第2幕
ギルドを出たキーアたち
「トレスターク、約束破ったから宿屋探すのです?」
「うーん、おいしい料理の宿屋はサリューのお店以外ないのかな?」
『あの何度も言いますがソウ・リューネですからね』
色々な道をブラブラと探しながら歩くが全く見つからない、いい加減に見つけないと真っ暗になってしまう
そんな時にスイッと露道に入っていく光をきキーアが見つけた
「見た?!今ね、あそこに光が入っていったよ!」
『わかりませんでした』「分からなかったです、見に行くです!」
二人で駆け出していき、露道へ曲がるとひたすら一直線の細い道が続いていた
「なにもないです」「暗いねぇ!」
二人は顔を見合わせて首を縦に振ると細い道を進んでいく『何で行くのですか!?』
「たんけん、たんけん!」「たんけんですー!」
探検は長くは続かなかった、少し歩くと光に包まれてしまった
「まぶしっ!何これ?レティ?」
「はいです…目があけられないです!」
数秒、光が止むと光が差し込む、美しく幻想的な森にいた。傍には小川が流れていて、少し奥には木で出来た家が一軒みえた
「きっれぇぇーい!」「ここすっきりしてるですー」
『えええぇ!?私もこんな場所知りません!何処でしょうか?』
目を輝かせてはしゃぐ二人に落ち着いて状況を調べようと考えるサウリューネ
『とりあえず、あの家に…』
「だれ?だれ?人間?人間さんきたの?」
「人間いる!なんで?なんで?あっ!魔物だ?魔物さんだ!」
サウリューネが行動しようとすると二つの光が集まってきて喋りかけてきた
「あっ!あの光だ!こんばんはー!キーアだよ!よろしく」
「レティはレティです!よろしくです!」
『お二人はすごいですね、私は混乱しているかもです…』
二つの光がそれぞれ小人に羽が生えたような姿に変わった
「怖くないね」「綺麗だね」
二人が顔を寄せ見つめ合う
「キーアさん」「レティさん」
お互い片手を繋ぐ
「ファイだよ」「ローだよ」
お辞儀をする
「「ようこそ妖精の森へ」」
繋いでない方の手を広げた
「「『!かわいい!』」ですぅ!」
「「かわいい?」」
「ぼくたち?」「わたしたち?」
キョトンとして、数秒、ニッコリ笑顔で
「「ありがとう♪」」
「どうしてここにきたの?」
「えっと、宿屋を探していたら不思議な光を見つけたの、それを追いかけたらパァーと光ってここにいたの!」
「それはぼくたちかな?」「みつかっちゃったの?」
「「ふしぎ~」」
「ぼくたちが通る道は他の種族には~」
「壁があるように見えるの~」「「本物の」」
妖精が行き来する道は自分達以外には見えない上に行き止まりに見えて幻覚でもなくぶつかる
妖精も道も光でさえ視認できるのは100%の純心者にしか見えないし壁に阻まれる
「あらっ、お客さんかしら?ファイちゃんローちゃんおかえりなさい、こんな所で話してないで家に呼んだらどうかしら」
「「母、ただいま」」
話しかけてきたのはやはりファイ・ローと同じ妖精で大きさはあまり変わらないが気品に溢れている
「人間さんキーアだよ」「魔物さんレティなの」
「あら、キーアちゃんレティちゃんよろしくお願いします、家へどうぞ来て下さいね」
「うん、いいの!」「わーい、行くです!」
『危険はないようでよかったですね、助かりました』
「キーアさん」「レティさん」
「「行きましょう」」
グイグイと引っ張られて、見えていた一番近い家に連れられていった、ファイ・ローの母の名前は「フィンリィ」と名乗る
「キーアちゃんとレティちゃんは帰り方は分かるかしら?」 「ううん」「分からないです」
「そう、ある程度の街や村の近くには繋がっているから自由に行き来が出来るの、さっきいた所に切り株があったの覚えてる?」「ううん」「あったのです」
「レティちゃん偉いわ!見知らぬ場所にきたのだもん、目印や方角くらいは確認しましょうね♪」
「はーい!」「はーいです」
「うん♪二人とも素直でかわいいわ
それでね、その切り株に向けて行きたい場所を浮かべて魔力を流してみてね、それで帰れるの、貴女たちなら移動に使うだけでも自由に森を使ってもらってもいいからね♪」「ありがとう」「ありがとです」
フィンリィは真剣な顔になり
「ただし注意が二つあります
一つ目は、言わずとも誰にも森についてと妖精のことは話してはいけません、来る時も周りに誰も居ないか注意してくださいね
二つ目は、こちら側から行けるのは反対側から来たことがある所のみです、分かりましたか?」
「「はーい」です」
「これからはいつでも会えるね♪」
「たまに一緒に遊ぼうね♪」
ファイ・ローが二人の周りをくるくる飛び回り喜びを示す
「「ところで」」
「キーアさんは綺麗な魂が二つあるのどうしてなの?」
「こらファイ、そういうことはきいたらダメでしょう!」
「「ごめんなさい」」
「???魂って?」
「ごめんなさいね、わたしたち妖精はその者の魂が感じとれるのよ、その者の意識存在みたいなものね」
『キー様、少し代わってもよろしいですか?』
「うん、いいよ!」
キーアとサウリューネが代わる、ファイとローが不思議そうにしている
「初めまして、フィンリィ様、ファイ様、ロー様
私はサリューと申します」
「あらあら、悪いことしてしまったわね
改めて初めまして、フィンリィです」
「「はじめまして」」
「存在はわかっていたのですね、この度は勝手な森への立ち入りを申し訳ありませんでした」
「いいのよ、知らないで巻き込まれたようだしね
それに、ここに居られることが貴女たちに資格があるということですからね」
「ありがとうございます、ご迷惑をおかけすることもあると思いますが、これからもよろしくお願いします、ではキーア様に代わりますね」
「「くるくる♪」」
魂の主導が替わるのが楽しいようだ
「キーアちゃんたちは宿屋を探していたのよね?
