第4話
既に10万字弱で書き上がっているので、ちょこちょこ直したりエピソードで足す部分があったら直しながらアップしていくつもりです。
他の締め切りが迫ってきたので、12時と21時の2回更新にします。
思い出を語る紗代は特に悲しげではなかった。それに陽樹は内心でほっとする。
「そうなんだ。君が器用なのもそういう影響があるのかもしれないね。こんなにぴしっと、綺麗に折り紙をするのはなかなか難しいから」
「そうかな? 料理の方が余程難しいと思うけど」
正方形の紙を取り上げて、紗代の指が細かく動き始める。何も見ないでよくこんな複雑なものが作れると陽樹が感心していると、紗代は作り上げたものを陽に翳して見せた。左右に大きく広がった主翼に、立ち上がった尾翼。正真正銘、紙でできた飛行機がそこにはある。
「ちょっと凄いでしょ、ナイトホーク」
「えっ、なにこれ、凄い! 戦闘機だよね、これ」
「湾岸戦争で有名になった、ステルス戦闘機の先駆け。折り紙で作っても普通に飛ぶの。やっぱり元の機体のデザインがきちんとされてるからなんだろうなあ」
「凄い……感動するなあ。僕は飛行機って特に興味があるわけじゃないけど、君がこうして目の前で折ってくれて、凄くわくわくするよ」
「そう?」
紗代は目を細めて、ナイトホークを飛ばした。バランスのとれた機体は最初の紙飛行機のようなスピードは出なかったが、ふわりと飛んで柔らかな土の上に着地する。
「他にも作れるのかい?」
「飛行機だけなら結構なバリエーションがあるよ。思い出せるだけ作ってみる。久し振りだけど、こういうのって手が覚えてるものなのね」
ふたりはベンチの端と端にそれぞれ腰掛け、真ん中に空いたスペースを利用して紗代が折り紙を始めた。ナイトホークとは明らかに形が違う、スペースシャトルに似たような機体が今度は折り上がった。
しきりに感心している陽樹に紙飛行機を渡すと、紗代は今までで一番の笑顔を陽樹に向けた。
「私がしたことで、陽樹が喜んでるのを見るのはいいね。あんまりできることのない私でも、陽樹を喜ばせられるんだって気になる」
「僕にとっては、君が毎日美味しいって言いながら僕の作ったものを食べてくれるだけでも嬉しいよ。最初は突き放されたから余計にね。特別なことがなくても、君が笑ってくれているだけで、僕は幸せに思える。――自分でも不思議に思うことがあるよ。でも、ここへ来て、今まで知らなかった貴種のことを知って、君がどれだけ傷ついてきたのかを考えたときは凄く辛かったから。だから、紗代が笑ってくれるだけで、僕はここへ来た意味があったって思える」
「私が、笑うだけで?」
「うん。君が笑うだけで。君が僕にとってのたったひとりの患者だから特別に思うのかとか、最初は思ったんだけどね。そうじゃないみたいだ。紗代が笑ってくれると、僕は幸せになれる」
陽樹が伸ばした手が紗代の頬に触れた。一瞬ぽかんとしたあとで紗代は耳まで赤く染めて陽樹の手を剥がした。
「ま、待って。そんなこと言われたら、普通に笑えなくなる……」
「んー、意識しちゃうかい? 照れてるのかな? 最近わかったけど、君を笑顔にさせるのは凄く難しいことじゃなかったんだよ。君は案外素直で、美味しいものを食べると頬が緩んじゃうからね」
「食い意地が張ってるって言いたいんでしょ? いつの間にか餌付けされてたんだもん……」
悔しげに顔をゆがめてから、紗代は肩を落としてため息をついた。余計な力をそれで抜いたようで、ついさっきまでの自然な表情が戻ってくる。
「仕方ないなあ。あなたといると、無関心とか突き放したりとかする方が難しくなっちゃった。前は楽しいと思うことなんてそうそうなかったのに、陽樹が畑仕事をしたりしてるのを見てるだけでも楽しいの。
――そういえば、陽樹は随分畑好きみたいだけど、なんで医師になったの? 注射器持ってるときより、雑草抜いてる時の方が余程楽しそう」
「ああ、それはね……というか、注射するのが笑っちゃうくらい好きな医者もそうそういないと思うけど」
自分が作り上げた畑を陽樹は眺めた。確かにこっちの方が性に合うし、好きだ。紗代がそれをわかってくれていることまで、妙に嬉しくなる。
なろう初投稿作品です。ガンガン更新しますので、気になったらブクマ・評価いただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします。
評価頂けて嬉しいです!
これ、まとめてガッと読む話の系統なので、向いてない投稿の仕方をしましたね……。




