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無限のナイトメア  作者: 高月望
六日目―夢の終わり
34/40

1-(1)


 目覚めると、そこは寝たときと同じ木の天井だった。そこで僕はほっとする。ちゃんと目覚めることができたんだなと。しかし、体のほうはというとものすごく重たかった。他人の夢の中にいった副作用かなのか知らないが、疲れがものすごくたまっているような感じだった。これでは寝てないのと同じだった。

「おはよう」

 僕の横には、夢野先生がいた。その顔は疲れた様子で、目の下にクマを作っている。一日中起きていたことが手に取るようにわかる。

「おはようございます」

 僕は重たい体を起こす。

「どうだった?お友達を助けることができたかい?」

「おかげさまで、助けることができました」

「そう、それは良かった。夢の中ではどうだった?何か起こった?」

「そこは私が」

 夢野さんも目覚めたようで、僕たちの会話に入ってきた。そして、夢野先生に夢の中で起こったことを話し始めた。無数の影に襲われたこと、僕の力のこと、雨宮さんを救えたこと、夢魔が接触してきたことを事細かにそれでいて簡潔に話してくれた。僕自身が話すより数倍良かった。僕が話したら、ぐだぐだになっていただろう。

「あぁ、『具現化』の力か…」

 夢野先生がポツリとつぶやく。その顔は、何かを思案しているようだった。僕は不安になり、問いかける。

「なんですか?その具現化の力って」

「それはね、夢の中であらゆるものを発現させる力だよ。夢管理委員会の中でもその力を持っているのは少ないんだ。ましてや、人間では一人ぐらいしかいなかったような気がする」

「どうしてそんな力が僕にあるんでしょうか?」

「それは僕たちにはわからないよ。でもこちらとしては、いい戦力になるってことがわかったよ」

「それはどういう意味で…」

 僕は恐る恐る聞き返す。嫌な予感しかしない。

「夢の中で自由に動けて、他人の夢まで行ける。さらに具現化の力を持っているなんて、こんな人めったにいないよ。夢管理委員会は今、人手不足だからさ、高原くんみたいな人がいれば夢魔狩りもスムーズにいくよね」

 夢野先生は楽しそうに話すが、僕は今更ながら後悔し始めた。夢管理委員会という謎の組織に入れられ、夢魔狩りに参加させられては、命がいくつあっても足りない気がする。雨宮さんを助けたときには、自分にこんな力があってよかったと思った。しかし今はどうだろう、ちょっとだけ自分の運命を恨んでいる。でも、もう後には引けないだろう、すべてを知ってしまったからには。それに自分で決めたではないか、関わることを。

「……わかりましたよ、これからがんばりますよ」

 涙ながらに答える僕を、満足そうに見つめる夢野先生だった。

「それは良かった。さっそく本部に連絡しておかないとね。で、今回の夢魔狩りはどうするつもりなのかな?夢子」

「今日中に犯人と接触し、その人の夢の中に行き、夢魔を狩ります」

「分かった。それで高原くんはどうするつもりでいるのかな?」

「……」

 夢野さんは考えている、僕をどうするかを。しかし僕の心は決まっていた。

「僕も連れて行って。今回の事件、最後まで見届けたいんだ。もう、足手まといにはならないから」

 僕は真剣なまなざしで夢野さんを見つめる。その眼が揺らぐことはなかった。根負けしたのか夢野さんはため息一つつき、僕を見つめ返す。

「わかったわ、連れて行きましょう。その代わり自分の身は自分で守りなさい」

「わかった」

「さぁ、そうと決まれば、夜に向けて体力をつけないとね。朝ごはんにしよう」

 そう言って夢野先生が朝ごはんを用意してくれた。朝ごはんは一日の基本だ。ご飯に味噌汁にお漬物と質素な感じではあったが、きれいに食べた。これで重かった体も、さっきよりは軽くなった。

「さぁ、そろそろ学校に時間じゃないのかい?二人とも、学校は大事だよ。僕もあとから行くけどね」

 夢野先生が時計を指してこう言う。僕と夢野さんは、時計を見る。見ると時間は、今から出ていってぎりぎりの時間を指していた。僕たちはあわてて身支度を始める。そして、

「いってきます!」

「いってらっしゃい」

 僕たちは急いで学校へと向かって行った。



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