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歴めろ。  作者: 武田 信頼
第二章:学校動乱編
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第八十話:決戦前夜

大変ご無沙汰しております。


この度、有り難いことにブックマークおよび、評価ポイントを二桁頂きました。

滂沱の涙を流して感謝しております。今後の活動に大変励みになります。。。。。


大変ありがとうございました。






              ※※ 80 ※※




 期末試験も終わり、今や生徒たちは、やり切ったものも悔(く)いを残したものも、あとは運任(うんまか)せにして近々(きんきん)に到来するクリスマスのイベント計画、年末年始のスケジュール調整に余念(よねん)がなかった。

 しかし、年に一度の文化祭――運営委員会として招集されたクラス委員、部や同好会ならびに愛好会の責任者たち、そして生徒会役員は最後の大仕事が残っている。『文化祭決算報告』と『定期定例会』、そこで行われる『生徒会長信任選挙』である。

 当然、推薦された俺も諸々(もろもろ)の雑用係として駆(か)り出され、灼は気持ちよく手伝いを買って出てくれた。それは昼休みのことで――今は、すこぶる不機嫌であった。

 義務でも職務でもない、ただ律義である小柄な少女にまず謝る。


 「すまん。手伝ってもらって……」


 背中を向け、椅子を並べながら答える灼の表情は読めない。


 「……別に。三学年全クラスに配布する冊子『文化祭決算報告書』と全校生徒に配布する投票用紙、各部・同好会・愛好会に配布するプリント『定期定例会のお知らせ』と『部費の出納報告および生徒会執行部・文化祭損益計算書』は全て取り纏(まと)めたわ。後はパソコンデータを印刷するだけ」


 現在、生徒会室には俺と灼の二人しかいない。三年生はまだ一教科残っているので終わり次第、合流するだろう。新庄めぐみと有元花散里(かざり)は部室に寄ってから来るらしい。密室で男女二人という甘美な空間も、机を隔てて屹立(きつりつ)する小さな背中から恐怖すら感じる存在感によって、空気が鋭(するど)く張り詰(つ)められていた。


 「さ……、流石は灼だな。優秀過ぎてパーフェクト美少女だ」

 「全然パーフェクトじゃないわ。だって富(・)樫(・)が(・)信(・)任(・)選(・)挙(・)に(・)出(・)る(・)だ(・)な(・)ん(・)て(・)、(・)平(・)良(・)教(・)え(・)て(・)く(・)れ(・)な(・)い(・)か(・)ら(・)投(・)票(・)用(・)紙(・)を(・)作(・)り(・)直(・)さ(・)な(・)き(・)ゃ(・)い(・)け(・)な(・)い(・)し(・)。(・)

 あたしよりも先に今後の腹案を富樫に喋(しゃべ)っちゃうから、これから皆の前で話す議案を考え直さないといけなし」


 しれっと返す間に、灼は椅子を並び終えていた。その罪悪感から、俺の口調(くちょう)がしどろもどろになる。


 「いや……あれは、あくまで俺が勝手に考えてた腹案で、まだちゃんとした案ではないというか――っと、富樫の奴が教えてくれというから……しかもあいつが出馬するって話、俺もさっき知ったわけだし」


 灼は背中を向けたまま、肩を震(ふる)わせていた。相当に立腹(りっぷく)しているのだろうと俺が途方(とほう)に暮れた時、


 「――……っくく」


 笑いをこらえるような声。しかし、それはすぐに弾(はじ)ける。


 「っあはははは!!」


 無邪気に笑いながら振り向く灼。少し癖毛(くせげ)のあるツインテールが軽(かろ)やかに広がった。 


 「もう怒ってないわ。まあ、富樫の件は驚(おど)かされたけど、これから来る高橋先輩と藤川先輩の口から聞かされる時、きっと冷静でいられるわ。そ(・)う(・)い(・)う(・)意(・)味(・)で(・)は(・)お互い様ね。あんたがあたしに連絡してこなかったのも――」

