食料問題・・・そして帝国へ・・・
翌日
朝食時
「アル」
「ん?」
「正直に言うんだけど食料が少なくなってきてる。」
「!?」
「うそ!?マジ!?」
「マジ・・・」
「あとどのくらいあんの?」
「1日3食だと後3日分ぐらい」
「!!!」
「なんでもっと早く言わなかったんだよ!」
「日々の忙しさで忘れてた。」
「ってのもあるし、流石に行商人が一人でも通ってくれると思ってた。」
「盗賊や奴隷商人が出る街に行商人は来ないだろ・・・」
「くっ・・・その辺ゲームのRPG的に考えてたから来るもんだとばかり思いこんでた・・・」
「1日2食にすると・・・・・・えーと・・・」
「4日分か・・・」
「4日分と1食だね」
「え?やばいじゃん」
「やばいよ。」
「どうすんの?」
「確か近くに帝都って呼ばれるところがあるんだよね?帝国だっけ?」
「トールキン!」
向こうからパタパタと走ってくる。
「はいなんでしょう王子」
「この近くに帝国と呼ばれるところがあるって言ってたよな?」
「はい。ここから西の方に5日程歩きますと、帝国がございます。」
「5日・・・足りねぇ・・・」
「東に行くと?」
「東に1日半ほど行きますと国境の外に隣国のヨド村がございます。」
「更に東の最果てには港町がございます。」
「ふむ・・・」
「どうかされたので?」
「実はな・・・」
かくかくしかじか
・・・・・・
・・・
・
「えーーー!?もう食料が底を尽きそう!?!?」
「おい!バカ!声がでけぇよ!!!」
メイドさんやレノ・リノちゃん達がこちらを見る
「絶対今のでバレただろ!このバカ!」
「しっしかし!アルトリア王子!」
「いずれバレるのは仕方ないから次どうするか決めたいんだけど、この人数を養える方法って何かある?」
「・・・」
沈黙し考え込むトールキン
~しばらくして~
「帝国ならあるいは・・・しかし・・・」
「それって魔界の入り口って言う?」
少しびっくりした顔をしながら
「えぇ・・・まぁ・・・端的に言うとそうなりますな・・・」
「そこでなら・・・あるいは・・・いやしかし・・・王子を危険な目に晒すわけには・・・」
「「今更過ぎるやろ」」冷めた目
「・・・」滝汗
「宰相である私の気持ちも考えて欲しいでありますぅ!!!」
「どういう所なのかは道すがら聞くとして、今すぐ旅立つ準備をしないと食料が持たない。」
「でも牛男も居ないのにこの人数どうやって運ぶんだ?」
ポン アルの肩に手を置きながら「よぉ!二代目牛男!」
「おうふざけんなや」
「真面目な意見だが?」
「それとも何か?あのギスギスに痩せた子供達に大人の足で5日かかる道を進めと?」
「ぐぬぬ・・・」
「更にめんどい事に、道中モンスターが出てもアルと私が対処しなきゃいけない。」
「予想以上にだるい話だな・・・」
「いや、モンスターが出るならいいよ?まだ。肉食えるし」
「OH!肉!!!」
「もし何も出てこない、もしくは奴隷商人とかち合ったら?」
「か・・・考えたくもねぇ・・・」
「実は私達の現状はかなりひっ迫しているんだよ」
「「・・・」」
「出発は?」
「出来るだけ早いほうが良いけど、今は昼頃だよね?今から出ても移動時間はいいとこ5時間ぐらい?」
「俺が運ぶにしても荷車どうするんだよ?」
「それも今から作らなきゃいけない」
「ふぅーーー・・・出発は明日朝一の方が良くないか?」
「私もそう思う。」
「えぇ!?外には奴隷商人がウヨウヨいるかもしれないのにこの人数をつれて帝国に行くんですか!?」
「バカ!だから声がでけぇよ!!!」
「だって魔界の入り口の帝国ですよ!?一度入ると二度と出られないって言う!!!」
「んなことはないだろ」
「それはないのでは?」
