アリクイさんの家
「おはようございます!先生」
「おぉ〜おはよう。」
「今日のご予定は?」
「今日はいつも通り日課をこなして見回りに出てきます。と言ってもアリクイさんが相変わらず常駐してくれているので安全なんですけどね。」
「ふむ…そういえばこの春が終われば梅雨の時期になるがもしかしたら食蟻獣は移動してしまうやもしれんな。」
「え!?それは困ります!」
「獣じゃから濡れるところにおりたくはないじゃろうし…梅雨が来る前に移動するのが普通のことだしな…」
「先生なんとかなりませんか?」
「うーむ…雨宿りが出来る簡単な小屋と藁でも引いてあげれば梅雨でもそこにいてくれるかもしれないが…小屋があっても移動してしまうかもしれない」
「ぐぬぬぬ…あそこは今唯一安心して子供達が遊べる場所となっています!川があり林があり果物が取れて小動物もいる。まさに楽園です!」
「それに最近はアリクイさんを割と近くで見てても逃げたりせずに仲良くなってきてる気がするんです!」
「ふむ…もう、村にとっても有益な存在なのじゃな?」
「はい。」
「よしわかった。それじゃあ梅雨が来るまでの間に村長に言って村の者と一緒に食蟻獣の小屋を作ってもらおう。」
「おぉ!さすが先生です!」
「そのときはミキ君にも同行してもらうぞ。でなければ食蟻獣がびっくりして逃げてしまうかもしれないからの。」
「わかりました〜♪」
数日後
「それではみなさん!アリクイさんの小屋を作りに行きますよ!」
「おぉー!」
「ソウ先生もすいません。忙しい時期に私と一緒に護衛の役をさせちゃって。」
「いやいやなんのなんの。ミキ君からの報告でアリクイがいることがわかり、ミキ君が安心して狩りに集中できてるのはそのアリクイのおかげらしいじゃないか。」
「村のためにも少しでも長く常駐しておいて欲しいしな!」
「そうですね〜!ほんわかして可愛いアリクイさんなんですよ?」
「ところで…なんで、小屋を作るのにこんなに人がいるんですか?」
10人前後の男衆「…」
「いやぁ!普段お世話になってるミキ君が珍しくお願いをしたもんだから。ほら、ミキ君の聖水のおかげや討伐のおかげで村の者も安心して暮らしていけるだろう?だから普段の恩返しにとたくさん集まってくれたんだよ〜」
(“ソウ、ナイスだぜ!“)
「そうなんですね〜!皆さんありがとうございます!」
「今日は私もモンスターからしっかりとみなさんを守りますので安心して小屋作りに励んでください!」
「まかせろ!」
(本当はすごい争奪戦があったんだがこれは言わないほうがいいだろう…)
「ここなんですけど…」
「ふむ。林を抜けるとこうなってたのか。なぜ草が生えずに荒野のような地帯が広がっているのかわからないがこの環境なら甲殻系のモンスターがいてもおかしくないが…アリクイ様が居てくれるからじゃろう全く気配もないな…」
「それでどこに立てましょうか?」
「この辺は梅雨時期、川と近いこともあって浸かりやすい。じゃから少し遠いがあの大きな岩がちょうど平らになっているから、今アリクイがいるほうに玄関を置くような形で配置しよう。そうすれば小屋にいながら見張りもできる。反対側や各方面にはアリクイが伏せをしているとき見やすいように下の方に小窓を設けておくと今よりも広い範囲を索敵してくれるようになるじゃろう。」
「さすがは年長組…全てが無駄のないような柔軟な思考だ…」
「おらーやるぞー頑張って1日で終わらせるぞー!」
朝から始まった小屋作りは、順調に行われて・・・
お昼。
「みなさーんそろそろお昼にしませんかー?」
「おー!待ってました〜!」
(来た…!この時のためにわざわざ醜い争いをして勝ち残り勝利をつかんだんだ!)
