商人修行その2
「おはようございます」
「おはよう…」
「さ!今日もお客様のためにトントンしますよ!」
「…」
「どうしたんですか!」
「え?もう手が痛いな〜って…なんか修行の時を思い出しちゃってね…」
「修行の時ってどんな感じだったんですか?」トンットンッ
「修行の時は最初は馬の世話とか、店を綺麗にしたり扉拭いたり…」
「店主さんも早く始めてください」トンットンッ
「うっ…(涙)はい…。」トンットンッ
「ふー!なんとか。午前中で全部終わりましたね!」
「あぁ…やっと終わった。こんなに一生懸命働いたのは久しぶりだよ…」
「毎日一生懸命してください」
「えーと次は…店の中を掃除しましょうか。汚いし。」
「わかった」
(口答えしてもどうせするんだろうなぁ…)
はきはき、ふきふき
「いやー綺麗になると心が洗われますね!」
「商品たちも心なしか喜んでるように見えますよ!」
「あぁ…そうだね……」
(そういえば俺も昔、そんなこと思ったことあったっけ…)
「じゃあ昨日お願いした木片を貸してください」
「どうぞ」
「これを〜カウンターの上に置いて〜歯ブラシ置いて〜できた!」
「うちの主力商品の歯ブラシ1本銭貨6枚!」
「おぉ〜!」
「あ、ちなみに村の人には銭貨4枚で売ってください」
「あ、そうだったね。」
「ちゃんと忘れずに値引きしてあげてくださいよ。逆に村に来た冒険者と商人には値引きせずにきっちり銭貨6枚で売ってやってください」
「あぁ…任せろ。」
「値切られでもしたら次は店主さん一人でトンットンッ地獄ですからね?頑張ってください」
(売れて欲しいけど売れて欲しくないッ…!!!)
「次は…布が欲しいんですけどハギレとかありますか?」
「無い」
「じゃあ次ハギレを仕入れしといてください」
「原色カラーでできれば黒ぽいやつで」
「針と糸は?」
「嫁が持ってるものなら。」
「なら大丈夫ですね糸があれば糸も一つ仕入れて置いてください。糸もできれば黒いやつか赤でもまぁいいです」
「ふむ」
「布って行商人持って来ますか?」
「ハギレならだけどそんな重いものは持ってこないよ」
「ふむ…仕入れに行く必要がありそうですね…」
「そういえばこのスポンジってヘチマですか?」
「お?よく知ってるね。そうそうヘチマを切ったやつだよ」
「なんでこれこのサイズしかないんですか?」
「え?だって洗い物で使うサイズでいいから丸々置いてあるんんだよ」
「使いずらいのでこれ全部適当な大きさに切りましょう」
「えぇ?これ切るの結構大変…」
「はい!行ってみようー!」
「…」
「こっちの大きいやつはこのサイズで…っと」ザクッ
「逆に小さいのは少し長めにカット…」ザクッ
「なんで大きさ違うの?」
「え?料理しないんですか?」
「嫁がしてるしね」
「ダメ男」
「…」
「このままだと使いにくいんですよ。そしてこの通り、切るのも割と手間だし」
「それは見てればわかる」
「…それで用途ですがこっちの大きい方は武器を手入れするときに使えるかなと思いまして、油さしたりするときにスポンジでこすって馴染ませる」
「動物の皮とかでもいいとか聞いたけどスポンジ状の方がおそらく使いやすいはずです」
「ふむ。考えた事なかったけど確かにな」
「こっちの少し小さい方は普通に家で使う用です」ザクッ
「別に大きい方を台所用にしてもいいんですけどね」
「はい。これで大きい方は1つで銭貨2枚小さい方は5つで銭貨一枚」
「えぇ?ぼったくりすぎじゃない?」
「ん?仕方ないですね…じゃあ大きい方を銭貨3枚にしましょう」
「いや…なんで値上げ…」
「この方が使いやすいからです」
「主に大きい方は冒険者用で小さい方はご家庭用のイメージで」
「ふむ…」
「今までの3本で銭貨一枚に考えるとかなり高価だな」
「切るの大変なんですからこんなもんじゃないですか?」
「じゃあまた明日の朝までに「武器の手入れ専用スポンジ一個銭貨3枚と5個銭貨一枚」と書いた木片を作って置いてください」
「えぇ…また…あれ地味に大変なんだよ…」
「利益のためです…それに一度作れば壊れない限り2個目を作ることはないので頑張ってください!」笑顔
「頑張ります…」
「んー他には〜仕入れたいもの色々あるけど行商人次第って言うのがねぇ…」
「まぁな…」
「この前言ってた木材屋さんって今居ますかね?」
「この時間ならいると思うけど…なんで?」
「この店の主力商品を作ってもらおうかと思って」
「ふむ」
「こんにちわー」
「おおミキちゃんじゃないか!薪がもうなくなったのか?」
「あーいやいや(笑)今日は商店に置く商品開発に来まして」
「ほう?」
「よ!久しぶりだな!」
