第14話 まほまほ店『マホルティ』
「商業ギルドに行ってきます」
掲示板に、アパートンの従業員の雇用について掲載してもらっていたが、今日が面接日だ。
この7日の間に、ルーナちゃんと一緒に、洋服を作った。
裁縫術を持っているので適材適所である。
「はーい」
「気をつけて行ってらっしゃいませ」
ルーナちゃんとシェルトさんからの言葉を受けアパートンの門を潜った。
「あっ、ハーブの水やりよろしくね」
花壇担当のルーナちゃんに、しっかりと水やりをするように念を押す。
この異世界では、あまり栽培が上手くいっていない。
街中などでのハーブや香辛料などの栽培は本来森などに生息するものに比べて品質がかなり悪い。
魔力回復ポーションやケガを治す治癒ポーションなども、森などから採取したほうが品質もよく効果も高く持続力も長い。
「分かりました。しっかりと、このウォーターブラストの水で水やりを行ないます」
「うん。よろしくね」
水の魔石を組み合わせ作られてあるマジックアイテム、ウォーターブラストは、水の魔石の魔力が消え使えなくなった場合は、取り外してから新しい水の魔石を装着すれば、繰り返し使用可能だ。
値段も、マジック○○の中でも、低価格の10万円。
そのため、マジックアイテム屋の『まほまほ店』で購入した。
この店は、日常に役立つものが多く売られてあった。
掃除機に似たようなものもあり購入した。
原動力は、殆どが魔石を使うため、購入した後も継続的に費用がかかるが、モンスターを討伐できる俺にとってはなんの問題もない。
「おはよう」
ご近所付き合いも良好で、よく声をかけてもらえる。
「おはようございます。今日も天気が良いですね」
隣の店は、『まほまほ店』だ。
紫髪背中まで届くストレートの長い髪をしている笑顔の凛々しい23歳の大人の女性である。
モンジェネの時は、新しいマジックアイテムの作成に集中していたらしく、辺りの騒がしさに気づかず中央広場に避難などしなく、この自宅兼職場にいたらしい。
「良すぎて、まだ5月なのにあついくらいだね。あっ、新商品作成したんだけど、どうだい、見ていくかい?」
「用事が入っているのでまた後日お伺いします」
新商品がどんなのか気になるが、面接時間が迫ってきている。
「りょーかい」
まほまほ店の店主、マホルティさんは、鳥の羽のようなハタキのマジックアイテム『ハタホコ』を使い、テーブルなどのホコリを吸い取っていた。
「邪魔なんだよ」
俺の前を歩いていた5歳くらいの男の子と手を繋ぎ歩いていた母親であろう女性を蹴飛ばすフライパンなどを背中に背負っている男性。
「すみませーん」
ゆっくりとした声で謝る女性。
男の子はママだいじょうぶー?と聞いていた。
優しい男の子だ。
「大丈夫ですか?」
女性の方まで走って声をかけた。
「はいー。大丈夫です。ありがとうございます」
俺の言葉に笑顔で対応してくれた女性は商業ギルドへと入っていくようだった。
男性に蹴られた背中を擦っていたので、こっそりと回復魔法をかけておいた。
☆☆☆☆☆
「おはようございます。アユム様、皆さん、あちらの部屋でお待ちいただいております。会議室203です」
サラリとした髪質のラナフィアさんが俺に、気づいたようで、面接を行う場所を教えてくれた。
今日は、初めてあった日と髪型が違いポニーテールにしており、動くたびに揺れるポニーが可愛かった。
「ありがとうございます。お願いがあるのですが……」
「はい。何でしょうか?できる範囲のことであれは行いますよ?」
俺が龍人様と呼ばれることになったのを普通の住民は知らない。
が、情報が命とも言える商業ギルドの人は俺のことだと知っているみたいだ。
参加していた冒険者や騎士などは知っているが住民は知らない。
ちらほらと、龍人様がいると言う話が出回っているようだが、本名が知られていないことなどもあり、大事にはなっていない。
それよりも、ドラゴン(龍)が現れ、この街を救ってくれたことで街中では大盛り上がり、領主への支持も高まっている。
どうやら、領主であるファルトさんの妻が説得したということになっているようだ。
「面接に来ている人たちに、何か飲み物を出していただけませんか?お金は払いますので」
ブレスレットから、大金貨(10万円)を1枚取り出し手渡す。
「はい。大丈夫ですが、何故でしょうか?」
「特に意味はないですよ。緊迫した感じの面接じゃなくて、ゆったりとした感じで進めたいなーと思っているだけです」
お読みいただきありがとうございます