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楽園は遙か遠く  作者: 加藤伊織
白いホスピス
13/59

第12話

既に10万字弱で書き上がっているので、ちょこちょこ直したりエピソードで足す部分があったら直しながらアップしていくつもりです。


最初の内は頻度たくさん(年末年始ですしね)、あとは1日2回とか1日1回などで更新するつもりです。

 体を揺すぶられて陽樹は目を覚ました。紗代の手を握ったままで、ベッドの端に頭を乗せていつの間にか眠ってしまったらしい。慌てて管の途中まで血が逆流している点滴を片手で止めて、もう片方の手がまだ紗代の手を握っていることに気づいた。


 手をしっかりと陽樹に握られたままで困惑しきった顔の紗代が、自由になる左手で陽樹の肩を掴んでいた。熱は大分下がったのか、顔色も悪くはない。


「先生、ずっと、ここにいたの?」


 紗代の手を離して伸びをすると背中がぼきぼきと音を立てた。時計を見ると既に夕方に近い時間になっている。


「うん、君がどこにも行かないでくれって言ったしね」


「私が? そんなこと言ってた?」


「覚えてないかな。まあ、熱が高かったからね。熱が高いと変な夢を見たりするし、気にしなくていいよ。気分はどう?」


 紗代はじっと自分をみつめる陽樹の視線を受け止めて、ややあってからぽつりと呟いた。


「喉が渇いた」


「わかった。水を持ってくるよ。その間に体温を測ってて」


 少し古い形の体温計を紗代に差し出すと、おとなしく彼女はそれを脇に挟む。それを見届けて陽樹は部屋を出た。


 紗代の部屋の外にはワゴンがあり、上にスポーツドリンクと水が置かれていた。永井が気を利かせたのだろう。彼の機転に感謝しつつ、それらを持って紗代の元へと戻る。


 コップに水を注いで手渡すと、紗代は喉を鳴らしてそれを飲み干した。体温計が示しているのは紗代の平熱より少しだけ高い数値だった。


「よかった。一気に下がったね。汗をかいたせいもあるんだろうけど。ああ、体を拭いて着替えた方がいいな。着替えはどこに入ってるかな。勝手に出していい?」


 点滴を抜きながら尋ねると、紗代は眉を寄せている。


「自分でできる。ていうか、ちょっとは遠慮してよ。子供っぽく見えるかもしれないけど女性の部屋なんだから」


「紗代さん、君はまだ寝てなきゃ駄目だ。君がご飯を食べに来ないから押しかけてみたら、高熱を出して寝込んでたなんて……僕は心臓が止まるかと思ったよ。いつから具合が悪くなったんだい?」


 陽樹の少し怒ったような言葉に紗代がうなだれた。


「昨日はなんともなかった。今朝になったら熱が出てて、動けなくなってて」


「ところで、君の枕の側にあるコールボタンは何のためにあるのかな?」


「…………」


 紗代が助けを呼ばなかったことについて腹立たしさを感じて意地悪く指摘すると、気まずそうに彼女は口をつぐんだ。


「やっぱり貴種も病気になるんだよ。インフルエンザではないと思うけど、しばらく様子を見ないとね。で、着替えはどこ?」


 紗代の反論を封じるように言うと、紗代が観念したようにクローゼットの一番下の段を指さした。

なろう初投稿作品です。ガンガン更新しますので、気になったらブクマ・評価いただけると大変嬉しいです。よろしくお願いします。

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