今、外では深夜なのよ どうしようかしら?」
今から宿をとることも難しいだろ、かといって泊めてあげることには問題があった
「ここは夜に外いても大丈夫?」
「え?えぇ大丈夫よ」
「じゃあ森を歩いていてもいいかな?」
「それはいいけど…」
妖精に決まった行動習慣はない、寝たい時に寝るし食事は自然のエネルギーを取り込むのである、食べても森の木の実や果実である、しかし、人はそうでないのを知っているフィンリィ悩んでしまう
「ぼくたちが」「わたしたちも」
「「一緒にいってもいいかな?」」
「うん♪」「お願いしますです♪」
「うーん、わかったわ!他の妖精ちゃんには三人のことを伝えておくから気を付けていってくるのよ」
本人たちがその必要がいらなそうなので、子供たちに任せて家を飛び立っていった
「母いっちゃった」「わたしたちもいこうか」
「「「「いってきます」」」です」
ファイとローがあちこちキーアたちを引っ張って、あれこれと説明ながらお散歩する
家は数百メートルごとに一軒、二軒ずつあって他の建物はない、生き物は小動物のみが暮らしていて警戒心などなくキーアたちにも寄ってきて触っても大丈夫だった、食べ物になりそうなものは果実やキノコがあった、果実は「黄色のは甘いんだよ♪」「青いの苦いの…」と実際に採ってきて食べさせてくれた、木の実は一日経つとまた生るそうだ
キーアたちが歩いていると、周りの木の陰や草の中からチラチラと伺うようにみている妖精に気付く
「ファイ、ロー、妖精見てるけど来ないのかな?」
「みんな興味はあるけど怖いんだよ」
「多分、母からきいて見に来たんだよ」|(|())
「ふーん、ねえみんな!怖くないよ」
手を振ってアピールするが引っ込んでしまう
「ガーーン」 ガックリと落ち込んだ
「キーア、仕方ないです」
『キー様、ファイ様、ロー様のように友達になればいいのですよ』
「元気出して」「落ち込まないで」
「「みんなすぐに慣れるよ」」
みんなが優しく励ましてくれる、ファイとローがキーアに寄り添い両肩に座る
「みんなありがとう、そうだね!他の妖精たちとも仲良くなれるように頑張るよ!」
「「仲良しー」」「ですぅー!」
どのくらい散歩していたか分からないが、ファイとローが最後にとっておきの場所にと小さな滝がある場所に案内してくれた
「わぁー、ここは他のところよりも…何だろう?なんかスゥーッとしてる♪すごい落ち着く」
「透き通っているですー♪サリューに似た感じです!」
「ここは他の妖精は近寄って来ないの」
「こんないいところなのにねー」
「「ふしぎー」」
寛ぎ、草の上に寝転がる、するとキーアとレティの頭の中に声が聞こえた
『これは珍しいお客さんがいる』
二人は上半身を起こしてキョロキョロする
「「どうしたの?」」
「何か声がしたの」「喋ったです?」
ファイとローは横に首を振る
『私にも聞こえました!』
『はっはっはっは、そりゃそうじゃ三人だけに話したからな。そこの妖精二人には話していなかった、ちょっと待っておれ』
滝が光りだした、すると目の前に綺麗な水色の長い髪をしたスラッとした美しい女性が水の上に浮かんでいた
「綺麗な人だ!さっきの声の人?」
「うむっ、そうじゃ!まぁ人ではないがの」
「「あわあわあわ」」
女性が現れるとファイとローが慌て出した
「人じゃないの?レティと同じ魔物?」
「妾は精霊なのじゃ」
ファイとローはやっぱりという感じで、地面に正座して両手をつき頭を下げた
「精霊なの!勇者に魔法を教えた神聖なる存在!」
「妖精たちよ、頭を下げずともよい普通にしておれ
何なのじゃ、その認識は?まぁ良いか」
「「はい!精霊様」」
ファイとローはそっと顔を上げてゆっくりと飛ぶ
「精霊さんはどうしたです?」
「なに、ちょっとお前たちが面白そうと感じたのでな」
「ねえねぇ、名前は何ていうの?」
「ふむ?妾に名前はないのぅ、そうだな…お主が付けてくれ」
