時
体がふわふわした感じだ。
なんだこれ?夢か?
でも、かんがえるのもめんどくさいな・・・
こえがきこえる━━━
・・・・・・・・・て・・・・・・
お・・・・・・い・・・・・・
なにいってるんだ?もっとはっきりしゃべれよ。きこえねぇよ・・・
「危ない!!!!」
「あ?」
知らない声が響き、直後━━━
夢が爆発した
「うわぁ!!!!」
最悪な目覚めだ。体が引きちぎれるかと思った。おかげで大声出しちゃったよ。絶対目立ってるよな・・・って
「あれ?」
強烈な違和感。
そして、その違和感の正体は━━━
「止まっ・・・てる?」
だいぶ寝たのか授業もうすぐ終わる時刻だ。時計は終わりの2分前をさしている。しかし針はそれ以上動こうとしない。そして、針どころか周りの人間━━━授業をしていた先生さえ、どういう状況か空中で止まっているのだ。
この状況を一言で表すなら━━━
「時が止まった?」
単純かつ明確で、誰しも想像し憧れる現実では不可能な現象。それが今目の前この瞬間で起きているのだ。
ありえない。でもありえているのだ。実際に起こっている以上否定することはできない。
「何が起こってるんだ!?」
席を立ち上がり辺りを調べる。
「本当に止まってやがる・・・」
人に触れても何も反応はない。そもそも、これがドッキリだとしたら宙に浮く先生についての説明が気になって仕方がない。あれこれと頭を動かしていると、とあることに気がつく
「ハッ!・・・フフフ、ハハハ、フハハハハハハハハ!!!」
とあること、まさに素晴らしい考えに笑いが込み上げ止まらない。まるで全てにおいて成功することが確定したときにでる笑いだ
「完全に時が止まってるなら利用しない訳にはいかないよな?」
自問自答による現状確認、大声で言えば意味もない独り言ではあるが、誰も聞くことができない以上声量など関係ない。そして、さらに大きな声で言葉を紡ぎ出す。
「いまなら誰に何しようとも怒られない!やりたい放題じゃないか!高校生にもなると育ちのいいやつも沢山いる!なぜ俺だけ動けるかは知らんが、カミサマかなんかが俺にご褒美をあげたんだ!そうに違いない!」
そうだカミサマが俺にご褒美をくれた。だから大丈夫。むしろこのご褒美を無下にすることこそ悪いことだろう。
「フッフッフ・・・今なら高校に入学したばかりだが簡単に卒業できる!さすがに名前も知らない人とするのはあれだし、育ちが足りんがしずくのとこにいって1発・・・」
「何する気なの?」
「何ってそりゃあ決まって・・・え?」
聞き覚えのある声。少し遅れ、背筋が凍る。
「俺に気付かれずに真後ろに回り込むとはなかなかやるな」
「何する気なの?」
おっと。華麗にスルーされた。なかなか痛むものだな。
「まぁまぁ、なんでもいいじゃないですか、センパイ」
「何する気なの?」
「お前それしか喋れなくなったのか?」
ゆっくり振り返りながら、軽口を叩く。
そこには━━━━
「ねぇ、何をする気だったの?」
しずくが立っていた。
「おっと、セリフに『ねぇ、』がついて『なの』が『だったの』に変わったな?俺の耳はごま・・・」
「何をする気なの?」
「・・・・・・言わなきゃダメ?」
相当怒ってると見た。冗談も一切通じねぇぞ。
「何をする気だったの?」
「・・・・・・・・・エロい・・・事」
「最っっっっっっ低!!!!」
「いって!暴力反対だぞ!!」
かなり強め・・・というか最高火力のビンタ!俺はMじゃねえぞ。
「うるさいわね変態。話しかけないで変態。」
「じょ、冗談だよ!冗談で言ったんだ。あぁそうだ!冗談に決まってる!」
穢らわしいものを見るような目で見てくる。その目をやめていただきたい。
「そ、そうだ!そんなことはどうでもいい!今の状況、今の状況について、どうだと思う!?」
「・・・時間が止まってること?」
「そうそう!それ!」
しめた!何とか別のピンチを乗り切れそうだ。
痛みを、先程のやり取りを忘れるたかのように平常装い話しかける。
「俺さっきまで寝てたんだけど、目ぇ覚めたらこうなってたんだ。なんか知ってるか?」
「授業中に寝るからバカなのよ。」
おい、心の痛みは簡単に忘れられねぇんだぞ。
息を吸いながら、それは関係ないだろと言いたかったが言葉を飲みこむ。
「まぁ、私も寝ちゃって起きたらこんなことになってたんだけど・・・。私の知る限りで動けるのは私とあんただけよ。」
ん?まて、こいつ今自分も寝てたって言ったか?人のこと言えねぇじゃねぇか!
