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6.決闘

「だったら、一つだけ良いですか?」


私はこの試合が避けられないことを悟って、そう酷く小さい声を漏らす。


「逃げるのだったら、貴女の弟は……」


そこでエリスは弟へと指をさすが、私はそのことでは無いと首を振った。


「私が勝ったら……勝ったらでいいんで、もう一つ酷くつまらないものですが、賭けの対象にしていいですか?」


そうエリスに懇願する私の声は酷く小さくて、


「ふっ、良いわよ」


その声にエリスは、その懇願が私の最後の悪あがきだと思ったのか、嘲笑を浮かべながら了承した。


ーーーその時、彼女はその申し出をどれだけ後悔するのか知ることはなかった。








「始め!」


私の最後の懇願を認めたエリスは、まるで時間を気にするかのように始めの号令をかけた。

その時のエリスの人が来ることを恐れていた。

当たり前だろう。

重ね重ね言うが、私の方がエリスよりも位は高い。

そしてそんな相手の弟を人質にとり、襲わせることは大罪で、このまま私が負けたとしても、エリスも王宮を追放されることとなる。


ーーーだが、アリスの顔には王宮を追放される覚悟など一切浮かんでいなかった。


そしてさらにはエリスは供の者を、あの大柄な男以外付けていない。

明らかにエリスの配下では無い、その男以外。

それは余りにも危険なことだった。

何故ならば、多分男は傭兵か冒険者で、そしてそんな男は隙だらけな女があれば躊躇なく手を出す。

そう、目の前の男が私を抱けると聞いてノコノコとエリスに付き添っているぐらい。

そしてそんな者と2人きりになることを貴族は酷く嫌う。

当たり前だ。

何かあってからでは遅いのだ。

だが、エリスはまるで人に見られるのを恐れるように男と2人きりでここに現れた。

そこで私の頭に一つの仮説が浮かぶ。


ーーーつまり、エリスは私を男に襲わせた後、人を呼び全て男が独断でやったように広めるのでは無いか、という。


その後、恐らくエリスはその後、男を処刑して、私を独断で追放して全てを闇に葬るだろう。

それは自分は何の傷も追わず、私だけを追放しようとする余りにも卑劣な手段。

だが男に襲われた後、私がどれだけエリスを糾弾しても最早何の意味もない。

何故ならば、今の私には婚約者との繋がり以外後ろ盾は一切存在しないのだ。

つまり、私はこの試合を負けて仕舞えば、本当にお終いで、


「あの男の言うことは誰も信用しないだろうし、それじゃあエリスを口止めするだけで大丈夫か」


ーーーだが、私は全くそんなことの心配をしていなかった。


私は完全に勝利を確信して、ゆったりとこちらに歩いてくる男へと目をやる。

確かに、男の身体は大柄だ。

恐らくこの王宮の騎士程度の実力は有しているかもしれない。


「だけど、私の方が強い」


その私の声が聞こえたのか、男はこちらを見て苦笑を漏らす。


「おいおい嬢ちゃん。頭がどうかしちまったか?まぁ、俺はあんたの身体さえまともだったら他は気にならないが!」


男の余りにも下品な言葉にエリスが顔をしかめる。

しかし私は逆に微笑んで見せる。


「残念ながら、私は貴方みたいな下衆が初めては嫌なので、勝たせていただきます」


「っ!」


それは余りにも有り触れた挑発。

しかし、あっさりとその挑発に男は冷静さを失った。


「……言うじゃねえか。殺すことは出来ねぇが、足の一本は切り落としてやるよ」


そして次の瞬間、男は頭まで持ち上げた大剣を真っ直ぐ私の足へと振り下ろした。

ごう、とその質量によって加速した体験は空気を切り裂いて私の足へと落ちてくる。


「っ!」


ーーーしかし、その大剣はあっさりと足を背後に下げた私に避けられた。


「あらあら、振り下ろすことさえ思い通りにできないのですか?」


「このクソあまが!」


そして、その冒険者に私が浮かべた嘲笑にあっさりと冒険者は最後の理性を投げ捨てた。


「っ!殺しては捜索の手がかかる!」


最早殺してはならないと言う、依頼主の意向さえ頭から締め出した冒険者にエリスはそう焦ったように叫ぶ。

強姦でも捜査はされるんですけど……私はそう、余りにも薄っぺらいエリスの考えに呆れる。

しかし、身体は今度は横被りに振り回された大剣に反応していた。

大柄の男の腰、つまり私の胸辺りに向かって振るわれた大剣を私は地面に張り付くように屈んで避ける。


「なっ!」


そして大剣を振り切った格好で固まる男の股間へと膝を蹴り上げた。


「っぅ!?」


男の身体は私の膝蹴りで一瞬宙に浮き、よく分からない声を上げる。

そして私は膝で感じてしまった気持ち悪い感覚に顔をしかめながらも、前傾になった所為で下がった男の側頭部に回し蹴りを放った。

次の瞬間、私の回し蹴りは男のこめかみに吸い込まれるように入り、男は白目をむいて倒れる。

その後、男が起きることは最早なかった。


「なっ!」


そしてその時にようやく、エリスは呆然とした声を漏らす。

彼女は何が起きたか分からないような顔だ私を見つめて、少しの間硬直する。


「っ!」


しかし直ぐに私に背を向けて走り出そうとする。


「がっ!」


だが、私は容赦なくエリスの足かって彼女を地面に転がす。


「さぁ、何方が勝者か告げてください」


そう笑顔で、私はエリスに告げる。


ーーー勝負はあっさりと決まった。

次回ザマァシーンです

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