錬金術の基礎
〜雨の日の朝〜
「今日は雨ですね〜水汲みはしましたけどお洗濯や畑仕事、弓の練習はできませんね。」
「そうじゃの〜たまには休日にするかい?」
「それもいいですが、何か家でできる勉強がしたいです。」
「ふむ。…うーん冒険のお話もだいぶしてあげたし、…そうじゃ、錬金術の勉強をしていこうかの。」
「おぉ?そういえばそんなものもありましたね!待ってました!」
「ちと材料と道具を取ってくるから待ってなさい」
「はーい」
「道具は…まぁ簡単な物じゃ。乳鉢と乳棒、レトルト、焼炉そして完成したものを入れるポーション用小瓶。他にも道具はあるが今はこれしかない。」
「ポーションと言っても薬は大まかに2種類に分かれる。何かわかるか?」
「回復させる薬と毒?」
「そうじゃ、その二つを作る目的がある」
「まず道具の簡単な使い方じゃが…材料を生で使ったり乾燥させて使う場合など何を作るかによって用い方が違う。」
「例えば回復用のポーションを作る場合、乳鉢と乳棒を使って材料を細かくすりつぶしそれを精製した水もしくは聖水と混ぜ合わせレトルトで蒸留しそれを冷やしてできたのがポーションとなる。」
「逆に蒸留をせずに成分を煮出した水薬とスライムの体液をほどよく混ぜ合わせ軟膏にしたものなどが市販に取引される薬として使われている。」
「へー…ん?私が怪我した時は先生が回復魔法をかけてくれたんですよね?」
「もちろん回復魔法も使ったけど大部分はその軟膏を傷に塗っていたぞ?」
「…」
「そういった形で魔物体の一部も薬の材料になるんじゃ。」
「魔物からすれば人間なんぞただの食料かもしれんが人間からすれば魔物は憎い敵であると同時になんらかの恵みをもたらすモノでもある。倒せれば…の話じゃがの。」
「なるほど。弱い魔物相手でも堅実に働けばそこそこ食べていけそうですね。」
「それは主に錬金術師の特権じゃな。」
「長期で雇用されてギルドや国のお抱え錬金術師なんかもおるし、様々じゃ。」
「だけど誰しもはじめから恵まれた環境にいるわけではないので下積みの中で採取中に魔物に襲われて死ぬことも多々ある。貴族の子が錬金術師になるのならそうでもないだろうが魔物に対応できるだけの戦闘力を身につけるか、一人前になるまで幸運にも死ななかったか。どちらにせよ錬金術師として名乗れる人はさほど多くない。」
「そもそも魔物に対応できるだけの戦闘力があるのならお金になるダンジョンに行くし、地域ごとの討伐依頼をこなしたりする。それでお金になるんだからまたわざわざ一から勉強し直して錬金術師を目指す人は少ない上に、文字の読み書きができなければそもそも錬金術師にはなれない。錬金術の本は魔道書並みに高いものじゃから良い効果が載ってる本なんか立派な馬車が買えるほどの財産が必要じゃ。盗まれればそれで終わりだし、なかなか財力がないと大変なんじゃよ。」
「リアルすぎて夢も希望もないですね。」
「じゃからワシが教えられるのは中級程度の薬までじゃが…中級の薬の材料がそこそこ強い獣や魔物の材料を使うことが多く何より中級薬以上は中級魔核かそれ相応の量の下級魔核を使い作る必要があるからパーティーをくんで挑まないと一人でどうこうできるものじゃないんじゃ」
「だから一般薬と下級ポーションまでしか作りかたを教えてやれないんじゃよ。」
「それでも教えてもらえるだけ私は恵まれてますよ。先生。」
「そういってくれると老いぼれの身からすると嬉しいのぅ」
「今教会にあるもので作れる薬は体力回復ポーション程度じゃな。」
「これはあまり需要がある方ではない上に作ってから1日しか効果が無い代わりに野菜や果物から作れるから風邪薬と一緒に作られる感じじゃ。」
「まずこれらの果物を…」
「できた。飲んでみなさい。」
「それでは失礼して…うん。なんかジュースぽいですね」
「果物が多かったし加熱もしとらんからの。錬金術というかただのジュースじゃ。」
「…」
「美味しいからいいですけど、錬金術じゃないじゃないですか〜」
「なっ…何をいう!ジュース一つとっても調合と使う材料で大きく美味しさが変わるんじゃぞ!」
「あれ?これ体力ポーションじゃなかったんですか?」
「このジュースはうまいのう…」
「…」
「じゃがこれこそが錬金術の基礎中の基礎なんじゃよ」
「ジュースが?」
「ジュースが。」
「じゃあわしが作ったジュースをもう一度再現して作ってみなさい」
〜〜〜〜〜
「できました。」
「飲んでみなさい」
「ごく…ごく…」
「…」
「なんか味が違いますね。なんか酸っぱい感じが強いです」
「そうじゃ、わしが作るところを見て同じように作ったはずなのに味が違う。ということは使った材料が違うか使った部位が違うか、そして味が違うということは効果も微妙に異なるということじゃ。」
「なるほど。意外とジュース一つでも奥が深いんですね!」
「そうじゃ。なんていったって錬金術の基礎じゃからな。」
「意外と奥が深かった。」
「あ、自分で作ったんじゃからその酸っぱいの全部飲みなさい。わしは自分で作った方を飲むから。きちんと作ったんじゃから飲まないともったいないだろう?」
「え!?」
「あぁ…ああああ…わかりました。」
「うーん甘くて美味しいのう…」
「酸っぱいです…。」