「なにか言いたそうね。だって仕方ないじゃない。先生の自慢話を延々と聞かされたのよ?クラスの半分以上眠ってたわ。」
「・・・マジで?それは大変だったな・・・」
「やばかったんだから。おじいちゃんの先生で昔はマグロ一本釣した話や宝くじ4等当て話をしてなんの繋がりのない嘘っぽい話をずっとするのよ?そりゃねむっちゃうわよ。」
何その先生、スゲーな。見てみたいけど会いたくはないな。
「まぁ今はその話は置いとこう。この状況に着いて話そうぜ。もしかしたら俺らが何かしないと時間が動かないかもしれないしな」
「・・・やけに冷静ね?」
「・・・不思議とな、驚いてねぇんだ。なんでか知らんけど」
「ハァ・・・バカは気が楽そうね」
「ため息すると禿げるぞ」
あと俺はバカじゃない。多少頭が足りないだけだ。そもそも2桁の掛け算なんて人類は出来ないものだろ。
「私は禿げないの。・・・とにかく今は他に動ける人が居ないか探しましょ?それに、何が怒ってるの調べなきゃ」
「だな」
しっかし何故おれは動けるんだ?それにしずくも。2人とも寝てたのは偶然か?俺の幼なじみが動けるのは偶然なのか?
「難しい顔してどうしたの?速く行こうよ」
「あぁ、悪い」
・・・俺じゃ考えたって何も思いつかねぇな。
今はしずくの指示に従おうか。
「・・・お?」
足元にもメモを見つけた。普段なら気づかないか、気づいても無視するだろうが、今だけはまるでメモが光っているかのように見えてしまった。
メモを拾い何が書いてあるか確認を・・・おい、なんだこれ?意味わかんねぇ落書きしかねえじゃねえか。・・・まぁいいか、一応持っておこう。
「どうしたの?」
俺が後をついてこないため疑問をもったしずくが聞いてくる。
メモのことを言うか迷うが、ただの落書きのメモのことを言ったってしょうがない。
「なんでもねぇよ。行こうぜ」
「ふーん・・・」
怪しみながらも足を進める。しずくは教室のドアを通るため窓に背中を向けた。そして俺も背中を向ける。
━━━━刹那、閃光が走る。それは強力な光でたかが一瞬間の時間のうちに教室内を照らし出す。
「なんだ!?」「なに!?」
2人の声が交わる。その声は驚きが大半を占める。しかし、それ以外には恐怖の感情のみを含んでいた。
互いの距離は物理的に縮まる。そして互いの顔を見合わせる。
互いの無事を、そして意志を確認し、同時に後ろを振り向いた。
否、振り向こうしたが正しいだろう。実際には振り向き、窓の外を確認することは叶わなかったのだ。
━━━━なぜ?答えは簡単だ。
振り向く直前━━━
互いの意志を確認した直後に━━━
強い衝撃が、学校の壁ごと、2人の体を吹き飛ばしたからだ。