第6話
既に10万字弱で書き上がっているので、ちょこちょこ直したりエピソードで足す部分があったら直しながらアップしていくつもりです。
最初の内は頻度たくさん(年末年始ですしね)、あとは1日2回とか1日1回などで更新するつもりです。
貴種などという呼び名をつけながら、ヒトは彼らを迫害した。
同じ姿でありながらあらゆる点で優れた貴種をヒトは恐れたのだ。年を取らずに若く美しい姿のままで生きる彼らは、神のように崇められたケースもあるが、多くは恐れられ、避けられた。
貴種が人と同じか、少し劣る程度の繁殖力を持っていれば、世界は彼らの物になっただろう。しかし数が少なければ、個々がどれだけ優れていても争えば負ける。やがて彼らの大半は人を避けて寄り集まり、ひっそりと暮らすようになった。中には人に交じり、居を転々としながら過ごした者もいるが、ごく少数だった。
人里から離れたところで生活しても、必要とする物はヒトと変わらない。食べていくためには作物を作るか狩るか購うかしなければならず、人手の少なさはそのまま生産性の低さに繋がった。故に、彼らが完全にヒトとの交流を断ち切ることはできなかったのだ。
そして里が見つかることもあった。美しい者だけが暮らす隠れ里は、ある者には桃源郷のように思われ、また別の者には狐狸の如きあやかしが住む地と恐れられた。――そして、そういった一部の人間の恐慌によって村は焼かれ、貴種は追い立てられた。
常に怯えながら暮らすことに疲れ果てた彼らは、近代になってからとうとう逃げることをやめた。
それは文明開化の花咲き乱れた明治時代のことであり、貴種はヒトとは違うその長寿の仕組みを研究させるのと引き換えに権力者の保護を得た。不老長寿は金と権力を握った人間にとっては永遠の命題であり、貴種はその身をなげうち、自ら検体となることで安住の地を得たのだ。
貴種の支援者はそれなりにいたが、中でも中河内財閥は医療部門を立ち上げてまで積極的に彼らを支援した。変わり者であることで有名だった中河内の当主が、貴種に深く同情して財を割いたらしい。初めは中河内の別荘などに分かれて住んでいた貴種が、この地に新しく作られた研究所兼住居に居を移したのがおおよそ100年前。
それから現在までの間に戦争があり、財閥解体があり、当主も何度も代を替えたが、幸いなことに程度の差こそあれ中河内は常に貴種の良き友人だった。建前上は現在の研究所も中河内製薬の持ち物である。
しかし、徐々に数を減らしていた貴種は、安住の地を得た途端に急激に絶滅へと向かった。数が減り、長年に渡って近い血を重ねざるを得なかった弊害もあっただろう。100年の間に生まれた子供はたったひとり。その上、若い者ほど長生きしなかった。人間と愛し合った末に子をもうけた女性もいたが、生まれた子供からその先へと血は繋がらない。
あるいは、過酷な生活から解き放たれて、安堵のあまり力尽きた者もいたのかもしれない。60年前には貴種は僅か6人まで減っていた。
そして、事件は起きた。ここで生まれたもっとも年若い青年と、その叔母に当たる2番目に若い女性が研究所から逃げ出したのだ。
若い者ほど危険はないはずの生活に閉塞感を感じていたのだと、周囲が気づいたのはふたりがいなくなってからのことだった。
捜索の甲斐もなくふたりの行方はわからず、10年後に幼い貴種が保護された。
それが紗代――手に手を取って逃げたふたりの貴種の間に奇跡的に生まれた少女だった。
なろう初投稿作品です。ガンガン更新しますので、気になったらブクマ・評価いただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします。