 「――っあ……ああ、そうだ。富樫の奴がお前に連絡するなって。はははは……」


 半(なか)ば放心していた俺は、安堵(あんど)よりも先に笑いが出た。灼も笑いを込めて言う。


 「富樫って、あたしのこと怖(こわ)がってるし、バツが悪いのもわかるわ。だからあんたにそう言ったのね。でも……」


 笑いながら灼の表情から『笑い』が消えた。微笑(ほほえ)みも錯覚(さっかく)と思えるほどの声で、

 

 「次からはど(・)ん(・)な(・)状(・)況(・)で(・)も(・)あたしに連絡してね」


 明確過ぎる駄目押(ダメお)しに、俺は「おっ……おう」と再び言葉を詰まらせる。灼はやれやれと溜息(ためいき)を漏(も)らした。

 そのギスギスした空気を打ち破るように、ノックの音が響く。


 「入るよー」


 俺と同じクラスの二年三組・有元花散里(かざり)がドアを開けて入ってきた。机にお菓子の入った袋を置くなり、俺と灼の不自然な距離感に気付いた有元は、にんまりと笑う。


 「あらーぁ、もしかしてお邪魔(おじゃま)しちゃったかしら。若(・)い(・)っていいわねぇ」


 言った彼女の後ろから、開いたドアをノックして、


 「花散里《かざり》。あんたカレシいないからって、野次(やじ)るのよくないよ」


 窘(たしな)めつつ、二年七組の新庄めぐみが軽い足取りで入ってきた。


 「め(・)ぐ(・)め(・)ぐ(・)ー。『同類、相憐(あいあわ)れむ』って言うじゃん。仲良くしよーよ」

 「えーいッ、鬱陶(うっとう)しい! めぐめぐ、言うなァ」


 甘えて擦(す)り寄る有元を、新庄が身を捩(よじ)らせ拒絶する姿に、灼は逆に赤面して、ゴホンッとわざとらしく咳払(せきばら)いをして仕切り直す。


 「先輩たちも来たことだし……作業を始めるわよ。早くしないと三年生が来るまで終わらないわ」

 「りょーかいッ」


 呼ばれた少女二人の声が重なり、現職生徒会が最後に集まる議会の準備を再開した。





 集まった三年生は生徒会長の山科花桜梨(かおり)、歴史研究部の部長と四字熟語、そして飯塚先輩と結衣先輩だ。会議の前の打ち合わせと言ったところか――さっそく口を開いたのは山科会長である。


 「谷君、あなたが富樫君に伝えた腹案は理解したわ。あと……信任選挙の件もね。まあ、いずれ全校生徒の前で伝えなければならないことだけど、出来ればち(・)ゃ(・)ん(・)と(・)した議案の方が良かったわね。――で、誰かこの件で意見のある人?」


 ぐるりと見回す会長の眼が一人に止まる。鉄面皮の四字熟語が頷(うなず)いたように見えた。


 「知行合一(ちこうごういつ)。情報や作戦を熟知してても、実行力がなければ無意味。高橋や藤川の脅威(きょうい)は考慮(こうりょ)しなくていい。それよりもフリールーム化するという情報が返って体育会系の部たちを志操堅固(しそうけんご)させてしまう懸念がある」


 利点も欠点も隠(かく)さず露(あら)わにする四字熟語の、意味は単純でも言辞(げんじ)を弄(ろう)する彼女の癖(くせ)に、少なからず慣れずにいる新庄が危惧(きぐ)の声を漏(も)らした。


 「運動部は部室をフリールームにすることに賛成は出来ないかな。……『女子モトクロスバイク部』のオザキがいないから、あたしだけの意見になっちゃうけど……チームの結束力を高めたり、気合を入れる時、大声で叫(さけ)んだり、後輩を怒鳴って叱(しか)ったりするわ。もちろん精神を集中したり、特訓をしたりとかも。