「私?いいよ!待っててね!、うーんと水色…水…セリュウ!」
「セ、セリュウか?もう少し違う名がいいのぅ」
「わかった、えーと、うーと……あっ!フォーナはどうかな?」
「フォーナか、いいな気に入ったぞ、妾の名は『フォーナ』としよう」
「わーい!よろしくねフォーナ!」
「うむ!よろしくなのじゃ」
「レティもよろしくです」「うむ!」
「お主らよ、今は戻るがいつでも呼んでくれ 水ある所に妾は在る、水は浄化の力がある、魔力の枯渇 悪しきを解きたい その時は呼んでくれ、もちろん!妾と会いたい話したい時も大歓迎じゃ!」
最後の方は特に嬉しそうに話す
「わかった!また会おうね、フォーナ」
「またねです」
「じゃあの、もう一人のよ、今度は話そうぞ」
フォーナは消えていった
『は、はい、何だか緊張しちゃいました』
「ファイ、ロー大丈夫?強張ってるよ?」
「大丈夫です」「大丈夫なの」
「ぼくたち妖精にとって精霊様は」「人間でいう神様みたいな存在なの」「だから緊張してしまったの」
「そうなんだ!私サリューには緊張しないけどなぁ」
「「何故サリューさん何で出てきたの!」」
疲れた様子の二人にキーアはさっきのように肩に乗ってと促して、絵本から飛び出たような森のお散歩を終えてフィンリィの家に帰ったのであった
「おかえ…、ファイちゃん、ローちゃんは寝ちゃったのね」 現在ファイとローはキーアとレティの腕の中で寝息をたてている
「フォーナに会って疲れちゃったみたいなの」
「どなただったかしら?名のある妖精は数が少ないはずだけど?」
「精霊様なのです、水に関係あると思うのです」
「まぁ!あの御方がキーアちゃんたちに会って名前までも呼ばせたのですか!」
「うん、名前訊いたら無いって言うから、じゃあ付けてくれって」
「そこまで気に入られたのね、わかる気がするわ♪
緊張したでしょうね、寝かせてあげましょう、連れてきてくれるかしら」隣の小さな部屋にある小さいベッドにファイとローを寝かせてあげた
「そういえばフィンリィ」「何かしら?」
「他の妖精に怖がられて仲良くなれなかったの、友達になりにまた来たいけどね何処に行けば妖精の森に来れるか聞いてなかったの」
『キー様、そういうことは秘匿されているので自分たちで見つけられないとダメなんですよ』
存在を誰にも話していけないことであるし、フィンリィもファイとローもそのことは言わなかった
「あっ!うっかりしていましたわね
何か常に身に付けているものを貸して下さい」
『「えっ?」』
レティもそういうことだと感じていたので驚く
「うん!えーと、このペンダントでいいかな?」
「これは魔導具ですか?うーん、はい!大丈夫そうです」目の前にペンダントを置いて次々と呪文のような言葉を大量に並べていく
「これは…すごい…です…」『えぇ、肌がピリピリしますね…』
やがて終わると周囲から小さい光の粒がペンダントに集まってきた、集束し終わるとフィンリィが手に取りキーアに渡す
「はいっ、ここに来たいと思った時にこのペンダントを握って頭に願ってね、そこから一番近い道を示してくれるわ」
「ありがとう!」ペンダントを首にかける
「どういたしまして♪
そろそろ帰った方がいいと思うわ、朝と昼の間ってところかしら?用事はないのかしら?」
「今日はないです、宿屋を探すくらいです」
「おいしいご飯食べたいなぁ」
「うふっ、よかったわ、あの子たちと遊んでくれてありがとね、また遊びにきてね♪」
「うん!またね!」「またです!」
切り株の場所に行き言われた通りサルエードを浮かべながら魔力を流すと来た時同様に光に包まれて目を開けるとあの露路に立っていた
通りに人が通らないことを確認して一歩進む、これで行き止まりにいるただの人に見えているはずだ
「道はあるのに不思議だね?」
『キー様、人がいなくてもあまり言わないようにしましょうね』「はーい」
通りに出て宿屋探しを再開するのであった