第6話 冒険者ギルド
商業ギルドの後は、冒険者ギルドに来た。
家の周りの護衛をお願いする予定である。
寝ているときはどうしても無防備になってしまうからね。
冒険者ギルドは、商業ギルドが華やかとするなら、ガヤガヤとした雰囲気が外からも感じられた。
看板には、盾と剣のマークが彫られてあった。
ドアは開けっ放しのようで、外にまで騒がしい声が聞こえてくる。
冒険者ギルドへの出入りも頻繁に行われており、小さい子供なら10歳児くらい、そして、60歳くらいの見た目のご老人もいた。
男8割女2割といった具合だろうか。
こちらも友達の情報であるが冒険者とは、主にモンスターを討伐し、それを冒険者ギルドなどで換金するものを言う。
冒険者ギルドに登録しなくても、モンスターの金になる部位については換金をしてくれる場合もあるが、手数料を多めにとられたり、換金してくれない場合もある。
そして、冒険者は、モンスター討伐以外にも薬草採取や公衆トイレの掃除、依頼主の家の掃除など、採取や雑用をこなすこともある。
そのため、身寄りのない孤児などは薬草採取や雑用などで、お金を工面することが多い。
また、どこかのパーティーの荷物持ち(ポーターという場合もある)として、仕事を行ないお金を得るものも多い。
だが、荷物持ちは馬鹿にされることが多くお金を支払われなかったり、モンスター討伐の際に囮にさせられたりといった悪い点も挙げられる。
まぁ、こんなところだろうか。
正直、友達に資料を見せられながら冒険者について説明されたけど、10000字はあったよ。
魔法使いは貴族が多いとか。
同じ村出身の幼馴染などがパーティを組んで冒険者を始めることがあるとか。
男1人で、女複数などの通称ハーレムパーティーは小説の序盤で亡きものにされるとか。
野宿のテントで『アンアン』といった性的行為もすることがあるとか。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
女の子の謝る声が聞こえた。
「役に立たなかったんだから、報酬は無いに決まってんだろうが。あぁん?」
イカツイ男(イカ臭い男じゃないよ?)が10歳くらいの女の子に罵倒を浴びせていた。
酒が入っているようで、顔が赤い。
周りにいる男や女も遠巻きに見ているだけで止めに入る気はないようだ。
冒険者ギルドにいる者の顔をスマホで撮影した。
能力値を見るためだ。
友達から異世界物の小説では、冒険者ギルドで絡まれるのがお決まりのテンプレと聞いている。
そして、受付窓口で他の列には並んでいるのに、誰も並んでいない列があり、そこに男が座っていたら、大抵の確率で冒険者ギルドのギルドマスターというのも定番らしい。
撮影した者達のステータスを確認する。
えっーと、なるほど。
友達の言っていた通りになってしまった。
ギルドマスターが定位置とやらにいた。
ギルドマスター通称、ギルマスは、暴言を吐かれている女の子の様子を見ているが助けに入る気はなさそうだ。
受付の人たちや後ろで事務仕事かな?書類をぺらぺらと捲っている人たちも、我感せずを貫き通している。
まるで、日常茶飯事かのような対応だ。
「どんくせぇんだよ。さっさと消えろ」
イカツイ男と同じ席にいた男が、女の子を蹴り飛ばした。
ちょうど近くに立っていた俺の元へと女の子が飛んでくる。
目の前で受け止める形になった。
よいしょっと、
「大丈夫?」
「はい。すみません。ありがとうございます」
女の子は、申し訳なさそうにお礼を言う。
女の子の見た目は、ボサボサの茶色の髪で長さはボブくらい。
顔は小さく、くちびるの右下にあるホクロが色っぽい。
栄養が足りていないのか顔の血色は悪い。
身長は130cmほどである。
洋服はボロボロで、くつは履いていなく素足だ。
「おっさん。俺に攻撃してきたね」
女の子の頭を優しく撫で後ろに下げる。
「あぁん?俺がいつお前に攻撃したっていうんだよ」
