表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無限のナイトメア  作者: 高月望
六日目―夢の終わり
38/40

3-(1)


 夜が更けて、僕たちは前回と同じく布団に横になっていた。僕たちの手の中には川島くんの髪の毛が握られている。隣には笑顔を浮かべた夢野先生がいる。きっと僕が緊張しないように気を使ってくれているのだろう。

「大丈夫かな?」

 夢野先生が聞いてくる。

「大丈夫です」

「今回は、川島くんの夢の中だ。前回の雨宮さんのときと同じだから、いつきくんはただリラックスして寝てくれるだけでいいからね」

「はい」

「じゃあ、二人ともおやすみ。幸運を祈っているよ」

 そうして部屋の明かりが消された。こんな状況だから寝れるのかなとも思ったが、案外すんなりと眠りに入っていったのだった。

 ……………

 目を開けるとそこは暗い空間だった。

 見慣れた風景、そしてこれが最後になる風景。

「ちゃんと眠れたのね」

 後ろから声がする。振り向くと夢野さんが立っていた。その右手にはあやしく光るひと振りの剣が握られていた。すでに臨戦態勢だ。

「僕も寝れるとは思わなかった。このまま寝れずに一日中起きているんじゃないかと思ったよ。案外神経図太かったんだな、僕」

「それは良かったわね。で、そろそろ準備したら?夢魔が来るかもしれないわよ」

「わかった」

 僕はそう言い終わると同時に、自分の右手に集中し始めた。ひと振りの剣を創造する。そうすると、自分の右手の中に何か物体の感触が現れる。さらに強く想像すると、その感触は確かなものとなった。右手を見てみると、ひと振りの剣が握られていた。どうやらこの具現化の力を使いこなし始めたみたいだ。これで準備万端だ。

 そのときだ。

「やはり来たか…」

 むこう側から声がした。それはよく知った声だった。目を凝らして向こう側に目を向けると、人影がこちらに近づいてくる。

 コツコツコツ……

 足音がだんだんと大きくなる。

 その人影が姿を現した。

「やあ、会うのは久しぶりだね、少年。獏の娘は初めてだね」

 夢魔は手を挙げ、気さくそうに話しかけてきた。その姿は黒い帽子に黒いコートといった全身黒づくめの姿だった。その手にはステッキが握られている。僕が最初に会ったときと、まったく同じ姿だった。

「あれは、はったりではなかったようだね。犯人は分かっているというのは。困ったものだよ、まだまだ人のエネルギーを吸いたかったのだが…ここで謝れば、見逃してくれるということはないかな、ないだろうね~その顔は」

 夢魔の問いかけに、僕たちは力強く答える。

「あぁ」

「えぇ」

 夢魔はそれを見て、微笑する。その笑い顔に、少し苛立ちを覚えたものの、僕たちは気を取り直し、夢魔に対峙する。相手がどう動いてくるかわからない以上、こちらからも動くことはできない。しばしのにらみ合いが続く。そして、

「はぁ~やっぱり、戦うしかないのか。しかし今の私は強いぞ。エネルギーをたくさん吸ったからな…」

「それでも、あなたを倒さなければ、みんなを救うことはできないわ」

「しかし、二対一は不公平だろう」

 そう夢魔が言うと、指を鳴らした。

 パチン!

 その音と同時に夢魔の背後から、例の影たちがたくさん姿を現したではないか。

「それでは、行きますか」

 その言葉を夢魔が発すると、影たちが一斉にこちらに飛びかかってきた。それをよける僕たち。僕は近くに来た影に切りかかる。影は切られ、霧散する。そして、また飛びかかってくる影を切る。それを繰り返しているときだ。

「あとはまかせたわ」

 夢野さんはそう言い、たくさんの影たちを飛び越しながら、夢魔に一直線に向かっていった。取り残された僕は、たくさんの影に囲まれてしまった。ピンチであるが、どうしようもない。何匹かが一斉に飛びかかってくるのを、剣を大きく左右に振り、なぎ払う。影たちは切られ、黒い煙となり霧散していく。

 夢野さんはというと、夢魔に戦いを挑んでいた。それはすごい、剣での応酬であった。



 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