村で商人の修行
「おはようございます、おじさん」
「あっ…おはようございます…」
「今日は先生から商店で働きながらモノの価値を覚えるように言われて学びにきました」
「あぁ…聞いているよ。」
「ではしばらくの間よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼む」
「何をお手伝いすればいいですか?」
「まずこの服を着てくれ」
「!?エロいメイド服とかですか?」
「は?いやいや店で居る時に着てもらう服だよ。一応長袖だから腕はまくらないように…お願いします…」
「おじさん半袖じゃん」
「男はいいんだよ!」
「なんか差別だけど店主さんがそう言うのなら…」
「…」
「?」
「実はな…」
「はい」
「暇なんだよ」
「え?」
「客は殆ど来ないだろ?」
「行商人も来なければ…冒険者も殆ど来ないだろ?」
「はい…」
「つまりそういう事なんだ…」
「なるほど…」
「なので商人として俺が教えてあげられることを教えながら、ごく稀に来るお客さんの相手をしてもらおうかなと思っている。」
「わかりました」
「まずは店内の商品を見てくれ」
「んー」
「なんかモノの置き方が駄菓子屋さんぽいですね」
「だがし?よくわからんが置き方はあんまりよくないか?」
「うーん正直乱雑っていうか…何がどこにあるのかわかりにくいと言うか…」
「ふむ…」
「例えばこの包丁類とかそんなに売れないんじゃないですか?」
「売れんな。」
「表に出すのは3個ぐらいにして他のは裏とかでいいんじゃないですか?」
「他にないですか〜?とか逆に他にもこんなのがあるよ〜と言うふうに言って裏から出せばいいじゃないですか?」
「たしかに」
「このお店って何がよく売れますか?」
「店の裏に植えてる香味野菜とか。」
「…」
「ここに置いてあるものってあんまり売れないんですか?」
「村だし…そもそもみんな持ってるし消耗品ぐらいしか…」
「…」
(あれ?商人らしいけど実は下手な人なの?)
「んー…」
「店主さん」
「はい。」
「商品の置き方を…変えましょうか…」
「はい。」
「この店って武具類ないんですか?」
「無いな。今まで必要じゃなかったし」
「これから自衛団ができるらしいので武具の仕入れもしましょう!」
「よくわかりませんが日用品に比べて利率が良いはずですよ」
「たしかにそうなんだが…売れるかな?」
「売れますよ!」
「そもそも私も武具が欲しくてこのお店に来たじゃないですか?」
「そう言えばそうだったな」
「しかし武具の仕入れは高いんだよな…」
「お店の予算的に厳しいですか?」
「うーん…安い武具なら行けなくも無い」
「じゃあそれにしましょう。」
「とりあえず仕入れが安い武具って何ですか?」
「シンプルだが…短剣、槍、小剣、木盾、ソフトレザーアーマー、胸当て、かな…」
「ん?短剣と小剣の違いってなんですか?」
「短剣は短い代わりに耐久性と切れ味を良くしたもので、小剣は短剣よりも長さがある代わりに刀身が細くなるから耐久面と切れ味に少し不安の残る感じだな」
「なるほど。」
「でも切れ味に不安が残るが早々にへし折れることはないぞ」
「昆虫ぐらいなら戦えそうです?」
「あぁ、問題ないはずだ」
「ならそれを仕入れましょう!とりあえず一個ずつ。」
「それらは入り口入って一番奥ですが正面の壁に掛けましょう!」
「店に置いてあるものですが…この、店の真ん中に置いてあるのは主婦の人が買いに来るものですよね?」
「あぁ、細かい砂、乾燥へちま、砥石、歯磨き粉用の灰、歯ブラシ、とかかな?」
「少ないですね」
「少ないか?しかし頻繁に買いにきてくれないし…」
「買いに来ないのは買いたいと思えるものがないからじゃないですか?」
「そうなんだろうけど…都市の商店みたいに銀の皿や銀のナイフなんてこの辺じゃ高くて売れないぜ?」
「いや…そんな成金趣味みたいなのじゃなくて…もっと庶民的なものが欲しいんですが…」
「と言うと?」
「新しいお皿とかボウルとか」
「ボウルが何か知らんが新しい皿か」
「と言うか前から思ってたけど、ここの生活って不便ですよね」
「考えた事ないが…どこもこんなもんじゃないか?」
(あぁ…つまりあれか…日本とこの世界とは存在してるモノの数が違うのか…)
(トイレだって桶だしね…もう慣れたけど…)
「店主さん。これはチャンスですよ」
「何?なんの?」
「儲かるチャンスです」
「ほう。」
「とりあえず今ある商品だけでも仕分けして居るものといらないものを分けて、いらないものは仕入れ金にするために次に来た行商人に売りましょう」
「ほとんどが行商人から持って来てもらったものなのにそんなことをしたら損しちまう」
「でも売れなければただのゴミですよ」
「う、…そうだな…」
「行商人がどんなものを持ってくるかわかりませんが、足りない分はこの売れないゴミで金額のカサ増ししてもしくは物々交換してやりましょう」
「ゴミて…俺の目利きで仕入れたも…「売れてないのでゴミです」
「はい。」
「後、最初に暇だって言ってましたけど、店の中が汚いです。」
「そうか?」
「これじゃ女性も寄り付きませんよ」
「女が寄り付かなくれても売れれば別に…」
「お財布を握って居るのは女性なんですよ!!!」
「…」
「つまりお客様は村の女性達なんです!」クワッ…
「…」
(なんだろう…この子こわい…)
「その女性達から今現在見向きもされてないここに置いてあるものは全てゴミだと言っても過言ではないんです!」
(この子こんな子だったっけ?)