(くっ…こんな可愛い娘の手作りお弁当が食べられるなんて…俺もう死んでもいいな…)
(若い頃から大工やっとってよかった…)
「はいどうぞー!」
「はい!お水です!」
「ありがとう」
「これはミキちゃんが手作りした特製の弁当だから心して食えよー!」
「すいません、ソウ先生、先に私もいただきます。あとでソウ先生ようにお弁当を作ってありますから安心してください!」
「あぁ、ありがとう、安心して食べるといい護衛は任せときな!」
「うまい!」
「美味しいです!」
「あぁ〜来てよかった〜」
「初めて食べたけどミキさんは料理が上手なんですね!」
「いやー(笑)それほどでもー」
「ぅ〜ふぅ!照れてるミキさん可愛い〜(笑)」
「将来はいい嫁さんになるよ!」
「そんなそんな!」
(クッ…俺も混ざりたいが…見張りがある…大丈夫だ!俺!この後ミキ君が俺のためだけに作ってくれたお弁当があるじゃないか!それがあるというだけで嬉しすぎて涙が出そうだ!)
そうしてその日が終わる頃には小屋もできつつあり…
「いやー以外と1日で形になるもんですね〜」
「そりぁ人間が住む用の作りではなく単なる小屋だからな。それに使われるかもわからないから倒壊しない程度に手を抜いてもよかったしな。」
「ま、これだけしっかり作れば今後も見張り小屋としても使えるわな。」
「じゃあ藁を敷いて終わりだ!」
「引き上げるぞ〜」
村の門の前
「みなさん今日は私のわがままに付き合ってくれてありがとうございました!」
「今後も何かありましたら手伝ってくれると嬉しいです!」
「いつでも呼んでくれ!」
「呼ぶときは個別に俺に声をかけてくれよ!」
「あっずりーぞ!俺!俺にも声かけてね!」
「それじゃあお疲れ様でした〜」
「ただいまー」
「おおお帰り、どうじゃった?小屋の方は」
「すごい立派なの出来ましたよ!村の皆さんの意外な一面を見ました。」
「ほっほっほ、そうでなくては村に家が建てられんしの〜」
「晩御飯できておるから着替えておいで」
「はーい」
「”いただきます“」
「あとは…梅雨時期の餌じゃな」
「餌?」
「そうじゃ。梅雨時期は昆虫系の魔物の出現が減るから旅をするなら普段より安全になる反面、食蟻獣を常駐させようと思ったら定期的に餌を運んでやらなくちゃいけない。」
「ふむふむ」
「食蟻獣の好物はその名の通り蟻じゃ。」
「梅雨が来る前にミキ君が一人で蟻を駆除しながら食蟻獣の元へ餌を運んであげる必要がある」
「大変そうだけどあの辺一体の安全はアリクイさんにかかってるから仕方ないか〜」
「梅雨が来る前に蟻との戦闘経験を積む必要があるの。」
「確かに…でも蟻って群れでいるから一人でやるには難しくないですか?」
「今までのスライムやナメクジに比べてると難易度は格段に上がるの。」
「奴らは蟻酸を吐き出すし強力な顎をもっておる。噛まれれば手足はちぎれるの。」
「死んでしまいます。」
「じゃがダンジョンの上層でも安定して出現するから倒すのに慣れておく必要はあるぞ。」
「ふむふむ。」
「まぁ弓なら蟻の頭を射抜いて地面にでも縫い付けてやればおとなしくなる故、コツを掴めば大丈夫じゃろう。」
「食蟻獣は蟻以外にも好みはしないが虫系のモンスターも食べるから一緒に処理を任せればよい。」
「昆虫モンスターを倒してアリクイさんの元に運ぶ仕事が始まるお…」
「街の衛兵さんとか誰かがしてくれないかな〜」
「この村に衛兵はいないのぅ〜」
「梅雨は比較的、畑仕事ないはずだし誰か雇えないかな?」
「流石に狩りした後に運んでいくのはめんどくさいです。」
「雨の中運びたがる奴がおるかのぉ?」
「くっ…」
「小屋を建てる前によく考えてやめておけばよかった。」
「しかしもう建ててしまったの…」
「まぁ…毎日じゃなくて数日に一回で良いし、もしかしたら食蟻獣が何処かに行ってしまうかもしれないし…」
「居ついてしまったら頑張るんじゃぞ!」
「終わった。…」