ベージュの壁の家の男
こうして田口君は元親友から逃れ、再び水族館へ向かった。
占いしないか~という声をうまくかわす以外は何も問題無く、田口君はやっと町を出る事が出来た。
「あー……お腹…すいた~」
そういえば結構な時間何も食べていないのに重いバケツを押し続けるという重労働。
田口君は辺りを見回し何か食べる物がないか探した。すると大きなリンゴの木が…。
が、しかしリンゴはまだ熟しておらず、とても食べれるような状態ではなかった。
田口君は再び町に戻った。
理由は二つ。
食べ物を探すため。と、水族館に行くため。
水族館はルアーの町の中の海に程近い場所に建てられている。
占い師に気を取られ、ついつい違う方向に進み、町を出てしまったのだ。
田口君が町を歩いていると、ラッコが暴れだした。
バケツの中を覗いて見ると、水がにごってきていることに気づいたのだった。
「…自分の食べ物も大事だけど…ラッコのために綺麗な水に変えてあげないと…」
田口君は立ち止まり、横にあったベージュの壁の家で水を分けてもらうことにした。
ピーンポーン。
「…。」
反応が無い。
おかしいな。確かに誰かいる気がするのに。
田口君はチャイムを連打しまくってみた。
(※よいこは真似しないでください。大変迷惑です。)
するとやっと戸が開き、そのすき間から髭もじゃな男が顔をのぞかせた。
「なんだ」
男はしゃがれた低い声で話した。
田口君はその様子にも怯まず、
「すみません…。実はかくかくしかじかで、ラッコを運んでいまして、水を分けていただきたいのです。」
と、頼んだ。
すると男はしかめた面でこう言った…。
「それは、…お断りされていただこう。」
そうきっぱりと断られた。田口君は無理は承知でお願いしています。そこを何とか!と、もう一度頼んだが、やはり断られてしまった。
そしてドアを完全に閉められてしまった。こんな言葉だけを残して…。
「…お前のしていることは、無駄なのだよ…」