「おーダメ店主じゃねーか!なんだかんだ言って久しぶりだな!」
「新しい嫁か?」
「もう尻に敷かれててな…」
「敷いてませんよ」
「木材で新しい商品って言ったけど何作るんだ?」
「漠然ですけどお皿とかですね」
「皿なんて一つあればいいじゃねぇか」
「いや…なんかこう…この村にしかないようなそう…特産になるようなものが欲しくて…」
「特産ねぇ…」
「店主さんが手先が器用って言ってたので、どうせ店番させても寝てるだけなので何か作らせようかと思いまして」
「ひどい」
「あぁ!そりゃいい考えだ!」
「ひどい。俺は人生を楽しく仕事も楽し…「そんなことより使う木材によって値段とがちがうんですか?」
「あ〜そうだな〜違うっつってもよその街から買い付けに来るほどの高価な木はこの辺には無いぞ」
「そんなのはあれば昔から産業になってら!」
「無視するのはひどいと思うんです」
「安い建材しかないんですね…一番多いのはなんですか?」
「杉」
「杉か…うちの実家の近くの山も杉ばっかりだったなぁ…」
「他にはカキ、クヌギ、イチョウ、カリン、カヤ、ケヤキと、まぁまだまだあるが…杉に比べると数は少ないな」
「うーん安定して将来的にも安心して使えるのは杉だけか…」
「杉は動物から見ても嬉しく無いだろうしな(笑)」
「人間から見てもあんまり…(笑)」
「まぁだが割とまっすぐ伸びるし切り出す時や使うときは楽だがな」
「なるほど。じゃあ杉を材料にして何か作りましょう」
「皿だったら薄めに木材を切り落としてナイフで適当に削っていけばできるじゃねぇか」
「それじゃどこでも誰でもできるので特産になりません」
「じゃあどうするんだ?」
「コレが手先が器用と聞いたので浮き彫り掘り?何か可愛い絵を浮き出してる感じで作ってもらおうかと思いまして」
「君は将来いい奥さんになるよ。俺にはわかる」
「なるほどな。確かに皿なんて使えればそれでいいし庶民の使う気の皿なんて大した装飾も施されてないしな。どうせやるなら貴族向けの皿とかが多いからな」
「この際誰が買うかは問題では無いんですよ。売れれば良いのです売れれば」
「確かにそうだな」
「…」
「どうせ店番してても誰もこないんですしその空き時間を使って作らせる感じなので、あとはこの人に値段を決めて貰えば良いんですよ。世界に一つしかないお皿なので」
「ミキ君は物を考えるのがうまいな。そんな穀潰しと村に豊富にある物を使って、なんとかしようと思うのはた例え売れなかったとしても良い考え方だと思う」
「ありがとうございます!」にっこり
「作るの俺なんだけどそれは…」
「他にも作って欲しいものがありますがとりあえずしばらくはお皿でいいでしょう」
「なにより家で使ってるお皿を新しいものにしたいんです…」
「割れて使えないのか?」
「いえ…そんなことはないですが…あんまり綺麗とは言い難いので…」
「そんなに気になるか?」
「女性は気になると思います…」
「そんなもんかね」
「作るの俺なんだけど?」
「それと木材なんですが木剣や木槍に使えるぐらいの長さの木材と盾に使える木材が欲しいんです」
「木剣?あぁ自衛団用か?」
「ですね〜」
「そういえばそんな話が村長からも来てたけど、一度村長と話した方がいいかもな。」
「ふむふむ。」
「わかりました。じゃあそうします!」
「決まったらまた色々頼みに来ますね!」
「あぁ、またおいで〜」
「それじゃあ店主さん。村長のところに行きましょうか」
「俺必要?」
「必要ですよ!店主さんがいないと何も始まりませんよ!」
「あなたならできます!私も応援します!みんなのために、村のためにお店のためにコレからも頑張りましょう!」
「今の話も俺挨拶しただけで……聞いてないし。おじさん悲しい」
「こんにちわ村長さん」
「おや、いらっしゃい。店の方はどんな調子かな?」
「順調ですよ!」
「だが後ろの大木が立ち枯れしておるようだが?」
「その木材もうちの店主さんが腕によりをかけてこの村の特産物を作ってくれる予定なので楽しみにしてください」
「え?俺聞いてないんだけど」
「そーか!そーか!それは楽しみだ!期待しているぞ店主さん。」
「言ったの俺じゃないんだが…」
「それでさっき木材屋さんで木の武具について小耳を挟んだのですが」
「あぁ練習用の武具の事か?」
「そうです」
「うむ。きちんとした武具がいつ届くかわからないしそうお金も使わないから木材屋に頼んで作らせようかと思ってな」
「その仕事うちに回して貰えませんか?」
「ん?別にいいが特産も作るとなると仕事が増えて忙しくならんか?」
「大丈夫ですこの店主さんがやりますし、私も手伝います」
「ふむ…」
(商人ではなく職人になるのか?)
