表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無限のナイトメア  作者: 高月望
一日目―転校生と始まりの夢
3/40

1-(2)


 そうこうしているうちに学校に着いた。

 僕たちはそろって二年三組の教室へと向かう。教室の前まで着くと中から楽しそうな話し声が聞こえてくる。僕はドアに手をかけ、開き、二人で教室に入ると、

「おっや~お二人で登校ですか~?」

 聞き覚えのある、ふざけた声がした。

「おはよう、龍臣」

「おはよう、いつき」

 目の前にいたのは僕の悪友、瀬田龍臣である。茶髪にピアスといういで立ちに、ナンパな性格も相まって、問題児の一人となっている。でも、根はいいやつで一緒にいると楽しい。

「おはよう、雨宮さん。今日もかわいいね。今度一緒にデートでもどう?」

「おはよう、瀬田くん。いつも元気だね」

「もちろん、瀬田龍臣はいつでも元気ですよ~…痛い、なにすんだよ~」

 ドヤ顔の龍臣を、僕は一発殴り、席へと向かう。

 隣の席には川島明人くんが座っていた。

 川島くんは、端正な顔つきと寡黙さが、女子には人気となっている。僕とは席が隣同士ということもあり仲良くなり、ちょくちょく一緒に帰ったりする。

「おはよう、川島くん」

「おはよう」

 僕は改めて川島くんの顔を見て、ぎょっとした。その顔には生気がなく、青白く、まるで死人みたいだった。僕は驚き、声をかける。

「だ、大丈夫?川島くん。顔色が悪いんだけど…」

「大丈夫」

「で、でも…」

 そこに龍臣もやってきた。

「うわ、川島、大丈夫か?顔色すっごく悪いぞ」

「大丈夫」

「大丈夫じゃねぇよ」

 僕は再度、川島くんの顔を見た。その顔は本当に生気がない。周りの人が心配になるぐらい顔色が悪いのだ。

「風邪でもひいた?川島くん」

「いや、…悪い夢を見たんだ……」

「…夢…?」

 僕が再びどういうことか尋ねようとしたとき、ちょうど先生が教室に入ってきた。

「こらこら、席に着けよ~」

 その声をきっかけに、生徒たちが次々に席に座っていく。僕も仕方がなしに席に座るが、僕の目線は川島くんのほうをちらちらと見つめている。友達だから心配なのだ。

「みんなに大事な話があるぞ~」

 先生がうれしそうに話をし始めた。僕は川島くんが心配だったが、仕方なしに視線を先生のほうにむける。

 僕の席は後ろから二番目の窓側の席なので、教室内をよく見渡すことができる。みんなまじめに先生のほうを向いて、その話に耳を傾けている。

「ええと、まず一つ目として、新しい保健の先生が赴任してきました。名前は夢野先生です。前の保健の先生だった山田先生が産休に入られたためです。

 次に二つ目ですが、これはみんな驚くと思いますが、うちのクラスに今日、転校生がきます」

「ええ~」

 みんなが驚きの声を上げる。クラス内がざわめきだった。それを聞いた先生は、どこか満足げにうなずいていた。先生はこういう反応を待っていたのであろう。すでに知っていた僕は、ただただみんなのことを観察していた。驚き、喜ぶものがほとんどだった。僕は隣の川島くんを見るが、まっすぐ前を向いたままで何の反応もない。やはり顔色は良くなってはおらず、いまだ青白いままであった。

「さぁ、入って」

 先生が廊下にいるだろうその転校生を呼び出した。

 コツコツコツ……

 先生の言葉を受け、転校生が教室に入ってくる。その姿が目に入ったとき、教室のざわめきは一瞬でなくなった。静寂が教室内を包み込んでいく。

 誰もがその姿に目を奪われた。

 黒く長い絹のような艶やかな髪をなびかせて、みんなの前に立った少女に。

 大人っぽい中にまだ少女のあどけなさを残した端正な顔立ち、よく見ると吸い込まれそうな黒く凛とした大きな瞳。姿や雰囲気、すべてが美しかった。制服もまるで、彼女のためにあしらったが如く着こなされていて、ただ素晴らしいの一言だった。

「夢野夢子です。よろしくお願いします」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