第一話:平良と灼
※※ 1 ※※
「……ってゆーか」
部長がメガネのブリッジを押し上げ、俺たちの不毛な論争に声をかけた。
「お前ら……、文化祭の内容が長篠の合戦になった途端、いきなり論争始めないでくれよ」
「迷惑千万……」
部長の横に座っている『四字熟語』……五十嵐菜摘がいう。なぜ『四字熟語』と呼ばれているかというと、なぜか漢字四文字の内容で発言する。もともと言葉少なめの彼女ではあるが。
しかし、問題はそこではなかった。
「部長! 長篠の合戦と言わないでくれっ! あれは設楽原だ!!」
「部長! 長篠城攻めと設楽原の合戦は別です!!」
灼と、ほぼ同時に指摘する。俺たちは思わず視線を合わせた。
「ちょ!? マネしないでよォ!!」
「マネしてねぇ!!」
再び、俺と灼の声が重なる。
その様子を見かねた部長は腕組みをして嘆息する。
「お前ら、文化祭の打ち合わせする気ないだろ?」
「隠忍自重……」
部長と『四字熟語』をよそに、しばらく論争が続いたが、結局、文化祭の出し物は設楽原の合戦の考証ということで決まった。
だが、しかし。
部長はとんでもないことを言ってくれた。しかも、火のついた灼に油を注いで。
……ホンキでやるのかよ、それ。