非日常は突然に
鈴丼村で生まれた、田口泰造はちょっと変わっています。
鈴虫の音色を聴きながら、畑への道をらんらんと歩いていました。
たびたび遭遇する鈴丼村の人達ににこやかに挨拶をし、歩き続ける事約十分。田口君はふと足を止めました。
多分、それは誰にとっても衝撃的な出来事だったと思う。
田口君は、自分が向かっていた畑の三つほど前の区画にある畑で、ありえない光景を見た。
・・・ラッコが倒れていたのだ。
田口君はラッコを抱えながら
ラッコを観察してみると、何やら様子が少しおかしかった。顔色がわるいのだ。しかも何やら体が熱い!ラッコなのに!
にわかに信じがたいが、ラッコは確かにそこに存在していて、どうやら体調があまりよくない状態らしかった。
ラッコの顔は灰色で体は人肌より熱かった。
ただならぬ状況だと思った田口君は、急遽田んぼへと向かうことにした。ラッコを抱えながら…。
田口君は
「もっと生物学を学んでおけば良かった」と少し後悔した。
だが今さら後悔しても仕方が無いと田口君は田んぼへと急いだ。
駆け足で田んぼへ向かい、たまにラッコの様子を覗き込んだ。ラッコの身体は汗でぬれびしょびょだった。きっと相当辛いのだろう。
うりぼーの大群が、田口君の前を横切っていた。
田口君はそれにどうすることもできず、しばらく立ち止まった。
うりぼーの大群が去ると、田口君はようやく目的の田んぼにたどり着くことができた。
田口君はラッコを田んぼの中にゆっくりと入れた。
するとラッコは先ほどよりかは穏やかな様子で、水に身を浮かべた。
しかし田口君は気づいてしまった。
「やっぱり田んぼじゃ無理があるか…。」
田口君は急いで家の物置へと走っていった。