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楽園は遙か遠く  作者: 加藤伊織
ソライロアサガオ

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43/59

第7話

既に10万字弱で書き上がっているので、ちょこちょこ直したりエピソードで足す部分があったら直しながらアップしていくつもりです。


他の締め切りが迫ってきたので、12時と21時の2回更新にします。

「うん、よく似合うよ。なんか胸元が寂しいなって思ったんだよね」


 陽樹が紗代の首に飾ったのは、つまみ細工で作られた色とりどりの花をあしらったペンダントだ。

 元々紗代は派手な服装を好まないのか、それとも単にあてがわれた服を着ているだけなのか、ロング丈の院内着を連想させるようなストンとしたプレーンなワンピースを着ていることが多い。色の薄い長い髪や一見儚げな容姿と相まって天使のようではあるが、精神的には若い女性なのだから、心が浮き立つような明るく可愛らしい物を身に着けてみてもいいのではないかと思ったのだ。


 何気なくSNSを見ているときに、たまたま見かけたネックレスを見つけてこれだと思った。人気の手作り作家の品物だったが、タイミングよく購入することが出来たのも何か縁があったのかもしれない。

 紗代は無言で、ペンダントヘッドを持ち上げてみつめていた。普段着け慣れないものだから落ち着かないのではないかと陽樹が心配していると、彼女はそっと手のひらに連なった花をそっと手のひらに乗せて、はにかんだように微笑んだ。


「ありがとう、とても素敵……。宝石とかじゃないところが陽樹らしいね。綺麗だし、凄く可愛い。これって手作りでしょう? こんな繊細な物を作れる人がいるのね」


「喜んでもらえて嬉しいよ。でもこれは、夏休みの宿題のご褒美の先渡しだよ」


 紗代が必要以上に引け目を感じないようにと、冗談めかして陽樹は笑った。


「夏休みの宿題、かあ。宿題なのに楽しみ。ふふ、おかしいね、実際に学校に行ってたときはそんなこと思ったことないのに」


「楽しい夏休みにしよう」


 陽樹が手を伸ばして紗代の頭を撫でると、紗代はくすぐったそうに目を細めた。 




 夏の短さを陽樹は心配していたが、梅雨が明けると暑い日が続いて急激に夏らしくなった。

 朝顔はすくすくと生長して、飛行機を見る以外にも観察日記をつけるのが紗代の日課になった。


 独特の形をした双葉が出たときには目を輝かせ、葉脈の一筋一筋まできちんと描き込んだ日記をつけたし、気温や天気まで詳細に記録している。そんな紗代を見て、陽樹はタブレット端末を渡して使い方を教えることにした。


「もういっそ、自由研究にしてもいいんじゃないかな。双葉の時の形とか、茎の色で花の大きさや色を予想できるらしいよ。君が細かく観察日記をつけてたのが役に立つね。

 この朝顔の花色を蕾が付く前までに当てられたら、なにかまた特別なご褒美をあげる」


「このペンダントだけでも凄く嬉しかったし、特別なご褒美にはそんなに興味はないけど……蕾が付く前にどんな花か根拠のある予想を立てられたら、面白いだろうね。更にそれが当たったら、きっと嬉しいと思う」


 初めていじるタブレット端末に最初のうちこそ四苦八苦していたが、紗代はあっという間にそれに慣れて朝顔のことを調べ始めた。熱心に画面に目を落とし、興味深い記事をみつけては夢中になって読みふけっている。

 紗代の集中を妨げないようにそっと彼女から離れ、陽樹は微笑ましい気持ちで紗代を見守った。

 少しずつ、紗代の興味が広がっていくことが陽樹にとっては喜ばしい。

 


「紗代は外に出る気がない」


 健一郎が以前言っていたことが、陽樹にはずっと引っかかり続けていたのだ。

 ――それを聞いたとき、陽樹は頭を殴られたようなショックを受けた。



 確かに安全や安心という面ではここが最上の場所だろう。けれど、その分不自由は多く、紗代はいろいろなことを諦めてきたはずだ。

 それに、昔ならいざ知らず、貴種という存在が幻のようになってから長い年月が経っていて、人は知識としてはそれを知ってはいても、目の前にいる少女を貴種と思うことはまずないだろう。できれば、外に連れ出してやりたいと陽樹は思っている。


 特別なご褒美は、紗代に無理がない程度で外出できるところがないか考えてみようと、陽樹は考えを巡らせていた。

なろう初投稿作品です。ガンガン更新しますので、気になったらブクマ・評価いただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします。

評価頂けて嬉しいです!

これ、まとめてガッと読む話の系統なので、向いてない投稿の仕方をしましたね……。

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