第10話
既に10万字弱で書き上がっているので、ちょこちょこ直したりエピソードで足す部分があったら直しながらアップしていくつもりです。
全5章の予定ですが、年内に3章まで上げたいなあと思っていま……した。2章と3章の間に断章があった……自分で忘れてました。
その後は直し部分がたくさんあるのでちょっとペースダウンします。
甘口のルーとスパイシーなことで定評のある辛口のルーの二種類を使い、更に買い込んできたスパイスを何種類か足して、陽樹は香りの強いカレーを作った。明日にはこれが落ち着いてまろやかになっていて、同じカレーでも二度楽しめる。
それを弱火で煮込んでいる間に永井がリビングへやってきた。夕食の時間通りであることを示すように炊飯器がメロディを奏で、ご飯が炊き上がったことを知らせる。
皿の上に白米をどんとよそい、野菜とルーを上から掛け、最後にスペアリブを米の山の横に存在を主張するように盛り付けた。見るからにボリューミーな男のカレーのできあがりである。
「いい匂いだな。香川のカレーは久し振りだ」
「ああ、そうかもしれない。永井くんと食べるのは10年振りくらいかな」
永井は大きな盆を取り出して、陽樹が用意したカレーを一気にリビングへ持って行った。リビングからは健一郎の歓声が響いてくる。
「紗代のリクエストの、野菜ごろごろカレー陽樹風だよ。さあ、みんなで食べよう」
「いただきます!」
健一郎の声に続いて全員が口々にいただきますと続け、陽樹にとっては記念すべき初の手料理がそれぞれの口に入っていった。
長い髪を束ねて食べる準備万端の紗代は、最初にしげしげと皿をみつめた後にスペアリブに手を伸ばした。見た目にそぐわず豪快にがぶりと肉に食らいつく様は猫のようだ。彼女は繊細な部分がよく表面に現れているが、時折妙にがさつなところもある。そんな紗代らしい食べっぷりだった。
その手が、ふと止まった。
口に合わなかったのだろうかと陽樹が心配をしながら見守っていると、紗代の頬に涙がこぼれ落ちてきた。
「紗代、どうしたんだい?」
「泣くほどうまいか?」
陽樹と健一郎が覗き込むと、紗代は肉を皿に置いてティッシュで指を拭き、わけがわからないといった表情のままで涙を拭う。
「わからない……凄く、美味しいと思う。でも、急に涙が出てきて」
紗代はスプーンを持つと、たっぷりとルーをすくって口に入れた。それを飲み下して、また涙をこぼす。
「懐かしい……うん、そうだ、懐かしい。おかしいなあ、子供の頃食べたカレーと全然違うのに、陽樹のカレーは懐かしいって感じる」
「不思議なこともあるもんだねえ。俺も陽樹のカレーは口に馴染むというか、慣れ親しんだような味だと思ったよ」
「実家の味とは違うんだが、確かに香川の作る料理は小洒落てる割に何でも安心感があったな。改めて食べると、確かに口に馴染んでる感じだ」
しみじみとカレーを食べながら三人が口々に語る。
「私、このカレーは好きだな。なんだか、いくらでも食べられそう」
まだ涙を流しながら紗代が勢いよくスプーンを口に運ぶ。
「カレーは逃げないよ、涙を拭いてから食べなよ」
「どうしてかわからないけど、涙が止まらないの。それに、カレーは逃げないけど冷めるでしょ」
手の甲で目を拭い、紗代はぱくりと最後の一口を食べてしまうと陽樹に向かって皿を差し出した。
「おかわり」
「はいはい。まだまだたくさんあるから、思いっきり食べていいよ」
一回目の半分ほどの量をよそって紗代に渡すと、彼女は子供のような笑顔で皿を受け取った。
その笑顔は陽樹が見てきた中で一番無邪気なものだった。
なろう初投稿作品です。ガンガン更新しますので、気になったらブクマ・評価いただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします。




