第9話
既に10万字弱で書き上がっているので、ちょこちょこ直したりエピソードで足す部分があったら直しながらアップしていくつもりです。
全5章の予定ですが、年内に3章まで上げたいなあと思っていま……した。2章と3章の間に断章があった……自分で忘れてました。
その後は直し部分がたくさんあるのでちょっとペースダウンします。
「健ちゃんってば、相変わらずいきなり来るんだから。お土産は?」
「神出鬼没が俺のポリシーだよ。いい男は多少ミステリアスな方がいいだろう? 土産はさっき図書室に陽樹が運んでくれたから後で探しなさい」
「面白い本があった?」
「いや、知らん。適当に選んできた」
「もー、本当にいっつも適当なんだから!」
健一郎の「土産」は本が多いらしい。それは先ほど車の中で聞いていた。ここの「図書室」が妙なラインナップで充実している理由を陽樹はそれで知ったのだ。
リビングで健一郎と紗代が家族のように親しげに話しているのを遠目に見ながら、一部屋離れた「厨房」と呼ぶ方がふさわしいキッチンで陽樹は料理を始めていた。
設備は新しいものではないが、10人が暮らしていた頃から使っていただけあって、様々な種類のものが揃っている。
圧力鍋もあったが型が古すぎて使い方がいまいちわからない。これは買い直そうと心に決めて、陽樹は鍋にいっぱいのカレーを作り始めた。紗代のリクエスト通りに、野菜はいかにも食べ応えがあるようにごろごろと大きく切った。小ぶりのじゃがいもは一度素揚げしてから鍋へ入れる。こうすると、煮崩れせずに大きい形を保つことができるのだ。
大きなフライパンを熱して、陽樹は今日のメインの食材を取り出した。鉄製のフライパンが十分熱されたところで油を入れ、並べたのはスペアリブだ。ジュウジュウと音を立てて肉が焼けてくると、香ばしい香りが漂い始めた。
「おっ、肉が焼ける匂いがするな!」
声を弾ませて寄ってきたのは健一郎だった。それにつられて紗代もやってきて、陽樹の手元を覗き込んでごくりと喉を鳴らした。
「ここで料理してるのを見るのは、本当に久し振りだわ」
「らしいよね。ちゃんと設備が揃ってるのにもったいない。今日はスペアリブをカレーに入れようと思って。いいだしも出るし、骨付き肉はロマンだよね」
「おっ、陽樹わかってるな! 骨付き肉はロマンだ! うーん、たまには焼いた肉を思いっきり食べるのもいいな」
「だったら、今度バーベキューでもしようよ。健さんが次に来るときに材料を買ってきてもらってさ」
「それはいいなあ! 中庭でバーベキューくらいならできるだろうしな」
和気藹々と話す陽樹と健一郎を、紗代が目を細めて眺めていた。なにか、とても懐かしいものを見るような目をしていて、以前ここにもっと人がいた頃のことを思い出しているのかもしれないと思うと、その紗代の表情に陽樹の胸は締め付けられる。
それでも陽樹は手を止めなかった。表面をしっかりと焼いた肉を鍋に入れて、他の野菜と一緒に煮込む。圧力鍋で煮込めば骨から身がほろりと外れるくらい柔らかくなるが、手で骨を押さえてしっかり食らいつくのもいいだろう。女性受けするかどうかはこの際気にしないで、ミールセットでは食べられないものを作ったつもりだ。
「はいはい、戻って戻って。味見も手伝いもないからね。食べてからのお楽しみにしておいて」
ふたりをリビングに戻して、カレーに添えるサラダを作り始める。手順だけを考えて無心に手を動かす感覚は久し振りで、最近たまりつつあったストレスがすうっと消えていくような気がした。
なろう初投稿作品です。ガンガン更新しますので、気になったらブクマ・評価いただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします。




