ヒロインってまさか!?
「っクソ、あいつどこに逃げやっがったんだ。北海道」
「……え!?」
「というわけで空港へやって参りました」
しかし勇者は相変わらずの裸にスニーカーである。もちろん、持ち物検査で引っかかった。
「えっと……あなたは持ち物が少な過ぎますね」
「デショウネ……っくそ。どうすれば……どうすれば部下の服を奪えるんだ!」
「えっ!? 盗るの前提!?」
勇者は、考えに考え、実力を行使した。
「フッ、これは貰っていくぜ……」
勇者は部下の服を手に入れた!部下の……服だけを……
「アイツ馬鹿だ……Tシャツに靴だけとかwww」
服を手に入れた勇者は、飛行機に乗り込んだ。
「乗れんのね!?!?」
「じゃあな!!!」
「おい、置いていくなぁーーー!」
その時後ろから肩を叩かれた部下は、何時ぞやの光景を思い出す。
「えっ、待って待って、嘘でしょ、下は履いてるし! おい! 履いてるし!」
部下は警察に捕まった。勇者は窓からそれを眺めて大笑いである。
「アイツ目ぇ良すぎだろ!」
見られていることが分かっている部下も部下であるが。
「フッ、アイツ今から牢屋かなww」
その時、勇者にも危機が迫っていることは、この時は誰も知らなかった。作者の私以外は。
「お隣宜しいでしょうか」
隣席を求める女性の声に、勇者はモテ期が来たかと淡い期待を抱いたが……
ズゥウウウウウウウム……
「……え?」
勇者は恐る恐る隣に目をやり、一度前を向く。そして即座に二度見、三度見……
そこには、魔王が座っていた。
「あ、あれ……? あはは……あれぇ!?」
魔王の方も今更勇者に気づいたようで、魔王は魔王で気まずそうな顔をしている。
「あ、ど、どうも……」
「こんにちは……」
「「……」」
何とも言い難い雰囲気に、両者のHPはどんどんと減っていく。そんな中、先に動いたのは魔王だった。
「あ、あの……私、トイレへ行って来ますね」
もの凄い地響きとともに、魔王は席を立ち、トイレへと向かっていった。その隙に勇者はそそくさと席を変える。
「ふぅー、まさか魔王がいるなんてな」
魔王が北海道へ向かうということは知っていたが、まさか同じ飛行機に乗るとは。
「っていうかズゥウウムつって座ってたけどよくこの飛行機飛べてんなぁ」
そう言い、笑っていた勇者だったが、彼はこの時、重大なミスを犯していた。
「ふぅー、まさか勇者がいるなんて」
再び地響きとともに隣に座った「ヤツ」の事は、もう見なくても分かる……最悪の事態だ……
「あ、ど、どうも。またとなりですね」
「あっ、えっ!? あっ、ごっ、ごめんなさい私っ……」
「い、いえいえ、そんなあなたが謝る事なんて何も……」
「「……」」
今の二人の心情は一つ。
「うわぁああああああああ」
二人の「運命的」なこの不運は、飛行機から降りるまで続きそうだ。だが、そう思ったのも束の間、勇者と魔王の隣席の恐怖は、思わぬ形で終わりを迎える。
突然、窓を破り機内へと入ってくる物陰。勇者の目の前を通り過ぎたそれに、彼は見覚えがあった。
「ん……? 今の部下じゃね?」
そして逆の窓を破り、去っていったソレを見送り、やっと自身の服が無くなっていることに気づく。
「アイツッ! 俺の服を盗りやがったっ!!!」
「あの……私の記憶では、あなたが私の魔王城に来た時、さっきの服を着ていたのはあなたの部下さんでしたような……」
「うっるせぇ!!」
「ひゃっ、ごっ、ごめんなさいっ!」
勇者は部下に怒りを露わにし、魔王は素を露わにして、両者混乱状態である。ただ、混乱しているのは二人だけではない。
「おい、今の衝撃はなんだ!?」
「機長! 何者かによって窓が破られ、機内の気圧が急激に下がっています!」
「嘘だろ!?」
機長と副機長も何が起こっているのか全く見当がつかないでいる。更にCAに伝えられた機内の状況に、二人は絶望した。
「割られた窓に……乗客が吸い込まれ、次々と外へ放り出されています!」
「ッッ!!!」
スグに二人は窓の外を見る。そして二人が見たものは……空を舞う乗客の姿だった。
「うわぁあああああああああ! 飛んでるし!?!?」
勇者の部下を先頭に、乗客たちは空をかける。その光景は、実に神秘的であったという。
最近僕に小指が出来、友達に中指を立てられながらバルスと叫ばれます。