「わかった。ではお願いしようかの」
「ありがとうございます!」
「木材屋さんには大まかに切り出し依頼だけにして、細かいところはこちらでやりますのでできたら納品しに来ますね」
「あぁ、だが予算がかけられないからそんなに立派なものでなくとも良いぞ」
「わかりました。」
「では製作費用についてですが、店主さん。出番です」
「ん?なんの話?」
「話聞いてなかったんですか?」
「木材で練習用の武具を作る話だろう?」
「そうですそれでうちにもお仕事いただいたので木材屋さんと報酬を半分こにしてもらうために今から交渉をしてもらいます」
「店主さんの商人らしいところを私にも見せてください!期待してますよ!」
「…」
「あ、あの…村長さん。それでご予算的には?」
「武器1個で銭貨2.5枚」
(安っ!無理だろ!やるだけ無駄じゃねーか!)
「あははは!ご冗談を!うちが手がけるんですよ?せめて一本大銅貨一枚はないと…」
「この村に予算があると思うのか?それにそちらが仕事が欲しいというから斡旋してやってるんだぞ?」
(交渉材料が不利すぎる…)
「じゃあ…小銅貨一枚!これでどうですか!」
「ミキ君はが最初に倒したスライムって一体銭貨幾らか知っておるか?」
「銭貨2枚じゃぞ?」
「一本作って銭貨3枚コレでもだいぶ譲歩した方じゃ」
「商店に流す分木材屋さんの取り分が減ってしまうのう…」
「なっな〜にを言っているんですか(笑)ミキ君だって最後は木剣で倒したんですよ?」
「丈夫な物を作れば剣一本あればスライムなんぞ何体も狩ることができる」
「自衛団にしても何かしらものがないと始まらないでしょう?」
「よその街に仕入れに行くにしても何かしら…何かしらないと素手で仕入れに行かせるつもりですか?銭貨5枚!これ以上はもう厳しい!」
「それにもし護衛をミキ君とソウにお願いしても近接担当がいなければ話になりませんよ!せめて盾でしょう!?」
「…」
「わかった武器一つ銭貨5枚でいいだろう。」
「ただし武器3つに一つ盾を無料にしてくれ」
「わかりました。それでいいでしょう。」
「物は何をどれぐらいにしますか?槍を5本の盾という感じで?」
「まだメンバーが出揃っておらんからわからないがおそらく槍になるだろうしとりあえず先に6本作っておいてくれ」
「承知しました。早い目に納品しますのでよろしくお願いします」
「あぁ、それじゃあな」
「はぁ〜疲れた〜」
「お疲れ様でした。」
「いやーなんでこんな無茶振りを…」
「商人を学びに来たのにお店にお客さんが来ないから不利なとこから交渉始めるにはどうすればいいのか勉強しようと思いまして」
「鬼畜。」
「あんな前提から交渉も何もないでしょう!?」
「いやいや!でも最初の倍の報酬になったじゃないですか」
「あのね、ミキくん違うんだよ。」
「はい?」
「交渉ってには落とし所があってね」
「はい」
「お互いが最初に要求するのは希望金額なんだよ」
「ほう」
「だから最初の金額がその通りに取引されることはないんだ」
「店に置いてある商品だって仕入れ値の3倍の値段置いたじゃないか?」
「ですね。」
「でも本来なら値段を置かなければ本来ならもっと高く売ることもできる“かも”しれないんだよ」
「ふむ」
「だから…ってミキ君は見たことないかもしれないけど値札を置いてある意味は、店は基本交渉に応じる気はありませんよという意思表示の現れで、値札を置いてない店はカモがいればふっかけてやろうという腹なんだよ」
「私に鏃売るときはそういえば値札ついてませんでしたね?」
「…」
「そうかー私はカモられたのか〜」
「で、話を元に戻すけど…基本的にこの世は値段交渉が当たり前なんだよ。値札が付いてても」
「ほうほう。」
「交渉をしてお互い譲れない値段まで持っていく。」
「慣れないと気がひけるかもしれないけど売る側も次の利用をしてもらいたいからイメージ良くするために幾らかは値を下げたりもするんだよ」
「特に羽振りのいいやつ相手にはな」
「私の鏃…「それでお互いいいところで折り合いがつけば交渉成立。つかなければ、買う側なら別の店を探すとかになるかな」
「鏃1個にしても交渉して買わないなんてよっぽどのボンボンじゃないとそんなことはしないぞ」
「ボンボンで悪かったですね」
「いや?俺たちからすれば交渉しないやつなんてカモだから何度でも来て欲しいわ」
「…」
「カーモ!カーモ!(笑)」
「うっうるさーい!」
「ということで細かい部分は私たちで加工するので槍用の木材を6本と盾2つ分ください」
「わかった。それにしても仕事とられちゃったなー今度店主のおごりで飲むか!ミキちゃんに酌してほしいなー!」
「おぉ!いいですね!教会以外での食事は初めてです!“おごり”なのでやりますよ♪」
「…」
「もういいよ、うん。俺疲れた。うん」
「”わぁい“」
「ただいまー」
「お帰り、どうじゃった?」
「今日はなかなか勉強になりましたよ!」
「おぉそれは良かった良かった!」
「今日はですね〜…」
…………………
………
…