 前時代的な作法だけど、そういう時って占有できる密閉空間が重要なのね。だから多分……反対すると思う」

 「ウチはフリールームでもかまへんけどなァ」


 媚(こび)を売り科(しな)を作る結衣(ゆい)先輩が熱い視線を送ってくる。浮かれ顔の俺を見て、灼はピクンと眉を跳(は)ね上げた。


 「……フリールームがある総合施設はあっても良いと思う。それ以上に体育会系……例えば、剣道場、柔道場、弓道場――野球場やサッカーコートは陸上部とグランドを併用(へいよう)してるし、ナイター設備はない。テニスコートは現在クレーコートのみ。体育館もバレーボール部とバスケ部が交代で使用してる。

 茶道部は茶室がないので、公民館の茶室を部員が自腹(じばら)で払って借りてるわ。これらを何とかするのが、あたしたちの『部室整理令』だわ」


 誰を意識したのか、妙に挑戦的な低い声で返す灼に、部長がまあまあ、と宥(なだ)めて口を挟(はさ)む。


 「以前に任されてた建設用地の件、何とか確保できたぞ」


 言いながら部長は学校周辺の地図を広げ、その中に赤いペンで大きく雑な丸を描(えが)いた。


 「学校から県道を隔てた反対側の農地と山野、約258ha(ヘクタール)を購入した。とはいえ、ここから農(・)転(・)に登記変更等の面倒臭(めんどうくさ)い手続きがあるが、これも俺が手配しよう。

 ここに仮称だが――管理棟の『文化総合施設』を置き、ナイター照明設備の野球場にサッカー・グランド……ちなみに地元プロ・サッカー場より大きくなる予定だ。後は様々な公益施設をここに建設する。あと、文化祭で使用した例(・)の(・)場(・)所(・)は、そのまま『女子モトクロスバイク部』に移譲する」


 どうだ、とばかりに笑いを含んだ部長の声に、新庄や有元、飯塚先輩と結衣先輩が露骨に怯(ひる)む。俺と灼は、文化祭の再来だと内心呆れ、四字熟語は涼しい顔を貫(つらぬ)いていた。


 「クックック……。ホントに『歴史研究部』は面白いわ。一体、幾(いく)ら費用が掛かるのかしら?」


 会長は、俺ですら部長が主催(しゅさい)した文化祭という名の地(・)域(・)経(・)済(・)活(・)性(・)に費やした金額について、躊躇(ちゅうちょ)して中々聞き出せなかった質問をストレートにぶつけた。

 

 「千金一擲(せんきんいってき)。概算は約1338億6543万円」


 その問いに四字熟語が淡々と答え、部長が豪快に笑って破顔する。


 「現時点の試算なので、もうちょっと増えるかもしれないが、大(・)し(・)た(・)金(・)額(・)で(・)は(・)な(・)い(・)。資金調達は目途(めど)が付いてるからな」


 不安と恐れが室内に満ち、山科会長の他、『歴史研究部』以外の参加者はどよめく。俺と灼は疲れきった表情で天を仰(あお)いだ。 

●部長のうんちく



いつ以来でしょうか。。。久々の登場に熱くなり過ぎましたね。

文化祭の時のように、皆様と大いに楽しめることを期待してます。。。


俺は三年で生徒会ではないので、あくまでオブザーバーですが、可愛い後輩のために頑張りますッ


なになに。。。。四字熟語がなにか言ってます。『一言芳恩(いちごんほうおん)』?


はははッ! そんなに俺を褒(ほ)めないでくれよ。


申し訳ありませんが、もうちょっと続きます。

『歴』は、しばらくお待ちくださいませ。。。。。 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 学園の状況も刻々進行して来てますねー。 [気になる点] 土地の売買登記は、流石に学生だけで進められないと思います。
[良い点] >「次からはど・ん・な・状・況・で・も・あたしに連絡してね」 怖い 浮気っぽい旦那を追い詰めるヤツだ
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