商団護衛任務12日目
「よし、忘れ物はないか?」
「はーい」
「じゃあ出発だ」
(ん?…なんで何人かの村の人が見送りに来てるんだろう?)
「下り坂で楽チンですね〜」
「帰りは荷物増えた挙句に上りだけどな」
「…」
「今日はこの坂を下って少し進んだ先にある岩陰で野営だ」
坂を下り終わった先には…
「うわぁい!海だあああ!」
「海だー!きれー!」
「海の景色も良いもんだな…」
「潮風が気持ちいいな。」
「今日からベルグールまでの5日間はこの景色を横目に進んで行くぞ」
「最高のローケーションだね!」
「食料があればですけどね…」
「“ぐぅ〜”」
「それは禁句だよ〜リーフさぁ〜ん」
「あははは、ごめんね、ミキさん」
「下り坂を意外と早く行けたから、もう少し先に進もう。その間に何か食べられるものを探しておかないと今日の晩御飯は無いぞ〜」
「頑張りまーす!」
「砂浜綺麗ですね…」
「そうですね…」
「“アハハ…”」
「この子供達は目の前のあの怪獣戦争が見えてないのか?」
「見えているけど脳が見ていると認識していないようだな」
「大型ゴカイと大型イソガニの試合だな…」
「大乱闘もいいところだろ…」
「カニだ〜昨日食べたカニは美味しかったね〜リーフさん〜」
「あはは〜嫌だな〜ミキさんは…気の食べたのはエビだよ〜」
「“アハハ!”」
「…」
「…」
「意外と長引いてるけどカニの方が勝ちそうだな」
「てひどいダメージを受けはいるがな。」
ゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴ…
バクン!…
サァ…
サァ…
「何今の?」
「なんでしょうね?一瞬であの大きなカニいなくなりましたよ〜」
「一瞬すごい大きい凶悪な歯を持った魚みたいなのが見えたんだけど?」
「奇遇ですね。僕も見えました」
「…」
「あんだけ派手に暴れてればそりゃ大型魚類も顔を出すだろう」
「ここらへん、水深深いしな…」
「あの大きさは水深深いで済ませられないよ?」
「白身魚かな?美味しそうですね〜」
「あぁ〜漁夫の利持っていかれた〜」
「弱ったゴカイならならいるが?」
「あれ食べたい人ー!」
「…」
「…」
「…」
「満場一致で不可です。」
「はー…砂浜は綺麗だねぇ〜」
「大怪獣戦争のせいか他の生物は身を潜めているようだな」
「大暴れが悪いのか。そのあと現れた強靭な顎を持つ魚が悪いのか…」
「ねー!ねー!本当に食べれるやつなんもないの!?」
「貝とかいるじゃんよー!」
「あぁ?アレか…あれはな…それ!」
「石投げて何を…」
ピューン…
シュン!
「おぉ!?」
ガコッ!!!
バキン!
