはお菓子をあげたりコッソリお話ししたりとあっという間にロータル平原を抜けていったのだった
三日目夕方
「もう着くよー」「わーい!」
「予定より三日は早く着いたよ」
「すごいねぇ!」
「いや、君たちのおかげだからね、ロータル平原は止まり止まりで強い魔物を相手していかないといけないんだからね、倍の報酬を出してもいいのに、本当にいいの?」
「いらないです」
「そうかぁ、まぁあの武器三個分くらいの報酬だと思うと侘しいかな?」
『ふふ…ふ。』サウリューネが吹き出した
「サリューに大ウケしたです」「あはは」
「ウケても声がないから、なんか恥ずかしい…」
海が見えてきた
「海があるー、人魚どこにいる?」
「人魚はいないなぁ」
「えぇ、なんで?」
「なんでって言われても…」
海沿いを走り五分、カナンの街に到着した