第10話 モンジェネ東門②西門①
「よいしょっと。ドーン」
ゴブリンキングを自身に反映させた。
ハンマーは持っていなかったので、支援物資から1番大きなハンマーを拝借した。
いったい誰が使うんだよ。これ、家壊せるんじゃないか?
という具合にドデカイハンマー。
ゴブリンキングの所持スキルは、統率者・戦槌術(ハンマースキルの上位スキル)に、氷魔法だ。
かなり強い。
魔法が使えるのはやばい。
エリアーナさんの、知識には魔法が使えるゴブリンキングはいなかった。
でも、悪いことばかりではない。
知られざる弱点も分かった。
あと、このゴブリンキングの攻撃時の癖も。
ゴブリンは、火に弱いのは、冒険者の常識らしいが、どうやら、寒さにも弱いようだ。
肥満体型のくせして笑笑笑
火魔法の後に水魔法で攻撃すれば3倍のダメージになるようだ。
「伝令、西門、苦戦中。至急応援求むとのことです」
馬に乗って騎士がやってきた。
ギルマスを通り越して俺に言いに来たってことは、ギルマスの差し金だろう。
俺に動けと。まったく、人使いが荒い。
俺、この異世界に来て、2日目でハードモードだと思うんだけど。
「了解です。ゴブリンの弱点判明。寒さと暑さに弱い。温めて冷やせば3倍のダメージと各門の大将にお伝えください」
「はっ!!」
男性の騎士は、そう言うと馬にムチを打ち駆けて行った。
「西門って、真逆じゃね?」
「あー、そうだ。任せたぞ」
いつの間にか、近くまで来ていたギルマスが俺の肩に手を乗せてから言う。
「分かりました。行ってきます。ギルマス、ゴブリンキング、氷魔法と戦槌スキル持ちです。やばいですよ」
ギルマスの肩に俺も手を置いた。
お返しだ。
「げっ!マジかよ。俺、魔法使う奴苦手なんだぜ」
うんっ!知ってる。
まぁ、頑張ってね
「西門ある程度片付いたら直ぐに戻ってきますので、頑張って下さいね笑」
最高の笑顔で言ってやった。
「しゃーねぇよな。まぁ、キングまで到達しねぇように頑張るぜ」
☆☆☆☆☆
一旦、本来の自分に戻って歩術で空を飛ぶことにした。
ファミレスのグラスレモンスカッシュを飲んで喉を潤す。
街の中央付近の広場には街の住民達が集まっていた。
避難しているのだろう。
西門に到着した。
直ぐに、サーナさんに自身を反映させ、門の近くまで来ているモンスターをアイスランスで討伐した。
「戦況はどうですか?」
西門にはサーナさんにサーファさんが戦っていた。
ふたりとも辛そうだ。
魔力切れを起こす一歩手前だろう手が震えていた。
「厳しいです。救援感謝します」
厳しいとは言っても、残りのモンスターの数は、俺がさっきまでいた東門よりも少ない。
押されているが、討伐した数は多いのだろう。
辺りには、ゴブリンの山々がある。
「いえ、間に合ってよかったです。サーナさん。心臓1突きとは凄いですね」
アイスランスで近くのモンスターを倒しながら話しかける。
モンスターの殆どが、アイスランスで指したろだろう心臓辺りにぽっこりと穴が空いていた。
氷が溶けて、亡くなったモンスターは濡れている。
サーファさんは、水魔法でモンスターを追い返して時間を稼いでいるようだ。
決定打には至っていない。
「サーナさん、氷魔法ってアイスランスみたいに硬く鋭いものだと魔力の消費量が大きいですよね?冷たさ重視で広範囲に発生は可能ですか?」
可能であることは知識を読み取っている為に知っているが聞いておく。
「はい、大丈夫です。それなら魔力の使用量はかなり減ります」
「サーナさんも大量の水を広範囲にできますか?」
「はい、アユムさま。大丈夫です」
「じゃあ、自分が時間を稼ぎますので、それまで、ポーションを飲んで魔力の回復に努めてください」
「はい」
「分かりました」
少しの間、切り替えを解除して空を飛んだ。
空高くまで飛んだ。
モンスターの西門の数は全部で残り400のようだ。
地面に着地したあと、再度ゴブリンキングに切り替えをした。
東門から飛び立つ前にブレスレットに収納しておいた大きなハンマーを取り出す。
それを軽々と振ってみせる。
「よし、10分はいけそうだ。皆さん、休んでて大丈夫ですよ?」
ハンマーで次々と叩き潰す。
あの、ゲームセンターにあるなんとか叩きとか言うゲームのような感覚である。
西門のボスには、ゴブリンキングしかいないようだった。
メスのゴブリンを侍らせていかがわしいことをしている真っ最中だった。
とりあえず、顔だけ撮影した。
西門ゴブリンキングのスキルは、体力増加、豪拳術、性欲増加だった。
魔法は覚えていないようだ。
体力増加に性欲増加って、正にいかがわしいことをする為に生まれてきたようなもんだな笑
「アイストゥエルブランス」
ゴブリンキングの周りにいた、ゴブリンプリンス、ゴブリンナイト3匹、メスゴブリンの心臓に1本ずつ放った。
ゴブリンキングには、残りの6本を両足に3本ずつ。
「グキョギャー」
「グガグガ」
ゴブリン達の悲鳴が聞こえる。
「キ、サマ。ヒキョウナ。カクレ、テマホ、ウデコ、ウゲキダト」
カタコトながらゴブリンキングは言葉を発してきた。
理解できる。
「じゃあ、門の前で待ってるね。ばいばーい」
ゴブリンキング以外が生き絶えたことを確認してから、冒険者B 俊足スキル持ちに切り替えて西門に戻った。
「顔色良くなってきましたね」
冒険者Bから本来の自分に切り替えなおして、歩術で気配を消して帰ってきた。
成功した。歩術奥が深い。
「あっ、アユムさま。はい。大分良くなりました。10分経過しても戻ってこないから、助けに行こうかと準備していました。良かったです。無事に戻ってきてくれて」
気配察知持ちのシェルトさんに切り替えて、ゴブリンキングの動向を確認する。
ゆっくりだが、歩いて来ているようだ。
「残り、ゴブリンキングのみなので頑張りましょう」
「はへっ?」
「はひっ?」
サーナさん、サーファさんから、似たような驚きの声が上がった。
周りにいる冒険者達も怪訝な顔で見てくる。
「まぁ、騙されたと思って、皆さん、戦う準備だけしてください。多分、後20分後にここに来ますよ。それにしても、ゴブリンキング歩くの遅いですね」
お読みいただきありがとうございます