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この辺りは久々だなぁ、だとか割とどうでもいいことを思いながらかつて自分がよく歩いていた道を通り歩く。
会ったらもう探偵社に戻らないでここに残ってしまいそうで、ただ面影を探しに来た。
それだけなのに
「りーす君、久しぶり」
もう、いつも君は俺を見つけるなぁ。
月明かりに照らされて愛しい人は目の前に立っていた。
あぁ、懐かしい、大好きな煙草の匂いがする。
好き、好き、今すぐ抱きしめて、抱きしめたい、キスをしたい。
溢れる気持ち、それをぐっと飲み込んでへらりと、いつもみたいに笑って
「久しぶり、それじゃぁね」
くるりと背を向けて逃げるように立ち去る。
ごめん、ごめんね。
心の中で謝ってたら
「逃げんなよ、李助」
いつの間にかすぐ後ろにいて
「ねぇ、早くない?」
もう捕まっちゃった。