「…」
「とまぁ見ての通り投げた石を鳥だと思って強靭な触手で捉えて殻で獲物を噛み砕き食らう」
「石に反応したって事はやつらも飢えているんだろう。満腹の時は石だとわかると興味なさげに反応しないから今のやつらは凶悪そのものだ」
「貝のくせに強いのかよ…」
「むしろこの世界で人間が一番弱いかもしれない」
「おぉっとまさかの他種族による人間凌辱ファンタジーものだったとは…来る世界間違えたわ〜」
「ここってそういうエロゲ?」
「だが人間だって迂闊に喰われるだけじゃない。」
「そうだぞ。あんな奴らは遠くから火魔法放てばあっさり貝の蒸し焼きだ」
「ぐぐぅ〜」
「私魔法使いになるよ!」
「冒険者じゃなかったか?」
「冒険者では食べていけない気がした!」
「好き嫌いせずに虫食えば冒険者でもやっていけるだろ?(笑)」
(元の世界では好き嫌い無かったけどこの世界では好き嫌いが激しい子になってしまったようだ…)
「おかしいな〜異世界ファンタジー物ではライ麦の黒パンが庶民の食事と聞いていたのに…」
「麦を育てる環境があるほど余裕のあるところは早々無いな」
「倒せれば、だがこの世界の食物は美味しいと俺は思うぞ」
「ザリガニ、うまかったろ?」
「美味しかった。」
「あの貝も中々いける味なんだよ。」
「ほう?」
「“倒せればな”」
「…」
「…」
「あ、」
「どうしたの?」
「食えるやつ居たぞ」
「どうせすごい強いんでしょう?」
「いや。重い以外なら今まで見て他のよりも安全だぞ」
「ほう?して、味は?」
「もちろんうまい。重い割りに食べるところは少なめだが…」
「ほう。弱くて美味しくてなんて私たちでも何とかなりそうじゃないか」
「何をもって弱いと思うかによるけどな」
「で、そいつはどこに?」
「あそこの砂浜の真ん中にモゾモゾした奴がいるだろう?」
「あの大人の膝丈ぐらいある巻貝?」
「そうそう。アレはもともと別の生き物の殻だがそれを再利用している奴がいる」
「あれ?もしかしてヤドカリ?」
「知ってたのか。そうだヤドカリだ」
「あいつらは生きてる時は殻を背負ってるから取り出せないが、殻ごと焼いて殺すと中で殻を背負ってる部分が外れて食えるようになるころには引っ張り出せるんだよ」
「ほう。」
「そして殻を割るか引っ張り出すかして中の身を食べると言う寸法さ」
「それだけ聞くと乱獲されてそうな気がするんだけど?」
「ふむ。まぁもっともな意見だがやつは重い。あの個体だと50キロはあるだろうな」
「重いね」
「の割りに殻と奴らの皮膚が分厚くて食えるところは重さの10分の1あればいい方だ」
「50キロだから…5キロの可食部か…」
「美味なのは保証する、だが焼くのに時間がかかるし持ち運びだってしにくい。それに奴らも喰われまいと抵抗する。抵抗から殻にこもるの方に切り替えてくれればあとは持ち運んで焼くだけだが…」
「そうか…普通の冒険者だとそこまで手間をかけるぐらいなら…」
「携帯食か虫食ったほうが早い」
「…」
「それに焼いている途中に匂いにつられて他の魔物や獣も出るかもしれない」
「あ〜」
「そういうリスクを背負ってでもアレを食う酔狂なやつはいない」
「しかし、前の村で十分な食料を得ることができずにアレを食うしか選択肢がない酔狂な商団パーティーがここにいると…」
「みんなー!アレ晩飯でいい?」
「いいと思います!」
「触手貝よりは安全そうだしいいかもな」
「賛成だ」
「よーしじゃああいつを今日のご飯とする!」
「何個食べたい?」
「ん〜大きさもまちまちですが、食べれるときにお腹いっぱい食べておきたいですよね」
「あいつらは一度火を通して肉を天日干しにでもすれば保存食にもなるし何匹いてもいいな。あ、でも多すぎると料理しきれないから多くても2個な。奴らを焼くのに大量の薪が必要になるから」
「薪ならあの流木で足りるでしょう?」
「今日は食事に時間がかかるしすぐに野営地つきそうだからもう運搬しちゃうよ?」
