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無限のナイトメア  作者: 高月望
一日目―転校生と始まりの夢
6/40

3-(1)


 その夜のこと…

 そこは真っ暗な空間だった。

 風などの音は一切なく、生き物の気配も全くと言っていいほど感じない。そこはまるで墨汁で一面を染めたような深い黒だけが、この空間を形成しているようだった。

 闇、やみ、ヤミしかない……

 そんな空間に、僕はひとりでいた。

 この闇しかない空間の中でも、僕の姿ははっきりと浮かび上がっている。それはまるで僕自身から光を発しているようだった。

 そんな僕は、何かに追われている最中だった。ときどき後ろを振り返りながら、全力で走っている。

 僕の顔は恐怖でゆがみ、荒い呼吸を繰り返している。その呼吸音と足音だけが空間に響いている。そして振り返っては、自分を追ってきている何かを確認しようとするが、その姿を確認することはできない。

 見えない何かに追われる恐怖が、僕を包み込んでいく。

 しばらく走っていたが、僕は急に立ち止まった。体を前かがみにし、上下に肩を揺らしながら荒い呼吸を繰り返す。ハァハァという呼吸音だけが空間に響いているが、それもすぐに吸い込まれていき、再び静寂が訪れる。

 しかし、その静寂を僕の声が打ち破る。

「一体誰なんだよ、追いかけてくるのは。もうやめてくれ」

 僕は後ろを振り返って、そう叫ぶが返事は帰ってこない。僕の悲痛な叫びも容赦なく空間に吸い込まれていく。

 僕自身も返事が返ってくるとは思っていない。しかし、叫ばずにはいられないほど恐怖を感じていた。気が付いたら真っ暗な空間にいて、突然見えない何かが後ろにいるのを感じたのだ。誰だって恐怖を感じずにはいられないだろう。

 僕はしばらく後ろを見つめていたが、何の変化もないことが分かると、あきらめた様子で再び目線を前に戻した。

 そのとき、ふと誰かに見つめられている感覚を覚えた。その感覚は僕の立つ足元から感じるではないか。寄って僕の目線は、自然と足元にむけられる。しかし、何の変化もない。僕は気のせいかと思い首をかしげる。そして、視線を戻そうとした瞬間、地面がゆがんだかのように見えた。

「な、何だ……」

 僕は目をこすり、再び足元の地面に目を向ける。

 すると、地面がぱっくりと割れ、二つの大きな赤い眼が現れ、こちらを見ているではないか。

「う、うわぁ~」

 僕は驚き、腰を抜かし地面に座り込む。

 その瞬間、地面にはたくさんの裂け目ができ、無数の眼が現れ始めた。そして、その裂け目は地面のみならず横や天井にもでき、多くの赤い眼が現れる。すると、いっせいに僕を見始めたではないか。

 多くの眼に見つめられ僕はどうすることもできないでいた。僕はこの恐怖の中で、どうすればいいか必死に考えたが、頭は回らない。

 何か身を守るものをとあたりを見渡すが、もちろん何もない。何か武器がほしいと願ったが、その願いがかなえられるわけもない。

 そして、たくさんの眼は、僕を変わらず見つめ続けている。少し変わったところといえば、眼の数が先ほどより多くなったということだろうか。

 言いようのない恐怖が僕を包み込んでいく。

 僕は、その眼を見ないようにうつむきながらつぶやく。

「何か武器があれば…バットでもいい、何でもいいから助けて…」

 そうつぶやいたときであった。



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