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「まだ信用して無いの?俺が夢魔だからって差別しないでくれるかな。傷づくんだよ、けっこうさぁ。悪魔だからって俺は、友達見捨てるようなことはしないよ。いつきも行くだろ、雨宮さんの夢の中に。夢野先生に聞いたぞ、いつきも夢の中に行けるって」
「えっ、僕も行くの!?」
「当たり前だろ。心配じゃないのか、雨宮さんのこと」
「そりゃあ、すごく心配だよ。でも、それとこれとは話が別というか…僕なんて、行っても役に立たないよ」
僕は地震投げに言う。だってそうだろう、夢の中じゃなくてもあまり役立たずな僕なのだから、きっと足手まといになる。できることならみんなの邪魔だけはしたくない。雨宮さんの命がかかっているのだから。でも、何もできない自分も悔しいと思う。でも、こればっかしはどうにもできない。
「そうね、足手まといになるだけだわ、大人しく待ってなさい」
夢野さんが冷たく言い放つ。事実なのだが結構グサッとくる。何も言えないでいると龍臣が助け船を出した。
「そんなことないって。人出は多いに越したことはないよ。夢の中では何が起こるか分からないし、もしかしたらいつきの助けがいるかもしれないだろ」
「逆に夢の中では何が起こるか分からないからこそ、そのいつきくんを助けなくてはならなくなるかもしれないわ」
「…いつきはどうしたい?」
龍臣が僕に聞いてくる。その目は真剣そのものだった。
「僕は…できることなら雨宮さんを助けたい。…待つのは嫌だ」
「よし!その答えを待っていた。夢野さん、いつきのことは俺に任せてよ。何が起きても俺が責任取るからさ。それならいいだろ」
「…分かったわ」
「龍臣、ありがとう」
「みんなで雨宮さんを助けようじゃないか」
僕は龍臣の手を取り、ぶんぶんと振る。痛い痛いと叫ぶ龍臣のかまわず、振り続ける。龍臣には感謝である。
すると夢野さんが手を取り合っている僕に向かっていった。
「それなら、高原いつきくん。今日は私の家に泊まりなさい」
「…と、泊まるってどういうこと?」
僕の頭の中をいろんなことが駆け巡った。そして、少し赤くなる僕。そんな僕を見て夢野さんは、あわてた様子で反論した。
「な、何、勘違いしているの。この変態!」
「ち、違うよ。誤解だよ」
そんな様子を見て、げらげら笑う龍臣。僕は余計に恥ずかしくなった。
「なにが違うのよ!変態!
ただ雨宮さんの夢の中に行くにしても、あなたはまだ力の使い方だってわからないでしょ。だから誰かが夢の中に導いてあげないといけないだろうから、その役を私がすることになるじゃない。導くにしても一緒に眠りにつかないとダメなのよ、お互いを見失わないようにするために…」
「それで、夢野さんの家に行って、一緒に寝る必要があるのか」
「その言い方はやめてほしいわね…」
龍臣はまだ笑っている。僕は龍臣を睨む。睨まれてもどこ吹く風の龍臣である。
「いいんじゃないか、親睦を深めあうという意味で。くくくくく」
「よくない!」
僕と夢野さんが同時に叫ぶ。ぴったりとハモったことでお互い顔を見合わせる。いつも無表情の夢野さんの頬が赤くなる。僕もそれを見て赤くなる。お互いすぐに顔をそむけた。ふんと夢野さんが鼻を鳴らす。僕はどうしていいか分からないでいた。そして、龍臣はというと、いまだに腹を抱えて笑っていたのだった。