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ガルテナ ~私の一番の音楽~  作者: しーせん
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軽音部設立

 職員室の扉を開け、失礼します、と言いながら中に入り職員室の中央辺りの先生の机に向かった。

先生がいたので控えめに声を掛ける。


「先生、今いいですか?」

「はい、成瀬さん、大丈夫ですよ。昼休みに話した件だよね?」


 先生はなにか書類に向き合っていたが、声を掛けるとこちらに向き合ってくれた。

整頓された机のカップにはココアが注がれていて少し甘い香りがした。


「はい、新部長に部活申請書を書いてもらいました。この子が新部長の立花です」

「よろしくお願いします! 立花です!」


 紹介するとお辞儀をして元気に挨拶した。こういう所は見習いたい。

先生は微笑みながら立花に向けて会釈した。


「田中です。よろしくお願いします。実は知ってるんだけどね」

「そうなんですか?」

「うん、入学式翌日から部活勧誘する一年生なんて初めてだから職員室では有名だよ」


 ですよねー。高校の歴史に残る武勇伝になるだろうと思っていた。


「いやー」


 頭を掻きながら照れるフリをする立花。やはりノリがいい。


「やる気があることは素晴らしいことです。応援してる」

「ありがとうございます!」

「なにかあったら遠慮なく相談してね」

「了解です! あ、これ、お願いします!」


 立花が部活申請書を軽く頭を下げながら両手で提出する。


「確認しますね」


 先生は両手で受け取った後、内容の確認に入った。少し待つと続けて言ってくれた。


「……はい、問題ありません。軽音部、設立できます」

「やった!」


 立花は職員室という場を弁えて、小さい歓声で小さいガッツポーズを決めた。

小躍りしそうなほど嬉しそうだ。よかったねぇ、とまた勝手に先輩面していると先生に言われた。


「それと成瀬さん、ガルテナの出場については問題ありません」

「あ、分かりました。ありがとうございます」

「なんの話です?」


 立花が尋ねてくる。


「昼休みにガルテナの出場に学校として問題が無いか聞いてたの。で、オッケーしてもらえたってこと」

「はい、大会の規約や過去の記事なども確認しておきました。問題ありません」


 先生が補足してくれる。立花が私に視線を向ける。


「わざわざありがとうございます!」

「いやいや、私はついでにちょっと質問しただけだから、お礼は確認してくれた先生に言って」

「私はもう成瀬さんに言われました。それにこれくらいは顧問として当然です」


 やんわりとお礼がいらないことを伝えられた。いい先生だな。


「でもありがとうございました!」


 気にせずお礼を言う立花。笑顔で返す先生。なんという平和空間。

でも要件は済んだし、先生の仕事の邪魔をしては悪いのでさっさと退散するべきだと思った。


「じゃ、私達はこれで。ありがとうございました。失礼します」

「失礼します!」


 察してくれたのか、立花も退散に同意のようだ。


「はい、さようなら」


 先生の言葉に背中を押され、私達は職員室を出て部室に向かった。





 部室までの廊下、立花が笑顔で話しかけてくる。


「いい先生ですね!」

「うん、全然干渉してこないのもありがたい」


 個人的に重要な所を推しておく。


「あの、成瀬さん」


 昨日合併をお願いされた時のように真剣な表情だった。


「なに?」

「曲作ってもらう件もOKってことでいいんですよね?」


 あれ、言ってなかったっけ。そういえば合併はOKと言ったけど曲の件は話してなかったかな。

立花は切り離して考えてたんだ。


「うん」

「やったー! ありがとうございます!」


 勢いよく抱きつかれる。抱きつくのはやめて欲しい。


「やめて」

「よかったー。曲までOKなんて」


 離れながら安心したような表情になっていた。


「期待しないでね」

「いや期待はしますよ! 責任押し付けたりはしませんけど!」


 よし、また言質を取ったぞ。昨日も取ったし、これで私に責任は無いなガハハ。

などという思考はバレないように、期待も責任も軽く流しておこう。


「そ」

「でもなんで全部OKしてくれたんですか?」

「気まぐれ」

「そうですか!」


 あっさり引いた。あんま興味ないんかい!

まぁ、マリにあんな風にお願いされたら、なんて言えないけど。


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