第11話 モンジェネ西門②
きっかり、20分後にゴブリンキングが現れた。
「ワレ、オマ、エ、タオ、ス、ユルサ、ナ、 イ」
「放て」
弓を手に持った、冒険者達が火の矢をゴブリンキングに飛ばす。
俺は、ゴブリンジャックに切り替えて炎魔法をキングに向けて唱えた。
炎魔法は火魔法の上位魔法である。
「ギャア、モ、エル、ワレ、モエル」
ゴブリンは、脂肪の固まりみたいなもので、燃えやすい。
このままでも死にそうだが、念には念を入れておこう。
「サーファさん、ハードウォーターお願いします」
「ハードウォーター」
サーファさんが魔法名を唱えると、大洪水の様な水がゴブリンキングだけでなく辺り一面やな広がっていき水浸しになった。
「サーナさん、お願いします」
「はいっ、承知しました」
氷のツブテがゴブリンキングの周りにも広がっていく。
急激にゴブリンキングの体温は下がっただろう。
ゴブリンキングは急な温度変化で鼻水を垂らしていた。
「アイスハンドレッドランス」
細かい100本物、氷の槍が俺の周囲に現れる。
「それって……」
サーナさんの十八番でとどめを刺すことにした。
今回のモンジェネ、数が多すぎて、ゴブリンキングに辿り着くまでに魔力が限界値まで行き使わずじまいのサーナさん。
「消えろ」
ゴブリンキングを365度から串刺しにする。
『バサッバサ』
と、空中から翼の音が聞こえてきた。
赤色のドラゴンと青色のドラゴンが空を飛んでいる。
「ドッドラゴンだー」
「にっにげろー」
「もう終わりだー」
「ママー」
なんか、マザコンのような声が聞こえてきたが、今は放置しておこう。
スマホを手に取り、ドラゴン2種を撮影する。
早速、赤色ドラゴンにモデルチェンジをした。
このドラゴン500歳のようだ。
やっと成人したドラゴンらしい。
ドラゴン火炎魔法を使うようだ。
強さは、火魔法〈火炎魔法〈ドラゴン火炎魔法
の順番のようだ。
飛べるモンスターにモデルチェンジしても、飛べない。
俺には羽や翼がないからだ。
そのため、風の妖精にモデルチェンジしても飛べなかった。
このドラゴン達は、モンスターの大群と人間との戦いをお酒のツマミにして楽しんでいる最中のようだ。
「おーい」
ドラゴン2種に向かって手を振って呼んでみた。
「アユムさま、なんてことしてるんですか?ドラゴンを呼ぶだなんて」
サーファさんは、目眩がしたようでクラーっと体勢を崩した。
「どうした?小童」
「どうした?弱き者よ」
ドスンと音がして、地面に降り立つ。
ドラゴンたち。
ドラゴンの降りた場所はかなり凹んでいた。
ここ、街に繋がる通路なのに、補修が大変そうだ。
「こんにちはー!どうでしたか?俺の戦いかた」
「おー、良かったぞ。小童にしては良い出来だった」
「弱き者の戦い方だな。弱点をつくとはな」
「お褒めいただき感激至極でございます」
おふざけモード突入だ。
「東門南門北門でも、まだ戦いが続いているのですが、東門のゴブリンキングとオークキングが美味しそうなお酒を飲んでいました。ドラゴンさまは、酒がお好きだという情報がありますが、そちらに向かわれてはどうでしょうか?」
「それは、誠の情報だろうな?小童」
「弱き者よ。嘘であったならば消すぞ?」
「嘘なんかつきませんよ。それで、相談なのですが、お酒を用意させていただきますので、残りの東南北門の戦闘にご助力お願いできませんか?」
「まぁ、良いぞ。戦闘は、お前らで楽しめたからな。お酒が優先だ。しっかり用意しておけよ小童」
「弱き者よ。用意できなかった場合、街ごと消すぞ」
「げっ!マジですかー?頑張って、かき集めておきます」
ドラゴン2種に敬礼して見送る。
『バサッバサ』
と飛び立つ音がしてから、離れていった。
風圧が半端なかった。
「はふぅー。生きた心地がしなかったです」
サーファさんが、声を発した。
周りにいる騎士や冒険者達は、皆腰が抜けて座り込んでいた。
ドラゴン2種の、威圧スキルの上位スキル脅圧スキルのせいだろう。
さっきのドラゴンは漢字で書くと龍と表せれる。モンスターランクSS以上のドラゴン。
本来、ドラゴンスレイヤーの称号が得られるドラゴンは、竜と表記されるようだ。
因みに、AかSランクのドラゴンを討伐しないと、ドラゴンスレイヤーはつかないようである。
「あっ、ちょっと待って。ドラゴン2種が、残りの門のモンスター倒しちゃったら、撮影できないじゃん。急ぎ向かわねば」
でも、脅圧から抜け出せていない周りの人たち。
口は動かせるが身体は動かせないようだ。
「よし、ドラゴンフレイム」
ドラゴン火炎魔法の初期魔法を使い、辺り一面を燃やし尽くす。
これなら、残党のモンスターの心配もないだろうと、ここにいる者も安心できるはずだ。
「アユムさま。口から炎が。龍人族様だったのですか?」
人に変化できる龍のことを龍人族というらしい。
この異世界の魔王と人との戦いに際し、不意に現れ助けたこともあり、龍人族のことを様付と呼ぶようだ。
だが、その姿を見たものは、今生きているエルフでさえも居らず、お伽噺として伝えられている。
皆、俺に完全に注目していた。
「違いますからね。俺、普通の人間ですからね」
「サーナさん。身体が動くようになったら、良質のお酒をお願いしますね。ドラゴン2種にお渡ししないと、大変なことになっちゃいます」
俺の言葉に、顔を真っ青にして頷く。
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