第2話
既に10万字弱で書き上がっているので、ちょこちょこ直したりエピソードで足す部分があったら直しながらアップしていくつもりです。
最初の内は頻度たくさん(年末年始ですしね)、あとは1日2回とか1日1回などで更新するつもりです。
「これも先生の仕事のうち?」
「どっちかというと趣味かな」
「悪趣味」
憎まれ口を叩きつつも、紗代は逆らわずに粥を食べている。
「味はどう?」
「意外に美味しい。卵がふわふわしてるし、塩味がちょうどいい」
「そうだよね。もっと食べられる?」
「うん」
それ以上はあまり話さずに、陽樹は紗代に粥を食べさせ続けた。一口一口、紗代が自分の差し出すれんげから食べている様を見ているだけで胸が温かくなって、自然と頬は緩んだ。
「……先生」
紗代に声を掛けられて手を止める。彼女の目が自分をみつめているのに気づいて、自分の目がなんだか痛いことに疑問を持った。
「なんで、泣いてるの?」
「えっ、僕?」
茶碗とれんげをワゴンに置き、慌てて手で頬を探った。目が痛いと思ったのは、涙が流れていたからだったらしい。紗代の言った通りに、知らぬ間に陽樹は涙を流していた。
「変だな、なんで泣いてるんだろう」
自分の心を探ってみるが、様々な感情がうねり、混ざっていて、自分でもわけがわからなかった。
けれど、大きな塊になっているものはいくつかわかる。紗代の様子を可愛らしいと思っている気持ちと、嬉しい気持ち。そして、懐かしさ。
「あとは、自分で食べられるから」
陽樹にティッシュを差し出しながら紗代が言った。それを受け取って涙を拭い、陽樹はもう一度茶碗を手にする。
「なんかね、僕はこうしてるのが凄く嬉しいんだ。自分でも把握しきれないくらい、凄く凄く嬉しくて涙が出たんじゃないかと思う。
君が高熱を出して苦しんでるのを見た瞬間、心臓がすっと冷えて……とても怖かった。
僕、君に避けられてたから、嫌われてるんじゃないかと思った。本当のところはどうかわからないけど、君がこうして僕の手から食べてくれてるのが嬉しい」
またほろりと涙が頬を伝った。自分で食べられると言われたのを敢えて無視してれんげを差し出すと、紗代は仕方ないという様子を隠さずに口を開ける。
「……別に、嫌ってるわけじゃない。そもそも嫌うほど先生のことを知ってるわけじゃないし」
「そうかい? 誰かを嫌うのも、好きになるのも一瞬でできるよ。だから僕は、食事の席に全然君が来なかったから、避けられてるんだと思ったし。そうだ、これからは時間を決めて、食事は皆で一緒に食べよう」
「えっ、そんなことをいちいち決めるの?」
「いや、むしろそれだけ守ってくれたらいい。決まった時間に出てこなかったら、何かがあったかもしれないとわかるしね。君だけじゃなくて僕と永井くんだって、部屋で動けなくなる可能性はあるんだから」
粥を飲み込みながら紗代の目がくるくると動いた。やがて、控えめに頷いてみせる。
「ありがとう。紗代さんはいい子だね。――しまった、子供扱いしちゃいけなかった。僕より年上だもんね」
「私は……自分を大人だと思えたことはない。外見の成長が止まったのと一緒に、心も成長しなくなった気がする。お爺ちゃんたちが生きてた頃はそれこそずっと子供扱いだったし」
「そっか。ねえ、僕がここに来るまでの君のこと、聞かせて欲しい。今日じゃなくて、気が向いたらでいいんだ。今日はお粥を食べたらゆっくり眠って。今のところ熱は下がってるけど、夜中にまた熱が出たりするかもしれないから。
もし具合がおかしいと思ったら、すぐにコールボタンを押すんだよ。しつこく言うけど遠慮とかしちゃ駄目だ。僕はそのためにここにいるんだから」
「わかった」
「もっと食べられるかい?」
「全部食べる」
「はい、どうぞ」
笑顔でれんげを向けてくる陽樹を紗代はしばらくみつめた後、諦めたようにため息をつき、雛鳥のように口を開けた。
陽樹はそれ以上紗代に話しかけることはせずに、温かな気持ちを味わいながら紗代が食べ終わるまで傍らで手を動かし続けた。
なろう初投稿作品です。ガンガン更新しますので、気になったらブクマ・評価いただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします。




