第16話 サーファの話①
【早川 歩との出会い】
「演劇楽しかったです。私もあんな出会いがないでしょうか?ゴブリンに捕まって貞操の危機に落ちいった際に颯爽と白馬に乗って舞い現れる王子さま」
「お嬢様、あれは物語の話ですよ」
一緒に馬車に乗っている護衛の男性騎士が日常に戻らせるようなことをいいます。
「それは、分かっていますが夢見ても良いじゃないですかー。うぅ、それにしてもお腹が痛いです。女の子の日は大変ですね」
生理は辛いです。
「お嬢様、そういうことは表立って言わないほうが」
先ほどとは別の男性騎士の方がそんなことを言ってきますが、痛いのは痛いのです。
男性には分からないでしょうが。
こう、子宮を鷲掴みにされるような痛みなのですよ?
私の女の子の日発言に顔を真っ赤にしている新米の男の子騎士。なんか、可愛いです。
「それにしても、今日はオークに遭遇することが多いですね」
「そうですね。何故でしょうか?」
危機的状況にまで陥っていませんが、定期的に馬車の前に現れますのでその都度止まって対処しなくてはなりません。
困ります。
生理中は魔法に集中できなくて本来の威力が出せないのですのに。
それに、何故か、正面や左右後ろから現れてきますので、戦力がバラけてしまい、騎士や私の疲労が溜まってきています。
「オーク5体、前方にいます」
遠くが見える遠視スキル持ちの騎士が教えてくれます。
「止まって討伐致します」
☆☆☆☆☆
「わっ」
目を覚ましました。
どうやら、気を失っていたようです。
足を滑らせて頭を何かにぶつけてから記憶がありません。
隣に倒れるように寝ているロムンを揺らし起こそうとしましたが、起きてくれません。
触ってみて温かいことから生きていることは分かります。
それにしても、外が静かですね。
オークの討伐に成功したのなら、騎士の方々が私やロムンのどちらかを起こすはずですのに。
外を見てみましょうか。
オークが潜んでいるかもしれないのでゆっくりとあまり音をたてずに馬車内の御者席へと出るカーテンをめくりました。
ひとりの男性の後ろ姿が目に入りました。
ガラス製のようなコップから水を出し木の箱に入れ、馬達に飲ませていました。
その様子を見る限り悪い人ではなさそうです。
一応水魔法で流し飛ばす準備だけはしておきましょう。
「あのー」
私の言葉に一瞬ビクッとしたあとに振り向いた男性の髪は茶髪で、目の色は黒色。
見慣れない服を上下似たような素材の物を着ていました。
悲しきながら、護衛の人たちは生きているものはいないようです。
「あっ、起きましたね。どうですか?痛いところとかないですか?」
私の心配をしてくれました。
私の存在を知っているということは、馬車内を見たようですね。
「はい。痛いところはないです。あなたは誰ですか?」
「俺は通りすがりの旅人?です」
何故か、自分がどのような人間なのか理解していないような口ぶりで旅人と教えてくれました。
不思議な人ですね。
「おっお嬢様?ご無事でしょうか??お嬢様」
ロムンがやっと目を覚ましたようです。
「ロムン!私は大丈夫よ。あなたは大丈夫?ケガしてないかしら?」
慌てて私を探す声と音がしたので、急いで馬車内に顔を出します。
「ロムン。護衛の方たちは亡くなってしまったみたい」
ロムンに外に、人がいることを伝えて馬の近くにいる男性まで歩きました。
周りに転がっている鎧を着た者たち、そして、息絶えているオークの山をみたロムンは
「あなた様が私達を助けて下さったのですか?」
の男性に聞きました。
「まぁ、そうなりますね。モンスター達を倒したあと、馬車の中を見て2人が気絶しているようでしたので起きるまで外で待ってました」
なんと、紳士な方なのでしょうか?
眠っている私を捉えて親から身代金をとったり他国の奴隷商に売りでもすれば子爵家の私でも大金が手に入ることでしょうに。
「ありがとうございます」
私は男性の手を握りお礼を言いました。
男性は私よりも身長が高いので見上げるような感じになります。
「どういたしまして」
そう言う男性は何故か私の目ではなく視線を下に下げています。
それにしても、お礼をしないといけませんね。
「あの、お礼をしたいので屋敷まで一緒に来ていただけませんか?」
☆☆☆☆☆
オークや護衛の者たちを男性がブレスレットに収納したあと馬車に乗せました。
収納魔法や収納バッグというものがありますがで、男性が持っているブレスレットタイプのは初めて見ました。
普通はバッグタイプやたまに見かけるズボンにつけるポケットタイプが主流です。
男性の名前はアユム・ハヤカワと言うみたいです。
家名があるということはどこかの貴族の可能性がありますね。
3人で御者台に座り、男性は風魔法を使い、街までに現れるモンスターを次々に討伐してくれました。
男性は、風魔法を使う前に手をモンスターの方に数秒だけ向けていました。
何故でしょうか?
20分ほど話をしたでしょうか、私のことや家のことを話しました。
私が子爵家の娘であることを告げましたが、色眼鏡で見てきませんでした。
アユムさまは、子爵家よりも上級貴族である可能性がありますね。
街の外壁が見えてきました。
「アユムさまっ。到着しました」
「へぇー、思ったよりも大きい」
そうなのです。
私の家は子爵家なのですが、父母の国への貢献が凄まじいため、お金にはあまり困っていないと聞いています。
そのため、街に入る際の通門料も他の街に比べて低額であり、税金も免除にしてあるものや低く設定しているものも多数あります。
そのため、人がこの辺境の街ながら集まっています。
まぁ、都心部の街に比べるととても人は少ないのですが……
「サーファ様、お帰りなさいませ」
門の入り口近くにいた男性騎士が馬車にいる私へと声をかけます。
「はいっ。ただいま戻りました」
私の隣にいるアユム様を見た騎士は怪訝な顔をしています。
「帰ってくる途中にオークに襲われてしまい、こちらにいるアユム様によってなんとか、ここまで辿り着けました」
アユム様のことを紹介します。
周りにいた騎士5名全員がアユム様に頭を下げました。
お読みいただきありがとうございます!