「ところで店主さん。手先は器用な方ですか?」
「ん?あぁ、こんな見た目をして居るが小さい頃から器用な方でな。」
「男の子だったから木剣なんかをよく作って友達と遊んだもんだ」
「村に一人だけいる木材所のやつとよく遊んだもんだ」
「商人より物作りの方が向いてるんじゃないですか…?」
「ほっとけ!俺は真っ当な商人を志したんだ!小手先の何かじゃないんだよ!」
「売れてないですけどね」ボソッ
(聞こえてるし…結構傷つくなぁ…)
二人で仕分けしながら…
「これっていくらですか?」
「ん?それは銭貨3枚だ」
「これは?」
「銭貨8枚」
「…この高そうな奴は…?」
「小銅貨二枚」
「…」
(あれ?この人商売下手なのかな…)
「その顔…疑ってるだろう」
「いえいえいえ!そんなそんな!ただ、なんか全体的に安くないかな?と思って…」
「真っ当な商売だからな!ほとんどここにあるものは仕入れ値だ」
(あぁ…これ典型的にダメなやつだ…本当に商人の元で学んだんだろうか…)
「店主さんとりあえず仕分け始めちゃったけど、この店にあるあっちの端っこから商品ごとにいくらずつになるか教えてもらってもいいですか?」
「あぁ…これが…」
…………………………
……………
……
…
「はー…商品少ないくせに以外と時間かかりますね…」
「ほっといてください」
「それにしても…もう夕方なのに誰も来ませんね」
「こんなもんだろう」
(いや…ダメでしょ…)
「そんなんだから経営苦しいんですよ」
「ミキちゃんは容赦ないなぁ…」
「おじさん今日一日傷ついちゃったよ…」
「はいはい。そういうのは売り上げが良くなってから聞きますよ」
(手厳しい…)
「とりあえず半分終わったので明日はもう半分しましょうか…」
「はい。」
「それではそろそろ帰ります。また明日もよろしくお願いします」
「あぁ…商人を学ばせるとか言ってた割に今日一日教えてもらうばかりですまなかったね…」
「いえいえ!私もこの店が繁盛することを願ってますよ」
「あぁ…ありがとう」
「それじゃあまた明日」ニコッ
「あぁ…」
「これが初恋ってやつかもな…」ボソッ
「あんた!なにそんなところで突っ立ってるんだい!ご飯できたよ!」ドンッ
「…」
「現実は非情である」
「ただいまー」
「おぉ、お帰りご飯はできておるぞ」
「はーい。着替えて来ます」
「“いただきます”」
「モノの価値のお勉強はどうじゃった?」
「あー…とりあえず商品の値段は大まかに教えてもらいました」
「そうかそうか…あの値段から仕入れ値と儲けが分かっ?て商売が成り立つじゃよ」
「あそこに置いてあるものほとんどが仕入れ値らしいですよ」ズズズッ
「ヘアッ!?」
「そ…そうか…それは…商売が大変じゃのう…」
「あり得ないですよ仕入れ値で売るとか」
(そういえば今まで苦しい村の中でみんなの生活を支えていたから親父さんなりの気遣いだったのかもしれないが…そうか…あれはほとんど仕入れ値だったのか…)
「そのうち交渉なんかも学べると良いな。」
「今日のお客さん0ですよ」
「薄々思っておったがやっぱりそうか…」
「よくあれで生きていけますね」
「あそこの奥さんは頑張り屋さんじゃからのぅ」
「典型的なダメ男じゃないですか…」
「まぁ…まぁ…」
「しばらくは取引は見れそうにないですね」
「う…うむ…。」
(これは…)
一部訂正させていただきました
石鹸→細かい砂
スポンジ→乾燥へちま
歯磨き粉→灰