「いいけどどうやって?あれは重いぞ?」
「そんなのうちのレア召喚獣にお任せですよ…」
「いけ!おはぎ!」ぽーい
ズサァ…
「いや…おはぎ壊れたけど…?」
「ヤドカリたちもなんか困惑してるけど?」
「いでよ!荷台!」
「“いでよ!陸戦型魔導機獣!”」
「…」
(なんで3人でハモって言い直すんだ…恥ずかしい)
「おぉ〜!ミキさんすごいです!」
「そうだろうそうだろう」
「よく考えたな。」
「台形の荷台にすることで土から陸戦型魔導機獣を生成するときに殻ごと持ち上げたのか…よく考えたな」
「重いのを運ぶと腰やりそうな気がして…」
(発想は素晴らしいけどそれを思いつく理由が年寄りくさいのはなぜだろう…)
「よっしゃーじゃあこれをこのまま運搬して今日はヤドカリの殻ごと塩茹でパーティだ!」
「“おー!”」
一行野営準備中
ワシャワシャ…
「で、これどうやって火にくべるんだ?」
「これはねー…調理するところここでいい?」
「もうちょい寝床に近づけよう」
「ん」
「いい感じだ」
「よしじゃあ固定するよー」
ズズズッ…
「おぉ…車輪のところがなくなって台形の部分だけが残ったな。」
「んでここを開けると…」
「はい!即席かまど!」
「おぉ〜ミキちゃんやるぅ!」
「えへへ〜」
「じゃあさっき集めた薪で焼いててよ」
「私薪とも一個捕まえてくる」
「俺も薪拾い手伝おう」
「ありがと」
ズズズッ…ワシャワシャ(怒)
「さて野営地に帰還するぞー」
「はーい!」
「ただいま〜」
「お帰り〜」
「焼けた?」
「ハッハ…そんなすぐには焼けないよ」
「このペースの火で焼き続けてあと3時間ぐらいか?」
「げっ!そんなかかるの!?」
「日が落ちるまでまだ時間はあるから帰りにもここで野営するかもしれないし時間があるうちに薪集め再開するか」
「へーい…」
「たはーっ!もうだめ!魔力すっからかん。」
「おつかれ〜少し寝てたらどうだ?まだ焼けるまでに小一時間はかかるだろうから」
「じゃあお言葉に甘えて…」
「飯がなんとかなってよかったな」
「まさかあの村で食料が手に入らないとは思わなかったからな」パチパチ…
「あぁ…少し前まではあそこまで状況は悪くなかったと思うんだが…でも保存食はぼったくり価格だったけどな」
「何があったかは知らないが、帰りにあそこで補給する事は考えないほうがいいな」
「たしかに…」
「そういえば村を出発するときに何人か見送り?が来てたがアレはなんなんだ?」
「あぁあれか?アレはな…」
「ミキさん〜ごはんですよ〜」
「食べます!」
「リーフもミキ君の起こし方に慣れてきたな。」
「お寝坊さんにはアレが一番良いのさ(笑)」
「“いただきます!”」
「この一番大きいハサミの部分をミキ君が食べると良い」
「わーい」
「あちちち…よっ!」ズルッ
「はいはい〜葉っぱの上にのせるぞ〜」
ドサッ…「“おぉ〜”」
バキッ…「これはミキちゃんに」
「ありがとうございます」ニコニコ
「あとは男で分けて食うか」
「あちちちち…中までしっかり火が通ってるな!」
「はむっ…んー!美味しい!薄い塩味がついてる!」
「どれどれ…ん〜口いっぱいに広がるカニ肉って感じだな!昨日のやつと比べて泥くさくない!」
「くっ〜!こんな熱々のカニ肉なら本当に焼酎が欲しくなるぜ…」
「ん!美味しいです!昨日のザリガニも美味しかったけどこっちの方がもっと美味しい!」
「ザリガニは内陸部でも養殖できるがこいつは海でしか食べられないからな!」
「王族だろうと貴族だろうと海に来なければ食えない代物さ」
「さいこー!」
「わんわん!」
「ワン太も美味しくてテンション上がってるか〜!」
「あれ?ワン太ってカニとかエビ良いんだっけ?」
「昨日もザリガニ食ってたじゃないか。何がだめなんだ?」
「あぁ…そういえば食べてたっけ…あのあと何事もなくしてたからこの世界は大丈夫なんだろう。」
「わふっわふっ」(喜)
「魔核も取れて最高!」
「2個目食べる人ー!」
「“はーい!”」




