合併に向けて
それから登校すると、今日も校門付近で立花がチラシを配っていた。
「軽音部です! よろしくお願いします!」
あの頑張り屋の邪魔をしたら悪いよね。
合併の件を話したかったけど、昼休みにでも一年の教室に行こうかな。
と考えていたらマリが声を掛けた。
「立花ちゃん、おはよー」
「あ、中村さん! 成瀬さん! おはようございます」
わざわざ駆け寄ってきて挨拶してくれた。
折角だから要件を手早く済ませよう。
「おはよう。合併の件、OKだから――」
「ホントですか!? OKですか!?」
話を途中で遮られた。立花は目を見開いていた。
「うん」
「やったー!!」
両手にチラシをもったまま抱きついてくる。登校中の生徒も多いから恥ずかしい。
「やめて」
「ありがとうございます! 嬉しいです!」
離れながらお礼を言われた。
ここまで喜んでもらえるとこっちも嬉しい。でも照れ臭いので遮られた話を続けることにした。
「いや私も助かるし。放課後部活申請とか話したいから西川にも声かけて部室来てくれる?」
「分かりました!」
気持ちよく返事をしてくれた。もうOKしてよかった気分になった。
ニコニコしながらやり取りを見ていたマリが立花の持つチラシに視線を向ける。
「チラシ配るの手伝おうか?」
本当にいい奴だな。私は正直やりたくない。が、気にはなっていた。
立花の返答次第では手伝おうかな……やりたくないけど……
「いえ! もうそろそろ止めるつもりだったので大丈夫です!」
危なかった。ギリギリセーフ。
「そっか。もう部員なんだし手伝えることがあったら言ってね」
「はい! ありがとうございます!」
マリもまだ部員じゃないでしょ。という空気の読めないツッコミを飲み込んだ。
折角先輩らしい微笑を向けていい感じの雰囲気出してるからね。
「じゃ、放課後部室で」
「はい!」
立花と別れ、下駄箱に向かった。