第3話
既に10万字弱で書き上がっているので、ちょこちょこ直したりエピソードで足す部分があったら直しながらアップしていくつもりです。
他の締め切りが迫ってきたので、12時と21時の2回更新にします。
陽樹が世話をしている畑を、紗代も見よう見まねで手伝ってくれるようになった。とはいえ、できるだけ手間を省けるように簡易式スプリンクラーも置いたので、頃合いを見計らって収穫するものの手伝いや、虫が付いたときにそれを駆除するのが主だった。
朝食後のしばらくの間が陽樹が畑の世話をする時間で、それはちょうど紗代が飛行機を見るために中庭にいる時間と被っている。
紗代は陽樹の傍らで野菜の世話をしながら、もしくは陽樹が畑にいるのをベンチで眺めながら、いつも同じ時間に空を見上げている。
その日、紗代が遠い機影を見送って自室に戻ってしばらくしてから、突然陽樹の鼻先をかすめて何かが飛んでいった。
「ごめん、思ったより飛びすぎちゃった」
驚いて顔を上げると、中庭の端に紗代が立っていた。自分の前を横切ったものはなんだったのだろうかと視線を巡らせると、柔らかそうな葉を茂らせたルッコラの上に白い紙飛行機が落ちている。手に取ってみると、陽樹が見たことのない折り方をされたものだった。
「そこから投げたのかい? 随分飛んだね。こっちから投げてもいい?」
子供のような遊び心が刺激されて、陽樹は紗代に向かって紙飛行機を構えて見せた。紗代が頷いたのを見て、斜め上にすいっと投げる。風があまりないのも手伝ってか、紙飛行機は綺麗な直線を描いて紗代の元まで飛んでいった。
「これ、凄く飛ぶね!」
紙飛行機など子供の頃以外飛ばした記憶はないが、こんなに飛距離が出るものも、まっすぐ飛ぶものも作れたことはない。ペーパークラフトの紙飛行機ならそれなりに飛ぶものを見たことはあるが、折り紙であるところが驚きだ。楽しくなって紗代の元へ駆け寄ると、はしゃぐ陽樹を紗代が穏やかに笑って迎えた。
「紙飛行機ひとつで喜びすぎじゃない?」
「僕は君みたいな飛行機好きじゃないけど、やっぱりこういうもので出来がいいと見てるだけで楽しくなるよ。心の中にある少年の部分が刺激されるっていうのかな」
「陽樹にも少年の部分があるのね」
「男はみんな、永遠に少年の部分が残るんだよ。健さんを見てごらん」
「あれは例外でしょ。見た目詐欺にも程があるから。中身が子供率50パーセントだもん」
今度は少し力を入れて投げると、白い機体はその力を素直に乗せて力強く飛んでいく。まだ十分に高度もあるうちに畑の支柱に見事にぶつかって墜落したので、陽樹と紗代は笑い転げた。
「ナイスコントロール」
「狙ってやったわけじゃないよ。あー、先がひしゃげちゃった。ごめん」
回収してきた紙飛行機は、先端が歪んでしまっていた。手で伸ばすことはできたが、紗代が折ったときのぴしりとした感じには戻らなくて、少し残念だ。
「気にしないで。これくらいいくらでも折れるし。……ちょっと待ってて」
一度部屋へと戻った紗代が持ってきたのは、正方形のものと長方形のものを取り混ぜた数枚の紙だ。陽樹の目の前で、ベンチにそれを置いて繊細な手つきで迷うことなく紙飛行機を折り上げていく。
紗代が折ったのは、先ほど飛ばしていたのとはまた違う形のものだった。これもやはり陽樹は見たことがない。
「見ててね」
陽樹がみつめる中で、紗代は紙飛行機をかなり角度をつけて真上に近い方向へ投げた。最初は上に向かったそれは、くるりと方向を変えて旋回しながら舞い降りてくる。
「へえー、綺麗に回ったね。これはそういう折り方なのかい?」
「飛行機が好きだと言ったら、子供の頃におじさんが教えてくれたの。飛行機を見せに連れて行ってやることはできないけど、紙飛行機なら作ってやれるって。おじさんの折り方も最初はぐしゃぐしゃで、いろいろ本を読んだりしてた。本当は少し向かい風があるともっと飛ぶんだよ。ここの、この尾翼のところに角度をつけてあって、ここで揚力を出すように計算してある」
「君のおじさんって凄いんだね。そうか、僕にはさっぱりだけど航空力学がやっぱりここにも生かされてるんだ」
「うん。おじさんはいろんな本を読んでは、私にいろいろ教えてくれた。永井さんがここに来る何年か前に死んじゃったけど、お母さんの兄でお父さんの父だったから、おじさんと言ったらいいのかお爺ちゃんと言ったらいいのか、微妙にわからないね……。お母さんに似て少し騒がしい人で、私がここに来た時からよく構ってくれたんだ。ものを作るのが好きで、最初は下手でもすぐに上手になるのが凄かったよ。子供用の椅子も作ってもらったりした」
なろう初投稿作品です。ガンガン更新しますので、気になったらブクマ・評価いただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします。
評価頂けて嬉しいです!
これ、まとめてガッと読む話の系統なので、向いてない投稿の仕方をしましたね……。




