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Pain to the world  作者: 九JACK
1/9

プロローグ

言葉遊びが好きな人にはおすすめです。

では、どうぞーー

https://mitemin.net/imagemanage/top/icode/408512/

挿絵(By みてみん)

痛み。

人はそこから何を得、何を失うのだろう?

繰り返される世界。そこで唯一"痛み"という変化を得た少年は、世界に最高の"ふくしゅーー


ブツッ……


ラジオはそこで途絶えた。

「お前が俺の何を知っている?」

少年が呟く。

「この"痛み"が俺に何を与えてくれる?そんなものがあるとでもいうのか?ほざけ!」

少年は叫ぶ。



「世界は俺に"痛み"しか与えなかった!!」



「みなさん、妄想がどれだけ恐ろしい病気か知っていますか?」

「せんせー、妄想って病気なんですか?」

とある教室。子供が教師に問う。教師はニッコリ笑って答えた。

「いい質問だ。10点あげよう。いいかい、他のみんなもよく聞くんだよ?……妄想は、病気だ」

教室がふっと静まり返る。先程の子供が再び口を開いた。

「……なんでー?」

「それを説明するにはまず、人の精神と体の結びつきについて説明しなくてはね」

「ええー?難しい話ー?やだなぁ」

難色を示す生徒たちに教師は仕方ないなぁ、と結論だけを言った。

「人の精神は体調すらコントロールできるんだ」

生徒たちはへぇーだのふぅんだのというがやがてきょとんとした。

「ほら、やっぱりわからないだろう?話は順を追うのが大事なんだよ。さあ、最初から聞いてくれるかな?」

「はぁい!!」

生徒たちが元気よく、声を揃えて返事をしたことに教師は満足げに頷いて話し始めた。



「妄想がどれだけ恐ろしい病気か知っていますか?」


建物の中から聞こえた一言に、少年は舌打ちする。またその話かよ。

子供も飽きずによく聞くもんだ、と少年は呆れを通り越し、感心した。

まあ、ここがそうだってことを知るやつなんて、俺くらいなもんだ。少年はそう知りながら、ため息を吐かずにはいられなかった。


ループ。少年は世界をそう呼んでいる。終わらない、いつまでも続く永遠のような世界。

それは誰もが望む幸せの世界。実際、この世界の住人は幸せだ。彼を除いては。

何故?ーー"永遠"というある意味完全な世界で、何故彼は幸せを感じられない?

それはただひとり、何故か知らないがこの幸せな世界から切り離されているからだ。


"痛み"

それが彼に与えられた絶対唯一のもの。そして、この世界にある絶対的矛盾。

幸せな世界に痛みなどあろうはずもない。

それが彼を診たこの世界の医者の見解だった。



「いたいよぉ……」


彼はごく普通の家庭に生まれたごく普通の少年のはずだった。幸せに暮らせるはずの彼が初めて痛みを訴えたのは3歳の頃。

右手の人差し指が痛いんだ、と。

痛い、という言葉すら知らない彼の両親は、異常事態だ、と彼をすぐ医者に診せた。

その時の医者の言葉だ。幸せな世界に痛みなどあろうはずもない、と。



その時、幼かった彼の世界がグニャリと不気味に歪んだ。


この世界の人は痛みを感じない。怪我をしても大丈夫、痛くないよ。だってみんながいてくれる。幸せなのに、なんで痛みなんて感じるの?……という具合に。


少年は違う。怪我したら痛いし、病気になると苦しい。誰が側にいてくれたって、それは変わらない。

何故誰もわかってくれないんだーー!?



グニャリ、グニャリ……

歪んでいく世界に少年は置いてきぼりにされた。



そして、ある日。

少年はとうとう真実を見た。



この世界が繰り返される瞬間を。



あの日。

少年は今くらいの年頃だった。"痛み"を抱える異端児の少年は早々と親元から離れた。親が自分といることを望んでいないことを知っていたから。

異端児に友達がいようはずもない。彼はひとりだった。誰も助けてはくれない。だから誰も助けない。少年は心にそう決めていた。……少年が助けようと助けまいと、この世界の人々はずっと幸せなままだ。張り合いのない意地。少年は下らない、と忘れようとした。


彼の姿を見て、道行く人は笑う。あの子、痛みを感じるんだって。可哀想にね……クスクスという笑い声が少年は不快で仕方なかった。



あの日、広場に見慣れぬ顔の道化師ピエロがいた。大道芸だ。珍しい。

滑稽な動きが面白くて、少年はひっそり笑った。すると道化師ピエロは少年に気づき、小首を傾げた。

「君は不思議な笑い方をするんだね」

「不思議?どこが?」

「全然嬉しそうじゃない」

少年は虚を衝かれた。道化は更に続ける。

「もっと言うと、全然幸せそうじゃない」

少年はそれで納得した。事実、幸せではなかったから。

「誰も俺のことなんかわかってくれない。なんでみんなはわからないんだ、痛みが、苦しみが。……そんなこと考えて、懲りもせず苦しんでいる……だからかもしれない」

少年は少し楽しくなった。初めて自分の心を見抜いてくれたのだ。

「あ、今度は嬉しそう」

道化は少年の変化に敏感に反応した。じゃあ、と続ける。

「君に世界の真実を見せてあげよう」

道化は道具箱からピエロの顔の木の人形を取り出した。少年の前でワン、ツー、スリー、とカウントしーーピエロ人形を空へ向かって思い切り放り投げた。

えっ、と少年が声を上げた時には落下を始めていた。

当然、翼を持たないピエロ人形は地面に叩きつけられ、バラバラに。

少年は道化師ピエロを見た。道化師ピエロは笑っている。

「これが……どうかしたの?」

「……いつかね」

道化師ピエロはポツリと言った。

「いつか、君はまたこの子に会うよ。世界にたったひとつしかない僕のこのピエロ人形に」

「えっ?」

「また会ったらよろしくね。その時僕は君のことを覚えていないだろうけど……僕はこれで"繰り返される世界"の中に戻るから」

道化の言っている意味がわからない。少年がそう言うと、道化は笑った。今はそれでいいんだ、と。

「明日になればわかるよ」

少年はわからなくてむず痒かったが、友達のように話してくれたのが嬉しかったので、それ以上は聞かなかった。


次の日、目を覚ますと。


15歳だった彼は、3歳の頃に。父も母もあの頃に、医者も教師も子供も街も、みんな、時を遡った。


道化が言っていたのは、このこと……!


しかし、誰かが彼の言葉を信じてくれるわけもなく。



痛みを持つ少年は、この世界で唯一の不治の病と認定された。

少年の不治の病には"妄想"という言葉がつけられた。きっと彼の言う痛みなんて、想像にしか過ぎないんだ、と。それが悪化して、本物の痛みだと勘違いしているだけなのだ、と。

人の思い込みを治すなんて、できるわけないさ。だからこの病は、誰にも治せない。

そう言って、医者は匙を投げた。




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