女の子を蹴り飛ばした男が反論してくる。
「この子を蹴り飛ばして、俺に当たった。攻撃したと言えるだろ」
俺は、睨みを利かして男を見る
「舐めてんじゃねぇぞ」
男が立ち上がり、俺になぐりかかろうとしてきた。
右手で受け止め、左手で腹をグーパンする。
「ぐはっ」
グーパンしたあと、直ぐに後ろに下がった。
男が、飲み食いしていた物を口から吐き出す。
床に、それがぶちまけられた。
「おい、貴様、俺の仲間になんてことしやがる」
男のパーティーであろう残りの2名が立ち上がり、足元においていた武器を、手に取り俺に向かって斧と槍を振りかざしてきた。
「てめぇ覚悟しろよ」
男等は、俺に怒鳴ってきた。
華麗に交わす。
大きく避けると女の子にあたってしまう恐れがあるため、女の子に当たらない距離を保つ。
「すみません。冒険者ギルドの偉い人はどなたですか?」
笑みを浮かべながら、ギルドの受付の方へ目を向ける。
誰が、このギルドで一番偉いのかは分かっているのだが、知らないふりをして聞く。
一通り見たあとに、ギルドマスターに目を合わせる。
「俺だが、どうした?」
「この人たち、武器で襲ってきてるんですけど、殺しても良いんですか?」
言質をとる。
言質とは、あとで証拠となる約束の言葉という意味のはずだ。
もし、間違って殺してしまって、街の騎士に捕まったりしたら堪らない。
異世界に来て2日目に牢獄行きとかは勘弁被りたい。
「あぁ、騎士が来るまでの間なら殺しても問題ない。本来、街内での殺傷はご法度だが、騎士が来るまで避け続けるというのは難しい場合もあるからな」
しっかり、言質を取ることに成功した。
「じゃあ、遠慮なく。アイスフォースランス」
ギルドマスターからサーファさんのお母さんサーナさんにモデルチェンジをした。
ギルドマスターは因みに豪拳術を所持していた。
知識をみてわかったのだが、拳術の上位みたいだ。
先程の、俺の使った豪拳術の動きを見て大丈夫だと思ったのだろうギルマスは、俺とこいつらの戦闘を止めないのだろう。
友達に聞いていた情報だと、武器で襲った瞬間、ギルマスが止めに入り、訓練上かなんかに連れて行かれ、殺傷はなしの決闘が行われるはずだ。
アイスランスは、氷でできた槍のようなもののようである。
4つ展開した。
男等2名の両足に1本ずつ刺す。
これで歩けないだろう。
「氷魔法だと……」
「いてぇぇ。いてぇよ」
アイスランスが刺さった足から血がにじみ出てきた。
「さぁ、どうしよっかなー」
多分今の俺は悪い顔をしていると思う。
どっちが悪者か分かったもんじゃない。
俺が、次のアイスランスを空中に出現させると、待ったがかかった。
「すまんが、この男たちは身動きが取れない状況だ。この状態だとお前に害を与えることはできぬと判断した。そのアイスランスを消滅させてくれ」
ギルドマスターは、俺の元まできてそんなことをいう。
「分かりました。ですが、この者たちが今後、あの子に危害を加える可能性についてはどのように考えていますか?」
そうなのだ。多分ここで亡きものにしておかないと、女の子に被害が及ぶ可能性もある。
不安要素があるのなら排除すべきだ。
「それなら、大丈夫だ。本来、街での武器の使用は認められていない。それを破れば犯罪奴隷落ちにさせられるのが通例だ」
「分かりました。この者たちから、武器を使用してきたのでこの者たちは、奴隷に落ちるということですね。因みに、俺はどうなりますか?」
「正当な防衛と周りの者が認めれば処罰はないだろう。その点については、俺がきちんと騎士に伝えるから安心して大丈夫だ」
「それでしたら、アイスランスのこの者たちへの殺傷は止めますね」
アイスランスを床に向けて放つ。
一度出してしまったものは消せないからしょうがないよね。
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