「二人は知らないからそんな事を言えるんですよ!!!」
「でも逆に東の方に一日半かけて村に着いてこの人数を養えるの?」
「それは・・・村の依頼をこなせば何とか・・・」
「これから冬になるけど、雪が降る中、拠点も無しに生活なんてできないでしょ」
「・・・」
「ですが帝国は・・・あまりいい噂を聞きません・・・入る人の量と出る人の量が釣り合わないんです・・・」
「「・・・」」
口には出さないが嫌な予感がする。
「だけど、いつ雪が降るかわからないこの状況で下手したら全員餓死の線もあるよね?」
「ありえます・・・」
「港町って事は奴隷貿易をやっててもおかしくないよな?」
「左様でございます」
「ここにいる子供が数人消えても探し出せるか?」
「難しいかと。」
「「「・・・」」」
「どっちみち、ここに居ても餓死するしかないから帝国に行こう・・・最悪そこで死んでも仕方ない・・・」
「イヤなこと言うなよ」
「死ぬ気でやればなんとかなるって事さ」
「初めからそう言え。胸糞悪い」
「ちなみに、聞いておくんだけど、1日半かけて行って依頼をこなして、あわよくば食料品を買って、その次の村には何日かかるの?」
「三日ほどだったかと。」
「寒くなって冬支度が始まってるのに食料なんてわけてくれるか?」
「それな」
「・・・」
「結局俺達には帝国に行くしか選択肢が無さそうだな・・・」
「そうだね」
「そのようですな・・・」
「よし、そうと決まれば明日の朝一から出かけるぞ。トールキンはその旨みんなに伝えてくれ。」
「ミキはみんなが乗れるような荷車を今日中に作れ。」
「はーい」
「わかりました。」
それから、荷車作りが始まった。
・・・・・・
・・・
・
「今居るのが・・・」
高齢のメイドさん3人
小犬人族のトールキン1人
アルとミキ2人
レノ・リノちゃん含めた20人
「アルが荷車牽いて~・・・私が後方と上方警戒が必要・・・」
「あ、トールキン~」
「なんです?」
「この辺って飛行生物いるの?」
「春や夏なら居ますが、この時期は居ないかと。」
「ふむふむ・・・わかったありがとう。」
「なら上方の警戒はいらないか。私が後方を見て・・・」
「20人が乗れる荷車ってそれもはやバスなのでは・・・」
「20人だと流石に後方警戒だけじゃなくて車輪の摩擦軽減も・・・」
・・・・・・
・・・
・
「じゃなくて・・・20人乗れてかつ荷車で寝たいよね・・・」
「車中泊のイメージか?にしても20人・・・」
・・・・・・
・・・
・
翌朝
「てなわけで、疲れたら中で休む。それまでは歩いてもらう事になりました。」
「俺が運ぶ案は?」
「少なく見積もっても10歳前後の子供の体重が20キロ前後の20人で400キロと大人250キロぐらい。」
「どう考えても人が運べる重さじゃないことが判明したので・・・出来るだけ歩いてもらって緊急時は魔法で丸ごと守る方法を取ろうかと。」
「まぁ俺は楽でいいけど、でも昨日言ってたように本当にその方法で大丈夫なのか?」
「ぶっちゃけかなり厳しいけど仕方ないんだよ・・・重さを減らす為にアルの剣を荷車のメインの柱にしようと思ってるから、この荷車の真ん中に剣を入れてくれ」
「ここか?」
「そうそう。緊急時はここから剣を引っ張り出して戦ってね」
「剣をメインの柱にしてるんだから何か不具合があるんじゃないか?」
「ぬっ・・・鋭い・・・でも仕方ないんだよ・・・一応戦闘中は動かさない予定だし、アル以外でこの荷車を牽ける人居ないから、必然的にこうなった。」
「まぁ何事も無ければいいわけか。」
「そうやねん。剣を柱と言っても動かしさえしなければ自壊する事は無い程度には作ってある。」




