第11話
既に10万字弱で書き上がっているので、ちょこちょこ直したりエピソードで足す部分があったら直しながらアップしていくつもりです。
全5章の予定ですが、年内に3章まで上げたいなあと思っていま……した。2章と3章の間に断章があった……自分で忘れてました。
その後は直し部分がたくさんあるのでちょっとペースダウンします。
健一郎がそろそろ帰るかと言い出したのは、翌々日の午前中のことだった。仕事は持っているはずなのに随分とフリーダムだ。永井に聞いたところ、最長で1週間ほど滞在したこともあるらしい。
陽樹は健一郎が帰ると聞いて急に寂しく思い、ムードメーカーである彼がいることにいつの間にか馴染んでしまった自分に気づいた。健一郎ひとりがいなくなるだけで、この建物の中は閑散としてしまうのでないかという気すらする。
永井は当然見送りなどはしなかった。紗代も健一郎が突然来てはまたふらりと帰って行くのに慣れているようで、わざとらしく抱きついて別れを惜しもうとする健一郎を鬱陶しそうに押しやっただけだった。
陽樹だけが玄関まで彼を見送り、健一郎はそんな陽樹を手招きで建物の外に連れ出した。
扉が完全に閉まって、中に声が漏れないことを確認してから健一郎は今まで見せては来なかった真顔で陽樹に向き直る。
「紗代が最後の貴種だって意味を、君は考えたかい?」
思ってもみなかった問いかけに陽樹は少しの間考え込んだ。
「えっと……それは、そのままの意味だと思ってるけど」
「紗代が保護された時、あの子の両親は姿を消していた。もし今でも生きていたら、紗代が『最後のひとり』とは言いきれない。紗代が生まれたんだから、他にも子供ができた可能性だってあるとは思わないかい?」
「それは……確かに」
健一郎の言うことはもっともだった。「たったひとりの」「最後の」と言われるからには、紗代以外の貴種がもういないということが前提になるはずだ。
じわりと不快な冷たい感触が、陽樹の背を撫でていった。行方不明ということなら、紗代の両親はどこかで生きているかもしれない。どういった理由でかはわからないが娘を置いてただ逃げたのだとは陽樹は思いたくなかったし、生きているならいつか紗代は両親と再会できるかもしれないと微かな希望を持っていたのだ。
健一郎がこれから話そうとしていることは、その小さな希望をかき消してしまうものだとしか思えなかった。その不吉さが、陽樹を震えさせる。
「紗代が最後のひとりと言われてるのは、お菊と和豊――彼女の両親の遺体が発見されたからだよ。紗代がここへ来てからしばらくしてのことだった。身元不明の男女の遺体が見つかって当然検死にかけられたんだが、それでふたりが貴種だということがわかったし、紗代の両親だと証明された」
「それは、紗代には」
驚くほどに掠れた声が自分の喉から出たのを、現実感のない遠い出来事のように陽樹は感じた。ショックで足元がふわふわとしている。健一郎はついさっきまでの明るさを消して、沈鬱な表情で力なく首を振った。
「言ってない。紗代だけには言ってないのさ。
子供にはショックすぎるだろうし、行方不明というのと、死んだというのと、どちらが酷なのかわからなくてねぇ……。それを知っていたのは、俺と、当時ここにいた大人の貴種4人と研究所の関係者だ。その頃はここにいるのは貴種に同情的なものばかりで、紗代のこともひとりの子供として親身に考えてくれた。
それで、答えは出ないまま、俺たちはずるずると現状を維持したというわけだ。つまり、紗代の両親は行方不明だという終わらせ方を選んだ。
このことは、職員の申し送り事項にも含まれてない。だから永井も知らないし、今となってはこの話を知っているのは、俺と、今話を聞いた君だけだ」
なろう初投稿作品です。ガンガン更新しますので、気になったらブクマ・評価いただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします。




