李助が女装した
「りーりりちゃん、デートしよ!」
土曜日の朝、今日は良い天気。
雲一つない青空を開けた部屋の窓越しに確認しながらまだ眠る恋人に声をかける。
パタパタとそばに寄って布団を引っぺがす、"なんだよ、"とでも言いたげに目を開けた彼は俺の姿を見てぱちくりと目を瞬いた。
「...なにその、格好」
そう言っちゃうのも無理はない、ふと足元を見たら目に入る可愛らしいチェックの膝上丈スカート。その下から覗く脚は生足...でなく、黒いタイツに隠れている。
そう、今更だけど俺は女装している。
髪の毛だって自分と同じ毛色のウィッグ、上半身は白いニットでそれなりに"可愛らしい女子"である自信がある。
「なに、って女装だよ女装ー」
へらーっ、と笑って答えると訝しむような顔。
そりゃそうだ、いきなり男の恋人が女装だなんて変に思わないわけがない。
でもこれにはちゃんとわけがある。
「今までデート、ちゃんと出来てないでしょー?」
床に座って、ちゃんと女子らしくね、それからちょっと文句を言うように言う。
相手は確かに、って感じの顔。
当たり前だ、事実だもん。
「男同士だから、ちゃんと出来てないわけじゃん?」
続けて言うと、これまた確かにって顔だったけどちょっとしてからハッとしたように俺を見て
「李助...まさか」
そう、そのまさか、なんて言わないでにっこり笑うと俺は改めて言った。
「デートしよ!」
男同士のデートが周りから見ておかしなもの、なら片方が"女の子"になればいいわけで、単純だけどなかなかやらないこと。
でも背に腹は変えられない。
りりりちゃんとデートがしたいんだもん、仕方ないでしょ?