面接
ノックは二回、大きな声で返事、どうぞと言われるまでは座らない……
ノックは二回、ノックは二回……
落ち着け。リラックス、リラックス。
大丈夫。面接官だって人間だ。多少失敗しても、ありのままの自分を出せば乗り越えられるさ。
面接室の前、俺は自分の名前が呼ばれるのを今か今かと待っていた。手のひらは汗でぐっしょり濡れている。
これで就職が決まるかどうか、瀬戸際の最終面接だった。
かれこれ数十社の面接を受けてきたが、ことごとく一次で落とされた。今回は初めて最終面接まで進むことができたのだ。
今からの数十分で、俺の人生が決まる……
額の汗をハンカチで拭いながら、左手の腕時計を見る。前の人が面接室に入ってから三十分以上が経っていた。
そろそろ俺の順番がきてもおかしくない。
しかしそれから十分経っても二十分経っても、いっこうに前の人は出てこない。
さすがにおかしい。今や緊張よりも不安の方が勝っていた。
室内に通じる扉に耳を当ててみるも、中からは物音ひとつ聞こえない。思いきってノックしてみたが、全く何の反応もない。
これは非常事態だと思い、俺はドアノブに手をかけ、扉を恐る恐る開いた。
そこは何もない空間だった。
机も椅子も、ちり一つ落ちていない真っ白な部屋。窓もなく、息苦しくなるほど閉鎖的だ。ここで面接が行われているとは、到底思えない。
いや、しかし前の順番の人は、確かにこの部屋に入っていった。その後、俺はずっと扉の前にいたのだ。なのに彼は部屋から出てきていない。
いったい彼はどこにいったのだ。
部屋には出入り口となる扉は一つしかない。壁面はやや黄色みがかったクリーム色で、近づいて調べてみても隠し扉などはありそうもなかった。
とにかく誰か人を呼んでこようと、入ってきたドアを開こうとするが……
開かない。
いくら力を入れても、押しても引いてもびくともしない。内側に鍵はついておらず、俺の記憶に間違いがなければ外側にも鍵はなかった。
閉じこめられた。
訳が分からなかった。面接を受けにきただけなのに、どうしてこんなことになってしまうのか。
俺はドアを思い切り蹴飛ばした。
それでも開かないので、助走をつけて体当たりをかます。何度も何度も。
右肩が痛くなってくる。それでも俺は止めなかった。一心不乱に扉に突っ込む。
「なんだね君は」
扉が開いて、面接官と思しきスーツ姿の男性が顔を覗かせた。
俺は我に返って周りを見渡した。
そこは部屋の中ではなかった。先ほどまでいた、面接室の前の廊下だ。
俺は面接室に向かって何度も体当たりをしていたのだ。
扉の隙間から見える部屋の向こうでは、俺の前に面接を受けていた男性が、困惑した表情でこちらを見ていた。
面接官の顔は真っ赤で、怒りに震えている。
ああ、またダメだ。
俺は面接官に何度も謝罪し、会場をあとにした。




