友達
友達、という言葉にずっと疑問を持っていた。
どうして、「達」という複数系なのだろうかと。
そんな疑問を引きずって、何年かを生きて。
私の中で答えがでた。
友達、というのはどうでもいい人間を指す言葉だった。
顔なんてどうでもいい。
性格なんてどうでもいい。
相性なんてどうでもいい。
ただ自分が孤独にならないために。
自分が社会から浮いてしまわないための、都合のいい存在。
そういった者を、友達と呼ぶ。
だから複数系で。
個人のことなど重んじない。
親友という言葉がある。
これは個人を指す言葉で。
私は、この言葉を使いたかった。
でも誰も。
この言葉を使いはしなかった。
誰もが友達という言葉を使う。
面と向かって、お前はどうでもいい存在で。
私が独りにならないための置物だよ。
あなたの個性なんて、興味はない。
知りたくもない。
ただ群れて、一緒に社会に従属しようよ。
友達という言葉を使われ度に、私にはそう聞こえた。
誰も親友という言葉を使わない。
きっと、そういった存在がいないからだ。
私にもいなかった。
私に近しい人間は、誰もが私を友達と呼んだから。
私は、私を友達と言う人間を信用するのをやめた。
そして彼らをこう呼ぶことにした。
友達、と。
ありがとうございました。