瓦礫の外
━━━━何が起きた!必死になって考える。しかし、考えても答えは見つからない。
━━━落ち着け、落ち着こう。
「━━━ここは?」
広がるのは闇。光の届かない世界にいる。背中には硬く、角張った感触がする。
「俺、埋もれてるのか?」
それ以外が思いつかない。あの衝撃に学校がくずれ、瓦礫の下敷きになってしまったのだろう。
「・・・動かせるな」
体が動かせるか確認。目立った痛みは特にない。これなら瓦礫の山の中から脱出できる。
「・・・何故脱出できると思った?普通この状態じゃ死ぬだろ。体も動かせないに決まっている」
不意に正気に戻る。常識的考えて、瓦礫に埋もれてて痛みがないこと、体が動くこと、瓦礫の中を移動できることはおかしい。身体能力が高ければ移動はできるものなのか?
・・・頭がパンクしそうだ。それなら何故どれも常識から外れるのか。
「・・・いろいろ考えるのはあとだな。ひとまずは脱出だ」
恐らく、待っていても助けは来ないだろう。長い時間この中にいる方が大変に決まっている。早めに脱出してしまおう。そして、何が起きたのかしずくとはなし━━━
「そういえば、しずくは!?この状況だ・・・。生きてるかも怪しいぞ。それにもしも生きていても俺のような無傷とは考え難い。・・・やべぇな、ここを出たら次はしずくをこの中から探さなねぇと!」
少しは落ち着いていた脳が再び混乱に陥る。しずく以外が埋まってるならいい。正直入学したてもあり、顔も名前も知らない人ばかりだ。恐らく悲しいとは思えないだろう。
「それよりも、しずくだ」
あいつだけは生きていて欲しい。学校がこんなになる非常事態、知ってる人が1人いるかいないかで精神状態は大違いだ。
ゆっくり、慎重に上を目指す。焦る気持ちもあるが、無理やり押さえつけ落ち着かせる。
そして━━━━
「よ、いしょ!やっと外に出れたよ・・・。疲れた」
瓦礫の中の脱出に成功させた。
次に辺りを見渡す。そこで絶句した。まさに言葉を失ったのだ。
「━━━━━━━」
次にすることは決めていた。瓦礫を掻き分ける中、必死に無事を祈った人物が、本当に無事なのかを確認する。そのために辺りを見渡して姿が見えなければ大声を出すつもりだった。が、しかし、出来なかった。
「━━━んだよ、これは━━━」
「━━━ここは、どこなんだよ!!」
大声で叫ぶ。思ったことがつい声が出てしまった。それも仕方ないだろう。瓦礫の外には、全く知らない街が広がっていたのだ。
再び落ち着きを取り戻していた脳はまた混乱する。一度に不思議なことが起きすぎなのだ。今度は簡単に落ち着かせることができない。頭を回す。考える。
「何が起きてる?強い衝撃が学校を襲った。いや、その前に時間が止まっていたよな。なんで止まっていたんだ?そもそもなんで俺は動けた?あと、しずくも動けてたよな?しずくは━━━」
すると決めていたことを思い出す。
「━━━━しずく!しずくは今どこにいるんだ!?」
先程辺りを見渡した時には何も見つからなかった。こうなったら大声でも出してみよう。もしかしたら返事がくるかもしれない。
「━━━━しずく!!!生きているなら、返事をしろ!!!」
「あーもう!うるっさい!!!」
「なっ!?」
後ろから声が返ってきた。しかし、それは知らない声だ。きっとあれこれ考えているうちに近づいて来てたのだろう。声の主を確認すべく、後ろを振り返ると・・・
「イキナリ大声出さないでよ!驚いたじゃないか」
そこには、身軽そうな格好で、中性的な声と整った顔をもつ1人の・・・
「・・・お前、女?」
「な!?今度は失礼なことを!ボクは男だよ!」
少年が立っていた。
「君はここで何をしているの?」
「・・・なあ、ここは一体どこだ?」
質問を無視したせいか、少年は渋い顔をする。しかし逆に投げかけられた質問に違和感を抱えながら―――否、それとは違う、複雑な感情抱えた様子で真剣に答えてくれた。
「ここは・・・トラトスの街のはずれだよ」
「トラトス?」
聞いた事のない地名。トラトスっなんだ?日本にそんな地名があるのか?そもそも存在する地名だとしても学校のあった場所ではないのは確かだ。
「そう、トラトス。こんなとこにいるし、話す言語も言語だ。反応は予想出来てたよ」
「・・・今って何月何日の何時何分?あとここは日本じゃないのか?」
「何月何日?何時何分?・・・ああ!日本語はそんな言い方をするんだっけ・・・」
「?」
よく分からない言い回しをするんだな。まるで、日本語を知らないみたいだ。
「ここで話すのもアレだし場所を変えようよ。ひとまずはボクに着いてきて。そこで詳しく話あおう」
「待ってくれ!」
「なに?ボクはあの人間に頼まれてもいなければこんなとこに来る予定はなかったんだよ。細かいことは別の場所で君と同じ待遇の人間と一緒に話そうよ」
「同じ待遇の人間?」
「そー、同じ待遇の人間。君と一緒でここがどこなのか聞いてきたよ」
「性別は?」
「女の子だったね」
「ぺったんこ?」
「ぺ、ぺったんこ?何それ?何が?」
俺と同じ、ここがどこか聞いた人間。それに女だって言ってる。もしかしたら・・・
「わかった、案内してくれよ」
子供とはいえどもこの見慣れない姿の少年を信じていいのかは謎だ。しかし今はこの少年という藁に縋らなければ何もよくならない、そんな気がするのだ。
「最初からそのつもりだよ。はぐれないように、ちゃんと着いてきてね」
「ああ」
未知なる世界。よくわからない状況で大きな不安がある。そんな中少しばかりの期待ともいえる感情を込めて、カイトは瓦礫の山を去るのであった




