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ピンチ
「ハァハァ……レベルCじゃなかったの?!」
リリアの目の前にいるのは、数匹の第四級魔獣〔フェンリル〕。
これだけいれば、依頼の難易度としてはレベルA……もしくはSかもしれない。
「……セイッ!」
リリアは第三級水術【ウォーターウェーブ】を繰り出す。
ウォーターウェーブは二匹のフェンリルに当たるが、大したダメージではなさそうだ。
「グルルゥゥゥ……」
フェンリル達が唸る。
リリアの『チェッカーライセンス』は第二種ランクBライセンス。
適性依頼レベルはレベルBである。
「グルァァァッ!」
フェンリル達が一斉に第六級火術【ファイア】を放つ。
──もうダメだ
そう諦めかけたその時、
──ボボボボボンッ!
とフェンリル達の放ったファイアが爆風と共に消え去り、辺りが霧に包まれる。
リリアは最後のチャンスと思い全速力で逃走──
する前に、強風と共に霧が晴れる。
即座にフェンリル達との距離を測るために振り向いたリリアが目にしたのは、見慣れない黒い服装の少年だった。