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神を殺す日まで  作者: ノロカ
13/16

子供

 場面はカイトが魔法を発動した夜から数時間前、カイトがラトリィに怒鳴った後の夕暮れ前に戻る。

 1ヶ月間、カイトとラトリィは同じ部屋で過ごすことになる。つまり、怒鳴られてしまったラトリィは部屋に戻るのが気まずい。そのためお城の中を探索していた。

「はぁ・・・」

 廊下を歩きながら大きなため息を着く。その理由複数あるが、やはり1番は・・・

「失敗しちゃったなぁ。今回で何回目だろう」

 ラトリィは二万年の時を生きているため、様々な体験がある。その中にはもちろん、ラトリィの存在を肯定し友人になってくれた人との出会いは沢山ある。

「戦闘になるとどうしても他人の気持ちを蔑ろにしてしまう。悪い癖だけどなかなか直せないな」

 ラトリィはなかなかの戦闘狂だ。それを本人は自覚しているが、なぜそうなったかは覚えていない。しかしそのおかげか、長い間戦いをしていたために戦闘スキルはなかなかのものである。

「だから負けた時ってどんな感情なのかわからないんだよね」

 正確には違うが、カイトは戦いに負けた。その感情は、死んでも死なない、すなわち負けることがないラトリィにはわからない。

「やっぱりカイトも、昔の人達みたいにボクを嫌いになっちゃうのかなぁ。もう慣れたはずだけど、やっぱり堪えるよ」

 出会いがあれば別れがある。別れ方もそれぞれだが、一度受けいられたあと、恐怖かはたまた別の感情に裏切られ別れることになることが多かったのだろう。

「カイトみたいな人間も多かった。やっぱりボクを突き放すのかなぁ。・・・でも嫌だなぁ、こんな別れ方は。どうやったら仲直りできるかな?」

 ブツブツと呟きながら廊下を歩くとひとつの考えにたどり着いた。

「そうだ!一応兵士見習いなんだし、これから先輩になる人に挨拶してこよう!そしてカイトとの仲直りの方法も聞けるかもしれない!」

 ラトリィの中では名案を思いつき今は客室棟だが、一月後に住むことになるだろう兵士の寮や訓練場がある、兵士棟へ走って向かった。しかし、一つだけ致命的な欠点があることを忘れながら・・・。


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 昔何度か入ったことがあるため兵士棟には迷わず行くことができた。初めに寮に行きその後訓練場。しかしどちらにもいなかったため会議室へ足を運んだ。が・・・

「誰もいない・・・」

 兵士棟に入ってからラトリィは、兵士一人も見かけないのである。さすがにおかしいが、そのことを気づかない

「うーん・・・寮か訓練場か会議室、いつもどこかにはいるんだけどなぁ・・・もしかしてボクがまだ行ったことのない場所に集まってるのかなぁ」

 この考えは当たっている。しかし肝心の場所がわからない。いったい何故集まってるのか、何処に集まってるのか、何時からなのか、「何」が多い答えの出ない問に頭を動かす。その時・・・

「そこの人ー!みんなどこいったかわかりますかー?」

 背後から女の声がした。振り返ればそこには・・・

「あっ!もしかしてあなたって半魔?って言われてる人?へぇ、イメージと全然ちがーう!」

 この場所にはそぐわない格好の少女が立っていた。水色の服に白のシャツをはおり、グレーのズボン。首からは銀の十字架をぶら下げている。視線を上に向けると、コウモリの飾りをつけた薄ピンクのグラデーションの髪に、左目の下のハートのペイント、片側だけ髪で隠した右目の近くに傷らしきものが見え、様々な意味でよく目立つ。

「えっと・・・君は?」

 見た目の派手さに驚いたが、この人はラトリィを半魔と呼んだ。ラトリィの顔は少女と変わり強ばっている。

「アル?アルはアルカードって言うの!あなたは?」

「ボクは・・・ラトリィって言うんだ。それより・・・」

 アルカードとなのる少女を前に、ラトリィは急展開で頭が回らなくなる。冷静を保とうとするが・・・

「ラトリィって言うのね!ねぇラトリィ、みんなどこいったかわかる?」

 追い討ちをかけるかのような質問。しかもこの少女━━━アルカードの言うみんなとは誰のことか

「えーとアル・・・カード?君の言うみんなって誰のこと?」

「えっとねー、お城の兵士のことだよ」

 さらに追い討ち。ラトリィは身長が十三歳と同じくらいで低い。そのラトリィより低身長のアルカードが兵士をみんなとよぶなんて驚かない方がおかしいだろう。推測だが、アルカードは兵士と何かしらの関わりがあるだろう。

「・・・実はそのみんなをボクも探してるんだよ。一緒にさがさないかい?」

「なるほどなるほどー、そうしよー!」

 子どものようにはしゃぐアルカードにラトリィは提案をした。これで情報の整理をしながらいろいろと聞くことができる。他の兵士の居場所の見当はついてないが、質問できる時間が増えたと考えれば問題ないだろう。

 先行くアルカードの背中を見て、待ってと言いながら二人は兵士を探しに廊下を歩き出した。


┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅┅


「・・・ねぇアルカード」

「なにー?」

 歩き始めて数分後、ラトリィは質問を始めた。

「アルカードは、お城の兵士とどんな関係なの?」

「どんな関係?えっとねー、なんだろ。わかんない!」

「わ、わかんない!?」

 関係を隠してる━━━ようには聞こえない。つまり、素でわからないと答えたのだろう。身長のことも考えれば、相当な低年齢なのではないのだろうか?

「じゃあ質問を変えようか。アルカードはこの城の兵士なの?」

「そー!アルはこのお城の兵士。メルと一緒にたくさん戦ってるの!かっこいいでしょ?」

「そっか、兵士なんてすごいね。かっこいいと思うよ」

「でしょー!えへへ」

 上機嫌に笑うアルカード。それを横目にラトリィは動揺する。

「推定で1ケタの年齢なのに、お城の兵士なんて・・・。もしかしたらとは思っていたが、この子があの魔獣を倒したなんて考えにくいな・・・」

「ん?なーに?」

「いや、なんでもない」

 アルカードについてわかったことを呟きながらまとめる。そして次の質問へ。

「ところで、メルって誰?」

「メルはねー友達!いつも優しくて討伐隊も二人で組んでるの!」

「なるほどねー・・・」

 アルカードが言った討伐隊とは兵士の戦う時の班のようなものだ。何かがあると基本この討伐隊のグループで戦うことになる。しかし武器不足により基本素手で戦うため、二人だけというのは異常に少ない。「二人が強いから」ならいいがもし自分と同じように「差別を受けて」なら問題だ。しかし、もし後者なら何故差別を受けるのか・・・。戦い方になにかあるのか?

「ところで、アルカードは・・・」

 どうやって戦うのと言おうとした時、アルカードが「着いた!」と声をあげる。

「ここは?」

「大広間!よくみんなが休憩してるの。多分ここにいると思うよ!」

 適当に歩いてるように思っていたが、ちゃんと目的地を決め、向かっていたのか。まだ聞きたいことがあるがお城内の部屋と部屋を移動するだけの時間なんてたかがしれてる。時間切れも仕方ない。

 次何かを聞けるならカイトが試験に合格した後か、それとももっと早いか・・・。まぁいい。どうせ近いうちに知りたいことは全部知れるだろうから。

 ラトリィが二つ並ぶ扉に手をかける。

「じゃあ開けるよ」

「うん!」

 両開きの大きな扉の向こうには人の気配がするが、音が聞こえない。本当にいるか不安になるが、ラトリィは思い切って扉を引き開けた。

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